October 23, 2015
「アルテリアシネマ」の映画は、同じ映画を決められた時間に上映するので、うっかりしていると見逃してしまう。「この国の空」は、絶対に見たいと思っていた映画だ。このところ出かける用事が多くて少し疲れていたが、思い切って出かけてよかった。素晴らしい映画だった。まずパンフの言葉を引用させてもらう。「芥川賞作家・高井有一による同名小説は、1983年に出版され谷崎潤一郎賞を受賞。終戦間近、当時の東京の庶民の生活をこまやかな感性と格調高い文章で丁寧に描写され、戦争という時代を戦場ではなく、庶民の暮らしを繊細に、そしてリアルかつ大胆に描く物語を、『ヴァイブレータ』『共喰い』など数々の作品で男と女のえぐみとロマンチシズムをみごとに表現した、日本を代表する脚本家・荒井晴彦が18年ぶりに監督に挑んだ渾身の一作。・・・」とある。
私が生まれ幼少期を過ごした杉並区が舞台になっている。わが家は、終戦の前年に家族皆で疎開した。年齢的には10年ほど上の世代の話で、実体験としてはないが、東京に残っていれば、家族が経験したであろう生活が展開されていた。映像でありながら、文学の世界に引き込まれるような気持ちで見終えた。「安保法案」の可決など、何か戦争の匂いのする最近の世の中にあって、この作品は、そういう言葉をどこにも使っていないが、強い反戦映画にもなっていると思った。主人公を演じる二階堂ふみが、映画の最後に朗読する茨木のり子の、「わたしが一番きれいだったとき わたしの国は戦争に負けた」に始まる詩が、この映画の叙情性を高め、深い余韻を残している。
帰りに図書館に寄った。借りていた谷崎潤一郎『細雪』上巻は、文字が小さくて、ルーペなしでは読めないので、文字の大きい本を別の機会に借りることにして、これを返却し、予約が届いていた本2冊、若竹七海『さよならの手口』(文春文庫)と知念実希人 『黒猫の小夜曲』(光文社)を借りた。2作品ともすぐ読めて、また今のふさぎがちな気分のときには最適な本のように思えて、楽しみだ。
画像は、たわわに実ったみかん。友人宅の庭で撮った。今年は生り年とか。冬はすぐそばまできている。