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社会理論・現代思想を主に研究する今野晃のblog。業績については、右下にあるカテゴリーの「論文・業績」から

英のEU離脱について

2016年06月27日 | 社会問題
 この週末は、社会学史学会で、自分の研究報告をさせていただいた。その話は後日するとして、今日は英のEU離脱について。

 私自身の立場としては、現在のEUを動かしている機構に問題はあるとして(その改革は必要だが)、英には残留してほしかった、と考えていた。

 私としては、結果には意外さを感じたが(残留が上回ると考えていたが)、移民問題への排外的反応とは別に、EUへの一般市民の反感の存在も理解していた。

 で、学会の場(研究者同士の議論や会話)でも、この話題がよく話されていた。

 ただ、あくまで会話レベルでの話なのだが、佐藤成基先生との会話で、日本での(日本の研究者の)英の国民投票の結果予想について、あちらで意見を聞く相手が大学などで教えている英の研究者などが中心で、そうした人々から意見を聞けば、残留派が優位という意見が多数になるのは当然といった旨のことを言っていたのが印象的だった。佐藤先生の留学先は米西海岸だが(在外研究では独にいらしていた)、海外経験の長い先生らしい深い意見だと感心した。

 一般市民のEUへの反感に関しては、ギリシャ危機の際、欧州委員会、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)が、ギリシャ政府に迫った追加融資の条件を見ると、理解しやすいと思う。というのも、融資の条件として出されたのが、社会保障の削減による財政健全化や、景気刺激策としての労働規制の緩和だったりする。こうなれば、一般市民は損をして、大企業などは得をする政策をEUが推し進めていると人々の目には映るのは当然である。さらに、こうした「政策提起」をする背景には、為替や株などの金融関連市場の「安定」を目的としており、そこから利益を得るのは、さらに富裕層であるという点を考えると、なおさら……(ちなみにIMFは国際機関だが、伝統的にヨーロッパ人が総裁を務める
)。

 ただし、以上のような事情を、英の一般市民がどう思ったのか、私は知らない(私の留学していた街は、ユーロスターでロンドンに二時間ぐらいで着くのだが、足を運んでいればと今では思う……。でも、当時は大学の課題で手一杯で旅行どころではなかったけれど)。それから、ギリシャ危機の時にとったEUの対応が、今回の投票にどれだけ影響したのかはわからない。

 でも、私が仏に留学した際、友人になったのはごく普通の仏人で研究者などではないのだが、その中にはfacebookで、英の離脱という結果に、「ざまみろEU」といった旨のコメントを載せていた人もいた。彼は必ずしも排外主義ではないのだが、そうした人でもEUへの反感が強いのである。

 無論、彼の意見を一般化するべきではないし、それとは違った意見の人もいる。ただ、イタリアの五つ星運動やスペインのポデモスが支持を集める理由は、推測できる。ただし、彼(私の仏人友人)や五つ星運動、ポデモスが排外主義に走らないことを排外主義に走らないことを祈っている。

 といったことを考えたのだった。


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