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社会理論・現代思想を主に研究する今野晃のblog。業績については、右下にあるカテゴリーの「論文・業績」から

ブランドと階級その2:パリ郊外暴動の社会的背景その3

2005年11月13日 | 社会問題
 前のエントリーからの続きです。

 日本では、誰もが高級ブランド品を身につけることができるだろう(少なくとも非難の声はないだろう)。これに対して、仏では、そうした高級品を持つべきでない階級の人間が、高級ブランドを身につけていた場合、すぐさまprostitueeと呼ばれてしまうだろう。つまり、階級の境界を、分不相応に乗り越えた者に対しては、侮蔑の言葉が浴びせられる、そうした社会なのだと言えなくもない。

 そうした意味において、階級の境界を乗り越えようとする、そうした営みや努力を評価しない社会というものが、今回の一連の事件の背景に、私はあるような気がしてならない。

 無論、日本における「階級の解消」が、じゃらじゃらと、ブランド品を身につけることでしかないことも事実である(そんなことでは、格差の問題は解消しない)。しかし、階級格差が個人のアイデンティティーにまで関わるものであり、そしてfaibleな階級出自を持つ者はそうした負のアイデンティティーを持ち続けなければならない社会と比較するのであれば、お金でそうした身なりが買えるのであれば、そしてお金でそうしたアイデンティティーの問題から解放されるのであれば、たとえそれが安易な方法であっても、それはそれで、ポジティブな側面ではないかと、私には思えてしまう。

 ただし
 日本でも現在、階層格差が進行していると言われる。その際に重要なのは、所得格差よりも、消費水準の格差が有意に拡大していることであろう(日本の所得格差と社会階層を参照)。そうした意味では、仏において現在問われている問題は、日本においてもこの先問われてくる問題なのかもしれない。

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