都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「新たな系譜学をもとめてー跳躍/痕跡/身体」 東京都現代美術館
東京都現代美術館
「東京アートミーティング(第5回) 新たな系譜学をもとめてー跳躍/痕跡/身体」
9/27-2015/1/4

東京都現代美術館で開催中の「東京アートミーティング(第5回) 新たな系譜学をもとめてー跳躍/痕跡/身体」を見て来ました。
ダンス、演劇、スポーツなどの身体的表現を、いわゆるアートの文脈から問い直そうとする展覧会です。総合アドバイザーに狂言師の野村萬斎を迎えています。
会場内、一部のみ撮影が出来ました。
さて冒頭は野村萬斎、狂言の映像が観客を誘う。そこを抜けると長い回廊です。ダムダイプの大型インスタレーション、「Trace/React」が控えていました。

ダムタイプ「Trace/React」 2014年 サウンド・インスタレーション
縦に連なる5本の黒い柱、実は回転する超指向性のスピーカーです。過去のパフォーマンス作品からとられたという音、例えば人の呼吸や足の擦れる音などが断片的に流れる。つまり目の前にいないはずの人の動きの痕跡が音として立ち上がるわけです。
椅子に座りノイズに耳を傾けると何故か波の音を聞いているような錯覚をおぼえました。音の波、身体の波動。そのイメージを耳で追いながら感じる作品と言えるかもしれません。
振付家のノア・エシュコルが出展したテキスタイルに惹かれました。色鮮やかな端切れが抽象的な紋様を描いて組み合わさったもの。「身体に美学を見出す」(公式サイト)というエシュコル独自の感性が光ります。
平面としては具体も面白いのではないでしょうか。まさに身体の一部分、足を用いて描いた白髪一雄の絵画が鮮烈に立ちあがる。展示ではさらにポロックが介入します。一つの空間にアクションペインティングとドリッピングの作品が並んでいる仕掛け。身体性が両者の橋渡しをしています。

エルネスト・ネト「人々は互いを横切る風である」 2014年 テキスタイル、木、板
ハイライトと言えるかもしれません。ネトの「人々は互いを横切る風である」は一際大きなインスタレーションです。お馴染みのウォークイン方式、中に入ることが出来ますが、モチーフ自体はアマゾンの先住民の知恵の泉を象徴する大蛇だとか。先は思いの外に長い。一本道にも関わらず、歩いていると不安感にすら襲われる。出口は見えません。トンネルはくねくねと曲がっています。

エルネスト・ネト「人々は互いを横切る風である」(内部) 2014年 テキスタイル、木、板
半透明の布が身体を常に包み込みます。また布に触れるとさらさらと風を切るような音も発生しました。自らの身体を投げ入れてこそ初めて成り立ちうる作品。抜けた先には何が待ち構えているのか。確かに「儀式」(公式サイトより)に参加しているようでもありました。

チェルフィッチュ「4つの瑣末な 駅のあるある」 2014年 4チャンネル映像インスタレーション
チェルフィッチュの映像が秀逸です。タイトルは「4つの瑣末な 駅のあるある」。前には4面のスクリーンです。そこで若者が何やら身体を揺らし、一見、踊っているようにも映ります。はじめはダンサーによるパフォーマンスだと思いました。
しかしながら上部のスピーカーの音に耳を傾けると違います。動きと台詞が乖離しているのです。実は彼ら彼女らはただ単に駅などで見聞きしたことを話しているだけ。日常的なコミュニケーションに過ぎません。つまり会話における身振り手振りです。それがさもダンスのように見えます。

金氏徹平「『家電のように解り合えない』のための舞台装置」
金氏徹平の「家電のように解り合えない」も興味深いもの。何やら摩訶不思議なタイトルではありますが、これは2011年にチェルフィッチュの主宰、岡田利規が演出した舞台装置。その際に金氏が美術を担当しています。

