「リー・ミンウェイとその関係展」 森美術館

森美術館
「リー・ミンウェイとその関係展:参加するアート―見る、話す、贈る、書く、食べる、そして世界とつながる」
2014/9/20~2015/1/4



森美術館で開催中の「リー・ミンウェイとその関係展」を見て来ました。

1964年に台中で生まれ、現在ニューヨークを拠点に活動するアーティスト、リー・ミンウェイ。2010年の資生堂ギャラリーでの個展の記憶も新しいのではないでしょうか。来場者が自由に木箱を開けてはテキストを鑑賞する「記憶の織物」を展示していました。

最大規模の個展だそうです。過去20年間の作品とともに、いわゆる「参加型」と称されるアートプロジェクトを紹介しています。

さてその「参加型」、ただしミンウェイの作品は来場者に必ずしも参加を絶対的に促すようなものではありません。

もっと穏やかです。だからこそ色々な意味で居心地が良くも感じるもの。ミンウェイの作品を切っ掛けに来場者同士、あるいはそれを超えて多様な人々と関係を持っていくことがポイントです。どういう形であれ他者との緩やかな「つながり」を志向しています。

 
「プロジェクト・繕う」2009/2014 机、椅子、糸、布製品 インタラクティブ・インスタレーション

その一つが「プロジェクト・繕う」です。一見するところ布や洋服のインスタレーション、カラフルな糸が壁面からのびています。ふと目をやるとテーブルに一人の女性が座っていました。

 
「プロジェクト・繕う」2009/2014 机、椅子、糸、布製品 インタラクティブ・インスタレーション

彼女がホストです。つまり観客は服やぬいぐるみを持ち寄り、そこでホストと会話をしながら繕ってもらうという仕掛け。ホストはアーティスト本人の代わりにボランティアスタッフがつとめています。そして繕った衣服なりが作品の一部と化すわけです。繕いを通して観客とホストの経験なりが共有されます。

「プロジェクト・手紙をつづる」も参加型のインスタレーションです。目の前にあるのは3つのブース。靴を脱いで中へと入りましょう。目の前に便箋と封筒があります。手紙を書くことが出来ました。

 
「プロジェクト・手紙をつづる」1998/2014 木製ブース、便箋、封筒 インタラクティブ・インスタレーション

内容は自由です。恋文でも感謝の手紙でも何でも良い。また宛先の有無も問われません。そして一通り好きなことを書いたら手紙を壁に挿しておきます。すると今度は別の人がその手紙を自由に読むことが出来るわけです。

つまり手紙を通して他者同士が偶然的にも関係性を持ち合う。また宛先を書いて封をすると美術館のスタッフが投函してくれます。ちなみに私の書いた手紙は封をせずに置いておきました。きっとあの日、誰かが読んでくれたに違いありません。

手に花を持った方を見かけなかったでしょうか。「ひろがる花園」です。展示室内にほぼ一列に並ぶ花、色も様々で、見るも美しい。ただこの花、単に愛でるだけではありません。一輪だけなら自由に持ち帰ることが出来ます。

 
「ひろがる花園」2009/2014 花崗岩、生花 インタラクティブ・インスタレーション

ただし約束事付きです。というのも帰り道は行きとは別ルートを使い、しかもそこで見知らぬ人に花をプレゼントしなくてはいけない。いきなり渡したら驚かれるかもしれません。しかしながらそれも思わぬ出会いとして捉えられているのです。

さて本展、何もミンウェイの作品ばかりで構成されているわけではありません。

興味深いのはミンウェイの制作を考えるために、ほかのアーティストが参照されていることです。全部で11名。ジョン・ケージに白隠、イヴ・クラインや田中功起、それに鈴木大拙に李禹煥らが取り上げられています。

作家の関心の在りかを知るかのようなラインナップ、禅への展開など、示唆に富む面も少なくありません。また田中功起の映像や李の絵画など、個々の作品もなかなか興味深いものがありました。

 
「プロジェクト・ともに食す」1997/2014 台座、畳、豆、米、ビデオ インタラクティブ・インスタレーション

ミンウェイを起点に築かれる人とのつながり。率直なところ作品としてどう捉えるかについては判断も分かれるやもしれません。ただ参加することで何かが変わるような予感を抱くことは意外とスリリングでもあります。思っていたより楽しめました。

なお同じ森タワー内、アーツセンターで開催中の「ティム・バートン」展は入場待ちの長い行列が発生していましたが、リー・ミンウェイ展に関しては混雑とは無縁です。スムーズに観覧出来ました。

 
「プロジェクト・ともに眠る」2000/2014 ベッド、ナイトスタンド インタラクティブ・インスタレーション

本展終了後、森美術館は施設改修工事のため2015年4月24日まで休館します。(森アーツセンター、シティビューも同様に休館します。)

「改修工事にともなう休館について」@森美術館
・森美術館は、施設および各種設備の修繕と展示空間の改修を目的として、2015年1月の展覧会終了時より改修工事を行います。
・休館する期間:2015年1月5日(月)~4月24日(金)

「リー・ミンウェイとその関係/美術出版社」

年末年始のお休みはありません。2015年1月4日まで開催されています。

「リー・ミンウェイとその関係展:参加するアート―見る、話す、贈る、書く、食べる、そして世界とつながる」 森美術館@mori_art_museum
会期:2014年9月20日(土)~2015年1月4日(日)
休館:会期中無休。
時間:10:00~22:00
 *ただし火曜日は17時で閉館。(9/23、12/23は22時まで。) 
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1500円、大学・高校生1000円、中学生以下(4歳まで)500円。
 *入館料で展望台「東京シティビュー」にも入場可。
場所:港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階
交通:東京メトロ日比谷線六本木駅より地下コンコースにて直結。都営大江戸線六本木駅より徒歩10分。都営地下鉄大江戸線麻布十番駅より徒歩10分。

注)掲載写真はいずれも「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利 - 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。
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