January 27, 2015
先日友人と会った時にいただいた、聖護院御祈祷済みの「福豆」が待っている。春がすぐそばまできているのに寒い日が続くのは例年のことだ。昨年から引っかかっていた英語の参考書の点訳が出来上がり、点字印刷機で打ちだすために事務所に出かけたり、何となく落ち着かない中で読んだ本について触れたい。
佐々木健一『辞書になった男』(文芸春秋)。朝日新聞の書評に取り上げられていた本だ。一昨年、辞書の編纂に関する内容の、三浦しをん『舟を編む』を読み、映画を見て楽しんだ。私は、今回『英和辞典』の点訳に参加することになり、いわゆる分らないことを辞書をひいて調べるという立場から1歩踏み込んでいる。そんな時に手に取った本なので少し思い入れはあった。本書は、三省堂で出している『新明解国語辞典』と『三省堂国語辞典』の編纂に携わった見坊豪紀と山田忠雄・両氏の辞書誕生から改定版刊行の過程でのいきさつ、軋轢を扱ったドキュメンタリーで、NHKのテレビ番組でこの問題をプロデュ―スした佐々木健一さんの著になるものだ。『明解…』の初版は昭和18年、『三省堂国語辞典』の初版は昭和35年である。見坊氏も山田氏もすでに鬼籍に入られている。三浦しをんさんの本の登場もあって、この知る人ぞ知る話が公になったのだろう。私は、国語辞典は『岩波国語辞典』と『広辞苑』しか使わないので、問題になっている「用例」も、あまりしっくりとこない。私には、辞書界の盗用体質を暴いた「暮しの手帖」事件についての箇所が面白かった。当時「暮らしの手帖」は読んでいて、商品テストはいろいろと参考になった記憶があるが、それが辞書にまで及んでいたとは知らなかった。
私は、昨年暮れに、『医学大辞典』の点訳から、『英和辞典』の点訳に鞍替えして、これからこの辞典との付き合いが始まるが、『医学辞典』の点訳に参加されていた人の中に、某出版社で辞書の編纂にかかわったことがある方がいて、その方のあまりのこだわりように、いささかうんざりしていた。私たちは点訳をする立場なのだからと思いつつも、そのこだわりは、今この本を読むと、なるほどと納得もできる。でも携わっているものによって立場を変えることも必要だろうと思う。幸い今の『英和辞典』のキャップをされている方は、物事の取捨選択が早く、私はとても助かっている。
佐藤優『世界史の極意』(NHK出版新書)。これはもっぱら東京に出かけるときの電車の往復で読んだ。いま「イスラム国」が話題になっている。新聞を細かく読むことにしているが、この事態については、意見を述べる言葉がない。しかし、この時期に本書を読むことが出来てよかったと思っている。表紙裏にある言葉を引用させてもらおう。〈ウクライナ危機、イスラム国、スコットランド問題・・・世界はどこに向かうのか?「資本主義と帝国主義」「ナショナリズム」「キリスト教とイスラム」の3つのテーマを立て、現在の世界を読み解く上で必須の歴史的出来事を厳選、明解に解説! 激動の国際情勢を見通すための世界史のレッスン〉(『世界史の極意』表紙裏の解説より)とある。新書の中にこれだけの内容を簡潔に、また分りやすく読者に提供できのは、まさにこの方の極意である。
各章ごとに年表と参考文献が掲載されている。駆け足で読んでしまったが、座右に置いて読み解く本である。著者は、歴史をアナロジカルに見る必要を繰り返し書いている。ありていにいえば、歴史は繰り返されるということ、だからこそ歴史の教訓を学ばなければならないのだと思う。
画像は、友人宅の2階の居間から撮った。夕方になるとこの雲が茜色になって美しいと言っていた。のんびりとコーヒーをいただいて遠い空の雲を眺めていると、お暇する時間を忘れて長居してしまう。
先日友人と会った時にいただいた、聖護院御祈祷済みの「福豆」が待っている。春がすぐそばまできているのに寒い日が続くのは例年のことだ。昨年から引っかかっていた英語の参考書の点訳が出来上がり、点字印刷機で打ちだすために事務所に出かけたり、何となく落ち着かない中で読んだ本について触れたい。
佐々木健一『辞書になった男』(文芸春秋)。朝日新聞の書評に取り上げられていた本だ。一昨年、辞書の編纂に関する内容の、三浦しをん『舟を編む』を読み、映画を見て楽しんだ。私は、今回『英和辞典』の点訳に参加することになり、いわゆる分らないことを辞書をひいて調べるという立場から1歩踏み込んでいる。そんな時に手に取った本なので少し思い入れはあった。本書は、三省堂で出している『新明解国語辞典』と『三省堂国語辞典』の編纂に携わった見坊豪紀と山田忠雄・両氏の辞書誕生から改定版刊行の過程でのいきさつ、軋轢を扱ったドキュメンタリーで、NHKのテレビ番組でこの問題をプロデュ―スした佐々木健一さんの著になるものだ。『明解…』の初版は昭和18年、『三省堂国語辞典』の初版は昭和35年である。見坊氏も山田氏もすでに鬼籍に入られている。三浦しをんさんの本の登場もあって、この知る人ぞ知る話が公になったのだろう。私は、国語辞典は『岩波国語辞典』と『広辞苑』しか使わないので、問題になっている「用例」も、あまりしっくりとこない。私には、辞書界の盗用体質を暴いた「暮しの手帖」事件についての箇所が面白かった。当時「暮らしの手帖」は読んでいて、商品テストはいろいろと参考になった記憶があるが、それが辞書にまで及んでいたとは知らなかった。
私は、昨年暮れに、『医学大辞典』の点訳から、『英和辞典』の点訳に鞍替えして、これからこの辞典との付き合いが始まるが、『医学辞典』の点訳に参加されていた人の中に、某出版社で辞書の編纂にかかわったことがある方がいて、その方のあまりのこだわりように、いささかうんざりしていた。私たちは点訳をする立場なのだからと思いつつも、そのこだわりは、今この本を読むと、なるほどと納得もできる。でも携わっているものによって立場を変えることも必要だろうと思う。幸い今の『英和辞典』のキャップをされている方は、物事の取捨選択が早く、私はとても助かっている。
佐藤優『世界史の極意』(NHK出版新書)。これはもっぱら東京に出かけるときの電車の往復で読んだ。いま「イスラム国」が話題になっている。新聞を細かく読むことにしているが、この事態については、意見を述べる言葉がない。しかし、この時期に本書を読むことが出来てよかったと思っている。表紙裏にある言葉を引用させてもらおう。〈ウクライナ危機、イスラム国、スコットランド問題・・・世界はどこに向かうのか?「資本主義と帝国主義」「ナショナリズム」「キリスト教とイスラム」の3つのテーマを立て、現在の世界を読み解く上で必須の歴史的出来事を厳選、明解に解説! 激動の国際情勢を見通すための世界史のレッスン〉(『世界史の極意』表紙裏の解説より)とある。新書の中にこれだけの内容を簡潔に、また分りやすく読者に提供できのは、まさにこの方の極意である。
各章ごとに年表と参考文献が掲載されている。駆け足で読んでしまったが、座右に置いて読み解く本である。著者は、歴史をアナロジカルに見る必要を繰り返し書いている。ありていにいえば、歴史は繰り返されるということ、だからこそ歴史の教訓を学ばなければならないのだと思う。
画像は、友人宅の2階の居間から撮った。夕方になるとこの雲が茜色になって美しいと言っていた。のんびりとコーヒーをいただいて遠い空の雲を眺めていると、お暇する時間を忘れて長居してしまう。