金氏徹平「『家電のように解り合えない』のための舞台装置」
モチーフはずばり家電です。テレビに扇風機に照明。それらが思いがけない素材で出来ていました。しかも面白いのは時に家電自体が動くことです。伸縮自在。まるで生きた身体のように踊り出します。
ほかにはダグラス・ゴードン&フィリップ・パレーノの「ジダン21世紀の肖像」も目を引きました。レアルでの試合、ジダンのみを17台のカメラで追った映像作品です。おもむろに動き、急に止まり、今度はにわかに走ったかと思うと、力強く跳ねる。その無駄のない動きは美しくもあります。スポーツは究極の身体的表現であることに改めて気づかされました。

「新たな系譜学をもとめて」展示室風景
身体という括りからすれば曖昧な面があるかもしれませんが、少なくともバラエティに富んだ作品のセレクトです。飽きさせません。
会期中には各種パフォーマンスイベントも行われます。そちらに参加するとより楽しめるのではないでしょうか。
「12月はパフォーマンス月間。パフォーマンスプログラムのラインナップ」@東京都現代美術館
「新たな系譜学をもとめて アート・身体・パフォーマンス/フィルムアート社」
2015年1月4日まで開催されています。
「東京アートミーティング(第5回) 新たな系譜学をもとめてー跳躍/痕跡/身体」 東京都現代美術館(@MOT_art_museum)
会期:9月27日(土)~2015年1月4日(日)
休館:月曜日。但し10/13、11/3、11/24は開館。10/14、11/4、11/25は休館。年末年始(12/28~1/1)。
時間:10:00~18:00。*入場は閉場の30分前まで。
料金:一般1200(960)円 、大学生・65歳以上900(720)円、中高生600(480)円、小学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
*本展チケットで「MOTコレクション」も観覧可。「ミシェル・ゴンドリー展」とのセット券あり。
住所:江東区三好4-1-1
交通:東京メトロ半蔵門線清澄白河駅B2出口より徒歩9分、都営地下鉄大江戸線清澄白河駅A3出口より徒歩13分。
「東京アートミーティング(第5回) 新たな系譜学をもとめてー跳躍/痕跡/身体」
9/27-2015/1/4

東京都現代美術館で開催中の「東京アートミーティング(第5回) 新たな系譜学をもとめてー跳躍/痕跡/身体」を見て来ました。
ダンス、演劇、スポーツなどの身体的表現を、いわゆるアートの文脈から問い直そうとする展覧会です。総合アドバイザーに狂言師の野村萬斎を迎えています。
会場内、一部のみ撮影が出来ました。
さて冒頭は野村萬斎、狂言の映像が観客を誘う。そこを抜けると長い回廊です。ダムダイプの大型インスタレーション、「Trace/React」が控えていました。

ダムタイプ「Trace/React」 2014年 サウンド・インスタレーション
縦に連なる5本の黒い柱、実は回転する超指向性のスピーカーです。過去のパフォーマンス作品からとられたという音、例えば人の呼吸や足の擦れる音などが断片的に流れる。つまり目の前にいないはずの人の動きの痕跡が音として立ち上がるわけです。
椅子に座りノイズに耳を傾けると何故か波の音を聞いているような錯覚をおぼえました。音の波、身体の波動。そのイメージを耳で追いながら感じる作品と言えるかもしれません。
振付家のノア・エシュコルが出展したテキスタイルに惹かれました。色鮮やかな端切れが抽象的な紋様を描いて組み合わさったもの。「身体に美学を見出す」(公式サイト)というエシュコル独自の感性が光ります。
平面としては具体も面白いのではないでしょうか。まさに身体の一部分、足を用いて描いた白髪一雄の絵画が鮮烈に立ちあがる。展示ではさらにポロックが介入します。一つの空間にアクションペインティングとドリッピングの作品が並んでいる仕掛け。身体性が両者の橋渡しをしています。

