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ぽかぽか春庭「2020年の日本語教室の1年」

2020-12-26 00:00:01 | エッセイ、コラム
2020/12/26
ぽかぽか春庭にっぽにあニッポン語教師日誌>2020日本語学校の1年(1)クリスマス会

 どこの2020年回顧も、「いやあ、さんざんな年だった」ということになるのでしょうが、日本語教育界も、激動の年でした。
 2020回顧は、まず仕事の話から。
 2019年4月に入管法が変わりました。労働ビザの要件が変わり、これまでの「高度な専門知識を要する労働ビザ」や「介護看護の資格を持っている人のビザ」のみでなく、非熟練労働目的でも労働ビザで働けるようになったのです。
 その変わり、日本語学校入学審査が一段と厳しいものに変わりました。

 これまで実際は労働目的で来日したいのに、労働ビザがおりないから日本語学校に籍をおき、留学生資格で週28時間まで許されているアルバイトに就く。そして実際には学校へは居眠りをしに来るだけで、2か所のアルバイト先を掛け持ちして28×2=56時間も働く、という留学生がいたという現状がありました。

 入学書類審査、バングラディシュやネパール、ベトナムなどの留学希望者に、これまでとは格段に厳しく来日後の生活と学費の支給条件を課しました。年間収入の低い国では、日本の高い学費生活費をまかなえないと見なされ書類審査ではねられてしまうのです。これまでは仲介業者に借金をして入国審査に通ってきたらしいのですが、実際の預貯金書類まで提出しなければなくなったので、ネパールやベトナムの学生はほとんど審査を通ることができなかったようです。そのため、ベトナム人やネパール人留学生を中心に学校を運営してきた学校は、事業縮小をせざるをえず、倒産する学校もあるし、クラスを担当する日本語教師が25人いたのに、15人が解雇された、という話をききました。

 私が働く日本語学校は、中国からの留学生が多く、富裕層が増えている中国なので預貯金の証明書はOKだったのですが、コロナ蔓延の時代、せっかく許可された留学ビザをけって日本への留学中止を決めた学生が出ました。

 春庭の仕事、3月に学校一時閉鎖が決まり、オンラインでリモート授業が開始されました。春庭も家にWifiを入れ、いざ、オンライン授業と思ったのですが、木造一戸建てでご近所の家も立て込んでいる地域、Wifi環境が途切れるので授業になりませんでした。

 春庭は授業担当をはずれ、自宅待機中は、教材作成に専念。毎日、どの教材が仕上がったか、メール添付で報告するという条件でしたが、途切れ途切れのリモート授業よりはましでした。
 4月も一か月の自宅待機。給与は6割カット。毎日自宅で8時間教材を作っているのに6割カットは理不尽な気もしましたが仕方がありません。
 6月からは、在校生はクラスに戻り、学校で授業。

教員室のわたし。まだ片付けが済んでいません。


 4月に来日するはずだった中国からの留学生は、コロナのために来日延期。7月から来日できない学生のために、初級日本語のリモート授業を実施。8,9,10,11月、リモート授業を続けました。4月入学生を担当する予定だった非常勤講師は、学校に来てリモート授業を担当。

 11月中旬にようやく来日できたあと、2週間のホテル缶詰待機が義務付けられました。ホテルのロビーに毎日お弁当を届け、待機者はロビーにお弁当を取りにきて、部屋で食べる。ようやく学校に来ることができたのは、12月7日からでした。

 4月生と10月生、初級前半組と初級後半組にクラス分けをして授業が開始されました。リモート授業を担当していた非常勤講師2名と新任の非常勤講師ひとり(他の日本語学校が授業縮小のためリストラされたそうです)とで授業を続けました。
 ところが問題勃発。コロナで学生数が減った分、在日のネパール人が入学してくることになりました。すでに何年かは日本で暮らしてきて、配偶者ビザを得ている女性。留学生ビザに切り替えたいという希望で入学したのですが、話すことはできても、ネパール人は漢字がゼロ。中国人は話すことはできなくても、日本語との共通の漢字熟語の意味は文字を見ればわかります。

 非漢字圏の学生と漢字圏の学生では授業方法も異なり、本来ならば同じクラスで学ぶのは無理があります。しかも、途中入学。しかたがないから、ネパール人の漢字学習クラスを特設し、春庭は12時半に午前中の授業を終えた後、12時半から1時過ぎまで漢字入門クラスを担当することを申し出ました。ボランティア!

 昼休み時間がなくなりました。そもそもまったく漢字を書いたこともない人たちが、いきなり漢字は5000字自国で読み書きしてきた学生をいっしょにするのが無理なのです。
 国立大学の留学生クラスで非漢字圏留学生の漢字授業を担当したときは、クラス全員が漢字がわからないのですから、初歩から丁寧に教えれば読み書きできるようになります。しかし、今回は毎日30分という短時間で、5000字知っている中国人クラスで授業についていくための漢字教育ですから、私も初めての経験です。おまけに途中から「ひらがなカタカナ」の読み書きもできないネパール人が加わり、ひらがな指導をしながら、漢字授業もするというアクロバット授業、私は聖徳太子でもないのに、5人のネパール人女性相手に5部授業をしています。

 しかも、しかも。学校経営者からは「コロナで学生の入学辞退が相次ぎ、学校の経営が危機的状態になってしまった。ついては教職員の給与を2割カット8割支給とする」という一方的な通達。倒産するよりはましですが、毎日9時間拘束8時間労働を続け、サービス残業も連日のように。朝6時半に家を出て、8時半に学校に着く。夜は6時に学校を出て8時に家に着く。昼休みも仕事して、ボーナス要求したいところなのに、2割カット給与じゃ労働意欲も衰えるってところですが、今まで以上によく働いている春庭です。えらい!

 入国が遅れたために、年末クリスマスイブの24日まで授業を続けました。年明けには12月まで習ったところを試験すると学生に予告したので、テストつくりもたいへん。なんとか仕上げて、25日は学生たちのお楽しみ会、クリスマスパーティです。
 クリスマスの飾り付けをした教室。


 教室の飾り付けは、先輩である昨年10月に入学した学生。最初の学生たちはとても優秀な人たちであったこともあり、教師は苦労知らずで授業を進めてきました。
 大学院入学を目指して日本語、英語、専門科目の勉学を続け、2人は国立大学の大学院に合格。一人は公立大学の大学院合格。一人は国立大学の大学院研究生(半年後に大学院修士課程に入学できるはず)ほんとうによく頑張った学生たちです。

 先生達


 クリスマス会。中国人学生の「アイドル風ダンス」「クイズとゲーム」などもあり盛り上がったところで、ネパール人女性によるネパールの踊りが披露され、美しい民族衣装とともに、中国人男性たちの目はくぎ付けに。



 ケーキを食べ、いったんおひらきになったあとも、学生たちはワイワイとにぎやかに教室で過ごしていました。
春庭は年明けに実施するテスト問題作成のため、クリスマスの日もサービス残業。

<つづく>
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