20210604
ぽかぽか春庭アート散歩>2021アート散歩早春~春(9)前田コレクション in 目黒区美術館
早春、三寒四温の季節。気温あがったり下がったりで体調維持がたいへんですが、四温のほうの一日、娘と出かけることにしました。
目黒美術館へ行く前に、目黒駅アトレの日本蕎麦店でランチ。テーブルには透明シートが立てられていて、向かい側の人と話すにも飛沫防止。もっとも、私と娘は、外食のときはこれまでたいてい「黙食」です。
目黒美術館の「前田コレクション展」には、.前田育徳会(加賀百万石の前田家財団)が所蔵するお宝のうち、未公開作品が展示されています。
前回、目黒美術館に来たのは、2020年の桜が咲き始めでした。1年ぶりの訪問です。
目黒区美術館の口上
本展では、前田家第16 代当主である前田利為の収集した、近代美術コレクションを紹介します。
利為による近代美術コレクションは、4 度にわたるヨーロッパ赴任を含む多忙な公務のかたわ
ら、自ら展覧会を巡り、美術家のアトリエを訪れて収集した作品を含むきわめて貴重なものです。
初公開となる作品を含めて、利為の愛した前田家の近代美術コレクションの多様な魅力に触れ
て頂けることでしょう。
また、目黒区と金沢市とが友好都市として交流を深める契機ともなった、目黒区駒場の地に現
存する旧前田家本邸にゆかりのある作品や資料も紹介します。
なお、本展に出品される作品は、すべて公益財団法人前田育徳会の所蔵品です。
加賀前田家の16代目当主前田利為。本郷の自邸に明治天皇皇后と皇太子夫妻を迎えるにあたり、先祖代々から受け継いだ家宝のほか、軍人としてヨーロッパに赴任していた間に買い求めた西洋画などをお屋敷に飾りたてました。天皇行幸の栄誉を得たのち、前田家は本郷の12000坪の土地を東京大学用地として提供。代わりに駒場に10000坪の土地を得て、現在旧前田邸として公開されている洋館和館を建てました。何度か訪問して見学した前田邸ですが、コレクションを見た娘が、「それじゃ、私も旧前田邸の見学に行こうかな」と言い出したので、暖かくなったら出かけようと思います。
展示第一室の 目黒美術館の口上
1.利為の愛した美術品
利為のコレクションには、国内外の展覧会や美術家のアトリエで、自ら選んだ作品も少なくありません。本展では、そのように利為がとりわけ気に入っていた作品を紹介します。 また、天皇などの貴賓を迎えることを想定して前田家の本邸に飾られた、当時の日本を代表する名画の数々も見どころです。
入り口に入ると最初に目に入るのは。
ジャン・パディスト・アルマン・ギョーマン「湖水」1894
第1展示室の最大の作品は。
ルイ=ジョゼフ=ラファエル・コラン「庭の隅」1895年(143.9 × 195.4)
コランは黒田清輝が師事したことで知られる当時の大モノ画家でした。
前田利為は、軍務で欧州滞在中に買い求めた好みの絵のほか、パリに画廊を開いた画商林忠正の死後、絵が売り立てられたとき、散逸を惜しんでコレクションをまとめて購入しました。
利為が一番気に入っていた作品は。
ジャン・レオン・ジェローム「アラビア人と馬」
第1室の作品の中、娘が一番気に入ったのは、ルノアールの「アネモネ」(画像借り物)
第1室には、利為がパリで出会った彫刻家ポンポンの彫刻が展示されていました。シロクマと鳥(バン)の彫刻が初公開として台に乗ってがいました。今回の展覧会のチラシも、シロクマ版とバンのと両方がありました。
初公開の牛田鶏村「鎌倉の一日」1917
前田利為は七日市前田家から加賀前田本家の養子となり、15代当主前田利嗣の長女娘漾子(なみこ)と結婚。しかし、なみ子はヨーローパ滞在中に病没。利為は酒井菊子と再婚。利為と菊子の長女美意子は、母の実家酒井家の従兄弟と結婚して酒井美意子となりました。
フェルナン・ウンベール「前田利為像」マルセル・バッシュと「前田漾子像」
利為は軍人として南方戦線に行く途中、ボルネオ近辺で飛行機事故により戦死。享年57
高沢圭一「前田利為公行軍図」1942
利為の飛行機事故は、戦死扱いとするかどうかでもめました。戦死じゃなければ、膨大な財産に相続税がかかるところだったのですが、戦死となったことで前田家の財産は相続税を免れ、お宝は前田育徳会が管理。今回の展示となりました。
この展覧会のタイトルが「春雨に真珠を見た人」となっている訳は。春雨に限ったことではないのですが、雨上がりの蜘蛛の巣に雨の雫がかかっている姿はとても美しく、ことに晴れて日光が雫に当たると、きらきらと輝き本当にきれいです。私は田舎者ですから、雨があがると蜘蛛の巣を探し、雫がきらきらと輝くのを楽しみました。
利為は春雨があがったあと、蜘蛛の巣を見て写真に撮り、写真アルバムのタイトルに「綾真珠」というタイトルをつけました。
私は、前田利為コレクションについて「金持ちが金にあかして買い集めた絵画」と思って今回の前田コレクション展を見にきたのですが「綾真珠」のエピソードを知り、子どものころの私が雨上がりの蜘蛛の巣が大好きだったことと共通する感受性を知り、利為のひととなりに親しみを感じました。同じものが好きであるというのは、人と人のコミュニケーションのきっかひとつです。
さはさりながら。前田利為の選んだ絵画、私の好みとは違っていました。利為は邸宅を飾る日本画の絵師にも細かい注文をつけ、気に入らない絵は描き直しを命じたそうです。院展入選の作品なども積極的に購入していたのですが、新傾向の二科展の作品などは「こんなものは絵じゃない」と、嫌ったそうで、絵に関しては「先祖伝来」の価値観の持ち主だったようです。
軍人として亡くなった利為ですが、隠居後の晩年があったら、徳川慶喜のように好きなように写真を撮って暮らしたのじゃないかと想像しています。
私と絵の好みは合わないお殿様でしたが、こうしてコレクションを残してくれたこと、前田の殿様に感謝!
今回も、展示室の観覧客はまばらで、換気消毒徹底している美術館は、一番安全なお出かけ先と思いましたが、まだまだ春浅い時期のアート散歩、目黒川の桜も「まだ先」の一日でした。
<つづく>
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