October 28, 2014
読書の秋、10月27日から11月23日までは、読書週間だそうだ。私は中学生以来初めて裸眼で本を読んでいる。まさかこんな日が来るとは思わなかったので、うれしい。今回は友人宅にお邪魔した。本は、ガルシア・マルケス『予告された殺人の記録』(新潮文庫)。久しぶりで濃い内容の読書会だった。マルケスは、1982年にノーベル文学賞を受けている。この作品は、1951年にコロンビアのスクレという田舎町で実際に起きた事件を、十分な時間をかけて小説に仕上げたものだ。
文庫で140ページほどの中編の中に詰め込まれたテーマは、重いものがある。民衆の意識や共同体のメカニズムは、自分とはかけ離れたところの物語のように思えるが、予告されていながら、誰もがこの殺人に気づいていながら、それを阻止できなかった結末は、私たちの身の回りでも起こるかもしれないような事柄を予見しているという皆の感想だった。内容には触れないことにするが、改めてマルケスの鋭い感性を感じさせられる作品だった。ミステリーがかった事件を改ページで五つに区分し、どんどん話が盛り上がっていく様は、見事だった。あとがきで、訳者の野谷文昭氏が書いている解説は、この作品のすべてを物語っているように思えるので次に引用させてもらおう。そして、1981年に刊行された、この決して古くなっていない優れた作品の一読をお勧めしたい。
この作品でまず指摘できるのは、構成が優れていることである。番号は付されていないが全体がほぼ均等の五章に分けられ、それぞれの章が独立しながら次の章を呼ぶ形になっている。作者によると、最後の章で殺人を克明に描くことは最初から決まっていたという。書き出しに呼応しつつ、クライマックスとして読者に余韻を残す上で、確かに効果的な配置といえる。それから、目立った特徴は、時間の処理の仕方で、様々な過去時制を用い、モザイクのように入り組んだ過去を作り出している。特に、カフカの『変身』の影響が指摘されている冒頭で、すべたは過去であることを示しつつ物語を進めることにより、早くも悲劇的な雰囲気を醸し出すのに成功しているといえよう。・・・(G・ガルシア・マルケス『予告された殺人の記録』新潮文庫の訳者あとがきより)
画像は、友人が「昭和記念公園」で撮られた「コスモス」。自然の色のコントラストは素晴らしい。
読書の秋、10月27日から11月23日までは、読書週間だそうだ。私は中学生以来初めて裸眼で本を読んでいる。まさかこんな日が来るとは思わなかったので、うれしい。今回は友人宅にお邪魔した。本は、ガルシア・マルケス『予告された殺人の記録』(新潮文庫)。久しぶりで濃い内容の読書会だった。マルケスは、1982年にノーベル文学賞を受けている。この作品は、1951年にコロンビアのスクレという田舎町で実際に起きた事件を、十分な時間をかけて小説に仕上げたものだ。
文庫で140ページほどの中編の中に詰め込まれたテーマは、重いものがある。民衆の意識や共同体のメカニズムは、自分とはかけ離れたところの物語のように思えるが、予告されていながら、誰もがこの殺人に気づいていながら、それを阻止できなかった結末は、私たちの身の回りでも起こるかもしれないような事柄を予見しているという皆の感想だった。内容には触れないことにするが、改めてマルケスの鋭い感性を感じさせられる作品だった。ミステリーがかった事件を改ページで五つに区分し、どんどん話が盛り上がっていく様は、見事だった。あとがきで、訳者の野谷文昭氏が書いている解説は、この作品のすべてを物語っているように思えるので次に引用させてもらおう。そして、1981年に刊行された、この決して古くなっていない優れた作品の一読をお勧めしたい。
この作品でまず指摘できるのは、構成が優れていることである。番号は付されていないが全体がほぼ均等の五章に分けられ、それぞれの章が独立しながら次の章を呼ぶ形になっている。作者によると、最後の章で殺人を克明に描くことは最初から決まっていたという。書き出しに呼応しつつ、クライマックスとして読者に余韻を残す上で、確かに効果的な配置といえる。それから、目立った特徴は、時間の処理の仕方で、様々な過去時制を用い、モザイクのように入り組んだ過去を作り出している。特に、カフカの『変身』の影響が指摘されている冒頭で、すべたは過去であることを示しつつ物語を進めることにより、早くも悲劇的な雰囲気を醸し出すのに成功しているといえよう。・・・(G・ガルシア・マルケス『予告された殺人の記録』新潮文庫の訳者あとがきより)
画像は、友人が「昭和記念公園」で撮られた「コスモス」。自然の色のコントラストは素晴らしい。