September 26, 2019
9月24日(火)
まだまだ残暑は厳しいが、久しぶりの読書会だった。一人暮らしの私は、さすがに人恋しくなってきた。そんな中での読書会で、心が潤った。本は、友川カズキ『一人盆踊り』。いつも書いているが、なかなか私一人では選べない本だ。著者 友川カズキは、バスケットで有名な能代工業高校を卒業し、集団就職で上京、歌手、画家、詩人、競輪愛好家、俳優、コメンテイターと八面六臂の活動を続けている人物だ。なかなかの自由人のようだが、1950年生まれというから、70歳に近い年齢だ。本書は、短文と詩で構成されている。名文家だが、私は、とくに詩に惹かれた。
著者は、農家の男ばかり四人兄弟の二男で、弟の覚は、列車に飛び込み31年の生涯を閉じた。彼は、詩を書きながら、何かを果たせずに旅立っている。その弟に、著者は本書で書いている。
なあ、覚。
お前が裡なる寒さに凍えながら歯をくいしばりながら死ぬ気で産みおとしたお前の詩篇らは今オレの腕の中にしっかりとあるぞ。
安心せい。
安心して、眠れ。(『一人盆踊り』)
さらに、詩篇の中から、「空を飛ぶー弟覚の七回忌に」 の一部(前後に詩の続きがある)を次に載せる。
サトルは
たしかに悩ましい時節では
あったかも知れぬ
唇の痛い朝を
経験していたかも知れぬ
しかしそれは
サトルのどこぞから出た
失い方であり
居続けることのひとつの
決着のつけ方でしかない
サトルの口ぐせは
「オレは年喰い虫だや」
であった
それからすると
死、とは腹いっぱいの眠りである
ゆるやかな帰結である
死体とてサトル自身のものである(『一人盆踊り』)
いろいろと引用させてもらったが、私の読後感である。東北人の細やかな家族のありように触れた思いだった。次回の読書会は私が担当になっている。モーパッサン『わたしたちの心』(岩波文庫)を取り上げようと思う。
画像は、妹のメールから。