病院広報(はとはあと)評価支援情報

「はとはあと」は、市民の暮らしに必要な、誠実で適切な医療情報を評価し、支援することで参加施設の透明性と“信頼を高めます。

病院広報のチカラ① ブランド育成の基礎知識

2012-04-11 13:04:18 | 石田章一・仕事の欠片

 近年、医療にもブランドという考え方が用いられるようになった。一般にブランド戦略とは、商品なりサービスへの信頼や魅力を生み出し、共感や名声を高める活動である…というと、「それなら当院だって医療の質を上げるのに日々努力はしている」という医療施設も多いが、どう考えればいいのだろうか。多少専門的になるが、ブランド戦略の本質は、あくまでも「のっぴきならない経営哲学」を「他者の目」に適うよう創造していくという、二律相反するところにある。相反するものは説明がつかないが、究極は説明をなくすことが目的でもあるともいわれるから面白い。たとえばベンツというブランドは「ベンツ」でありそれ以上の説明は不要である。それがブランドの本質である。

 こうした性質上、ブランドにかかわる担当者は、つねに専門職とは違った広角かつ良質の価値観をもっていることが求められる。広報が専門的に担うことも多いが、提供する商品やサービスの本質、そのあらゆる背景について横断的に熟知していることが求められたりもする。ところで医療においては、ブランドの前提として、何が商品で何がサービスであろうか。商品がモノというなら、医療のほとんどは、無形商品つまりサービスであるから、無形のままでその信頼と魅力を高める活動が、医療のブランディングということになる。確かにいいホームページがあり広報誌が発行されていることも重要なことだし、快適な医療環境、地域とのコラボレーションも、施設理解のうえから素晴らしい活動である。

 しかし、これらのコミュニケーションは情報を「伝えるツール」であり、そこに人間の体温はない。接遇スキルなども含めて多様な医療の場では、あくまでも補完的・形式的なコミュニケーションといえないだろうか。医療の場に求められるのは双方の対話や共感、納得という人と人のふれ合いの中で育むものである。医療の多様性、個別性を考えるとき、臨機応変に意を用いるコミュニケーションが何よりも大事であり、その人なりにその一瞬一瞬にどんな適切な説明、情報提供ができるか、むしろそれは「聞くこと」が先行していくべきであり、そのことに着目しスタッフを成長させることが信頼や魅力となり人を集める。 ただ、それぞれのヒトにそのような経営哲学が貫かれていること、誰もが信頼し誇りに思える表現と風土づくりに軸足とエネルギーを賭けることが必要であり、その多くは、トップマネジメントであろう。

もう少しわかりやすく言おう。そのメディアである「ヒト」のあり方、ヒトについての経営哲学に端を発するコミュニケーションこそが、向上のインセンティブとなり医療の質につながる。医療スタッフの、ただ単の説明ではない一言が良質であり、「ここにきてよかった」という印象が残るようなコミュニケーションとその支援環境、いわば組織風土を醸成することである。このことを私たちは。医療組織になくてはならない、一人ひとりが輝く「ヒトメディア・ヒトブランド」といってきた。高度な医療であってもなかっても、医療は人の心につながっている。

◆構えと対応

1)将来に向けてどんな施設になるか、トップがリーダーとなってくり返しディスカッションする(性急に結論をだす必要はない。何年かかってもよいと、トップがその構えを見せていくことが何より大切)。

2)医療のブランディングは、医療の隅々に取りついている。患者とのハイコンテキストなコミュニケーションが鍵であり、スタッフがそれを握っていることを、あらゆる機会に伝えて組織として再認識しよう。

3)見た目をバカにしてはならない。素人に見えるものを知っているのがプロの目。どう見えるのか、聞いたって言わない、まず言えない。ディスカッションするしかない。(医療タイムスNo.2046より)