エルネスト・ネト「人々は互いを横切る風である」 2014年 テキスタイル、木、板
ハイライトと言えるかもしれません。ネトの「人々は互いを横切る風である」は一際大きなインスタレーションです。お馴染みのウォークイン方式、中に入ることが出来ますが、モチーフ自体はアマゾンの先住民の知恵の泉を象徴する大蛇だとか。先は思いの外に長い。一本道にも関わらず、歩いていると不安感にすら襲われる。出口は見えません。トンネルはくねくねと曲がっています。

エルネスト・ネト「人々は互いを横切る風である」(内部) 2014年 テキスタイル、木、板
半透明の布が身体を常に包み込みます。また布に触れるとさらさらと風を切るような音も発生しました。自らの身体を投げ入れてこそ初めて成り立ちうる作品。抜けた先には何が待ち構えているのか。確かに「儀式」(公式サイトより)に参加しているようでもありました。

チェルフィッチュ「4つの瑣末な 駅のあるある」 2014年 4チャンネル映像インスタレーション
チェルフィッチュの映像が秀逸です。タイトルは「4つの瑣末な 駅のあるある」。前には4面のスクリーンです。そこで若者が何やら身体を揺らし、一見、踊っているようにも映ります。はじめはダンサーによるパフォーマンスだと思いました。
しかしながら上部のスピーカーの音に耳を傾けると違います。動きと台詞が乖離しているのです。実は彼ら彼女らはただ単に駅などで見聞きしたことを話しているだけ。日常的なコミュニケーションに過ぎません。つまり会話における身振り手振りです。それがさもダンスのように見えます。

金氏徹平「『家電のように解り合えない』のための舞台装置」
金氏徹平の「家電のように解り合えない」も興味深いもの。何やら摩訶不思議なタイトルではありますが、これは2011年にチェルフィッチュの主宰、岡田利規が演出した舞台装置。その際に金氏が美術を担当しています。

金氏徹平「『家電のように解り合えない』のための舞台装置」
モチーフはずばり家電です。テレビに扇風機に照明。それらが思いがけない素材で出来ていました。しかも面白いのは時に家電自体が動くことです。伸縮自在。まるで生きた身体のように踊り出します。
ほかにはダグラス・ゴードン&フィリップ・パレーノの「ジダン21世紀の肖像」も目を引きました。レアルでの試合、ジダンのみを17台のカメラで追った映像作品です。おもむろに動き、急に止まり、今度はにわかに走ったかと思うと、力強く跳ねる。その無駄のない動きは美しくもあります。スポーツは究極の身体的表現であることに改めて気づかされました。

「新たな系譜学をもとめて」展示室風景
身体という括りからすれば曖昧な面があるかもしれませんが、少なくともバラエティに富んだ作品のセレクトです。飽きさせません。
会期中には各種パフォーマンスイベントも行われます。そちらに参加するとより楽しめるのではないでしょうか。
「12月はパフォーマンス月間。パフォーマンスプログラムのラインナップ」@東京都現代美術館

2015年1月4日まで開催されています。
「東京アートミーティング(第5回) 新たな系譜学をもとめてー跳躍/痕跡/身体」 東京都現代美術館(@MOT_art_museum)
会期:9月27日(土)~2015年1月4日(日)
休館:月曜日。但し10/13、11/3、11/24は開館。10/14、11/4、11/25は休館。年末年始(12/28~1/1)。
時間:10:00~18:00。*入場は閉場の30分前まで。
料金:一般1200(960)円 、大学生・65歳以上900(720)円、中高生600(480)円、小学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
*本展チケットで「MOTコレクション」も観覧可。「ミシェル・ゴンドリー展」とのセット券あり。
住所:江東区三好4-1-1
交通:東京メトロ半蔵門線清澄白河駅B2出口より徒歩9分、都営地下鉄大江戸線清澄白河駅A3出口より徒歩13分。
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