目が覚めると、ベッドに寝ていた。
左側を見るとガラス張りの窓になっていて、カーテンの隙間から、
午前中だろう、でも、もう朝という感じはしない、そんな光が差し込んでくる。
右側は天井から吊り下げられた薄汚れた白いカーテンで仕切られている。
多分、4、5人の大部屋なのだろう。
ベッドの脇に小さい戸棚があって、その上がテーブルのようになっている。
そちらに手を伸ばしてみたが、そこに何があるわけでもない。
頭がぼーとしていていて、考えることができない。身体が海の底に沈んだコンクリートのように重くて、起き上がることができない。
スウェットのパンツのポケットに手を入れてみた。やっぱりそこには拾ったダイヤモンドがあった。
安心感がカラカラの心の中に落ちる一粒の雨のように落ちてきて滲んだ。
希望のカケラを確かめるように、大切に指先で掴んで、ポケットから出した。
仰向けに寝たまま、目の前に持ってきてよく見ると、ルース石だ。
拾ったときは立て爪だったかカフスボタンだと思っていたのに。
大きなダイヤモンドの裸石は1カラットどころではない。2から3カラット、もしかしたら4か5カラットくらいある。
誰が落としたのだろう。「幸せ」と書かれたキラキラ光る高価な結晶。
吸い込まれるように中を覗いてみた。
そこに失われた記憶の手掛かりがあるかもしれない。
人生という謎を解くヒントがあるかもしれない。
これからの私の人生。
どう生きていけばいいのかわからない。
ダイヤモンドの虹色の輝きの向こう側に、もしかしたらあるかもしれない。
私の人生の手掛かりが。
いや、これを落とした人の手掛かりが。
幾つもの三角形の結晶が迷路の中の記憶の断片のように、絡まり、重なっている。
三角形って何?
3つの角度で区切られた図形。
不思議だ。
そんな形が存在していること。
そしてもっと不思議なのは、
正三角形が存在していること。
3つの角度が等しくなると、
60度、60度、60度。
666
それが “ Happiness ”
幸せ。
“あのひと”
私に三度姿を見せてくれた。
一度目は電車を降りた駅で
二度目は豪雨と落雷(幻聴?)の後で
三度目は銭湯(なぜあんなところに行ったのか今ではよくわからない)の鏡の中で
そのとき時計を見るといつも
長針と短針が真っ直ぐ上下に直立していた
すなわち、6時だった。
3回とも6時
だから666
だから、あのひとが666なのかも
そうに違いない
だからこのダイヤモンドの中に正三角形が存在する
そして、だから、このダイヤモンドはあのひとのもの
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