April 29, 2015
4月28日(火)
今年最初の読書会だ。それぞれに健康の面でいろいろなことがあっても、こうして集えるのはうれしい。本は、辺見庸『反逆する風景』(鉄筆文庫)。この作家の本は、『もの食う人びと』、『水の透視画法』に次いで3冊目だ。年代的には、この2冊のあいだに入る。文庫本化にあたって書き加えられた最後の数編のものを除いて、1994年、19995年に書かれたものだ。しかし最近の筆といってもいいほど、現在の日本の憂うべき状況を言い当てている。ジャーナリストとしての鋭い視点と文学者としての感性が、文章を深みのあるものにしている。2011年に詩文集『生首』で中原中也賞、2012年に詩文集『眼の海』で高見順賞を受賞している才人だ。眼が回復したら一気に新しい作品を読んでみたい。
ベトナムのハノイのホテルについて記した「ホテル・トンニャットの変身―一九九〇年)」の中に、林芙美子の『浮雲』について触れていた文があり、次回の読書会の本をこれに決めさせてもらった。こういう文を読むと、アジアのいたる所に日本の支配が及んでいたことを知り、慄然とする。次にその箇所を引用させてもらう。
一九三〇年、香港でベトナム共産党成立(一九九〇年二月、ハノイで結党六〇周年を盛大に祝いました)。ホテルの名が後にトンニャットになる遠因です。えいやっと歴史を十年はしょって一九四〇年。日本軍が北部ベトナムに進駐します。
『浮雲』(林芙美子)の幸田ゆき子が日本軍の車で「海防」から「河内」に着いたのは、それから3年後のこと。ゆき子がメトロポールを目にしたかどうかは残念ながら記されていません。ですが、ハノイからダラトに行く途中で泊ったビンのグランド・ホテルの印象を「これはまるでお伽話の世界である」と書いています。(中略)
一九四五年の三月に日本軍が突然フランス植民地を武装解除し、総督府を乗っ取ってしまいます。将校たちは回転扉に軍刀をがちゃがちゃぶつけてホテルにも押し入ってきたでしょう。 (辺見庸『反逆する風景』鉄筆文庫)
4月29日(水)
今日が休日なことを忘れていた。送る予定にしていた郵便物があったので、本局まで出しに行った。いつも出かけている駅から郵便局まで、往復で5000歩ほどだった。先日の姉妹旅行の際、姉と私はどうしても皆から遅れがちになったので、少し早歩きの癖をつけないといけない。ついでに図書館で、届いていた本、トマス・H・クック『サンドリーヌ裁判』(早川書房)を受け取った。トマス・クックの『緋色の記憶』は、私が大切にしている本の中の1冊だ。それにしてもこの著者の作品を読むのは久しぶりだ。帰りのバスの中で少し目を通していたら、バス停をひとつ先まで乗り過ごしてしまった。最初よければ終わりよし。続きを読むのが楽しみだ。
画像は、友人のメールから。花は、「ナニワイバラ(浪花茨)」、ばらの原種だそうだ。大阪など近畿地方から植栽が始まったのが、名の由来だとか。