病院広報(はとはあと)評価支援情報

「はとはあと」は、市民の暮らしに必要な、誠実で適切な医療情報を評価し、支援することで参加施設の透明性と“信頼を高めます。

HIS思考による改革の強化法とは

2017-09-02 16:45:24 | はとはあと最新情報

 

 どのような立ち位置から情報を出し入れするか。その意識の切り替えながら、自らのアイデンティティをわかりやすく説明していくのが広報の本質である。どうような立場、言い分の人々に対して情報を伝え、社会や関係先の共感や納得という成果を上げ、信頼を構築するという経営の知恵を積み上げるのが広報の仕事といえる。

 といっても、多様な相手は機械ではない。その人の独自の考えや感じ方、そして関心度は多様で、そして常に変化しているといってもいい。いつでも誰にでも、確実に伝わる方法などはないに等しいが、我慢と努力によって、いつかは揺るぎない地位を築き上げることができる。

 HISが伝えようとしているのは、誰もが持ち合わせている共通の特性を3つのレンズを除きながら、「伝える」「聴く」「変える」のコミュニケーションを考えていく。すなわちHospitality、Identity、Systemのキーワードである。

 株式会社研究社の新英和大辞典による説明を引き出し、直訳的な解釈のうえ、それぞれの関連を意識しながら、HISなりの意味合いを抽出してみると・・・

>Hospitality

 暖かなもてなしや厚遇、新思想に対する受容力や理解力など、互いの価値観を超えて相手を受け入れていく、利他への人間的配慮をいい、接遇やあいさつといった表面的スキルに止まることはない。また、参考までだがHospitalismというのは、最悪の病院環境に陥った施設を意味するもので扱いには注意が必要になる。

>Identity

 他者はどうあれ、まず自分であることの存在証明である。自己同一性、本質、正体、見失うことのない確かな自分そのもの、その人格の証のことをいう。企業がかねて行ってきたCI(Corporate Identity)戦略では、自己主張の極みであり、無意識のうちに意図しない情報が脳裏に取り込まれるという人格無視の戦略性に注意をする必要がある。

>System

 個別の複雑な要素で構成された一つのと統合体のことで、何らかの機能や関係により関係づけられた組織、体系、仕組み、ネットワークなどの総称がSystemである。HISの場合このSystemの機能によって、HospitalityとIdentityが統合され、「わたし・あなた・みんな」という違った視点の価値観に一貫性を持たせ、組織の精神基盤を「理念」で語れる姿に向かわせる。

 部分と全体で構成する思考体系

 Hospitalityは、他者へ向かう人間の思いやりや他者への配慮についての様式と尺度であるが、Identityは、社会の中で自己の成長とともに人間内部に確立されるべき個別の人間性の骨格である。したがって双方には、人の成長過程において、それに見合ったバランスが必要になる。それは社会というSystemに対して如何に調和・調整しながら成長できるかの統合尺度であり、これにより安心で信頼できる社会の実現に向かうことができる。

 概念として細かく切り分けるのではなく、「情報」と「環境」という人間の目に見える現実世界の質について、組織としてあるべき姿を追求する志向を育成する文化風土を目指すことで戦略達成に寄与しようという横断的仕組みである。具体的には、「情報」は広報であり広聴に通じて、サービスの質向上の一環であるし、「環境」とは、安全や癒しに通じる空間の質・デザインを扱う。

 HIS活用による組織活性化とは、理念・戦略の構築(再構築)を中心に、統合的ヘルスケアデザインの戦略化や企画広報要員(PL/SD)の育成の指針に加糖される。

 あなたの視点 Hospitality

 わたしの視点 Identity 

 みんなの視点 System

を同時的に見ていくことで、新たな思考の世界が見えてくる。決して合理的でないかもしれないが、人間のいのちのあり方として多くの気づきが生まれることに期待がかかる。「ご縁に身を委ねる」という、人として最も合理的な生き方の連鎖も期待できるかもしれない。

 これからの地域包括ケアにおいて、他者を思いやりつつ、自らが自立する精神・文化が求められることから、医療機関のこのような革新的取り組みは不可欠と考えられる。いままであった世界が永遠に続くわけではない。何事も多様性に鍛えられる中、人々により最良のものが待たれているのである。HISは、そのためにある手作り工具のようなイメージでいいと思う。(HISは登録商標です)

                      石田章一(NPO法人日本HIS研究センター代表理事)