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ぽかぽか春庭「こもよみこもち万葉仮名」

2024-02-22 00:00:01 | エッセイ、コラム
20240222
ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>春庭文字表記(4)こもよみこもち万葉仮名

 春庭アーカイブです。何度目かのUPです。
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2009/04/03
ニーハオ春庭ニッポニアニッポン語教室>漢字の国からニーハオマ?(3)こもよみこもち万葉仮名

 ハングルは、15世紀に作られた非常に合理的な文字で、韓国語朝鮮語を表記するのに適したすぐれた文字です。しかし、古代朝鮮語の表記は残されていませんから、15世紀以前の中世朝鮮語古代朝鮮語を復元することはむずかしい。

 4~5世紀から8世紀の日本語が復元できるのは、発音通りの日本語が万葉仮名によって『古事記』『万葉集』などに残されているからです。
 泊瀬朝倉宮御宇天皇(後代に雄略天皇と名付けられたオホキミ)を作者として伝承された古代の婚姻歌謡は、漢字だけで表記されていますが、日本語として読み解くことができます。賀茂真淵や本居宣長のおかげですが、その後、万葉仮名の研究は著しく進んでいます。

籠毛與 美籠母乳 布久思毛與 美夫君志持 此岳尓 菜採須兒
家吉閑名 告<紗>根 虚見津 山跡乃國者 押奈戸手 吾許曽居
師<吉>名倍手 吾己曽座 我<許>背齒 告目 家呼毛名雄母

籠(こ)もよ み籠持ち 堀串(ふくし)もよ み堀串もち 
この岳(おか)に 菜摘ます児
家聞かな 告(の)らさね 
そらみつ 大和の国は おしなべて われこそ 居れ
しきなべて われこそ座せ われにこそは 告(の)らめ家も名も

 古代日本語の発音が、万葉仮名表記によって再現できます。そして、音韻変化の研究によって「掘串 ふくし」の発音は飛鳥奈良以前には「pu ku shi」であったこともわかっています。

 現代韓国語朝鮮語では、漢字をほとんど使わない社会生活になっているので、カムサハムニダ(ありがとう)の、「カムサ」が中国語由来の「感謝」と共通する語彙であることに気づかない子供も育っています。
 日本語の漢字教育をうけた層は、「ごこうじょうにかんしゃします」と発音したとき、頭の中には「御厚情に感謝します」という文字が浮かびます。同音文字、「ご厚情に」を交情、向上、工場、口上、恒常、攻城、荒城、甲状、攻城、高城に置き換える間違いはでるかもしれないけれど、「かんしゃします」の場合、官舎はスル動詞にならないので、「かんしゃします」ということばを聞いたとき、「官舎します」と間違えることはない。

 日本語は、漢文での読み書きのほかに、「漢字をつかって日本語を書き残す方法=万葉仮名」の方式を採用し、200年ほどの間に「日本語表記につごうのよい平仮名片仮名」を広く用いるようになりました。漢字を「ほんとうの文字=真名」とし、それを崩した草書体の文字を「仮の文字=仮名」として、日本語を日本語のまま表記できるようにしました。平安文学の開花は、平仮名の発達による、ということは、土佐物語、源氏物語、古今集仮名序に記されているところです。

 日本の漢字は、現代でもなお「隣の国から伝わった文字」という意識を残している点で、世界の表記システムの中で特異な地位を占めています。アルファベットを使う言語の国では、だれも「古代フェニキア文字を変化させて使っている」などと考えもせずにアルファベットで自国の言語を書き表しています。アルファベットによって母語を書き表している国の人々が、アルファベットの由来などまったく知ることもなく文字を使っているのに比べると、日本は1500年たっても、子どもたちに漢字を教えるとき、それが中国由来のものであることを意識しています。

 私たちは「漢字は中国から来た」ということを、当然のように知りつつ母語を表記する文字として使っています。母語を表す文字のよってきたる所を1500年以上も忘れることなく使い続けているのは、音読み(中国語読み)訓読み(和語の読み)という「ひとつの文字に2種類の言語の読み方」を1500千年間変わらずにつづけてきたからでしょう。

<つづく>
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