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ぽかぽか春庭「びびる」

2020-01-28 00:00:01 | エッセイ、コラム
20200128
ぽかぽか春庭にっぽにあニッポン語教師日誌>再録・日本語教師日誌(21)びびる

 春庭の日本語教室だよりの再録を続けています。
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2006/07/28 金
ニッポニアニッポン語教師日誌>前期もめでたくこれにておひらき(6)日本語トリビア発表・ビビる

 文学部日本語教師養成コースの日本人学生も、学期の終わりは発表です。
 今期の発表は、「日本語についての知識が深められるようなクイズを作り、互いに日本語力を高めあおう」という課題です。
 
 クイズ発表のひとつ。
 「ビビる」は、
(1)罅割れる(ひびわれる)から派生したことば
(2)微々たる(びびたる)わずかでとるに足りないさまから派生したことば
(3)びびる=古い時代の日本語。四段動詞で、はにかむ、恥じらうの意味

 三択です。(1)(2)(3)、どれだと思いますか。
 学生が発表した正解は(3)でした。現代国語の辞書にはまだ「びびる」は搭載されていないものが多いのですが、古語辞典には載っています。

 江戸時代の俳句集や、浄瑠璃本に「唯今、出ぬものならば、びびったりと思ふべし」という用例があります。

 さらに、江戸時代の「びびる」の語源として、学生は、源平盛衰記などに出ている富士川の合戦のエピソードを発表しました。
 ひひ(fifi)という物音を聞いて、平家軍は敵方来襲かと懼れをなし、戦意を喪失させて逃げ出したという話。「ひひ」とは、鹿や鳥の鳴き声の擬声語(オノマトペ)です。

 この「ひひ」の音を聞いて、おそれをなして逃げ出したという話から「ひひる」「びびる」という語が出来上がったのではないか、という説があるのだそうです。

 源平盛衰記の富士川の鳥の鳴き声「ひひ」にまでさかのぼれるかどうかは、まだはっきりしたことは言えませんが、江戸時代に「びびる」という動詞の用例があったことには、びっくりでした。
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20200128
 私は、この学生発表を聞くまでは、「びびる」というのは、テレビタレントが使いだした新語だとばかり思いこんでいました。現代日本語辞典には載っていない語だったからです。
 しかし、古語辞典をひいてみれば、ちゃんと載っていました。

 留学生にも、日本人学生にも、教わることの多い大学での授業でした。台湾の八田ダムのこと、インドネシアバティックの染め方など、学生発表で知ったこともたくさんありました。メキシコや南米に広がる「先祖が帰ってくる日のお祭り」について、今はディズニーアニメの「リメンバーミー」で広く知られるようになりましたが、私が10年以上前にこの祝日について知ったとき「あらら、日本のお盆と同じだね」と、びっくりしたものでした。

 今の日本語学校でも、さっそく中国文化のあれこれを仕入れています。
 中国人にとって、お祝いの色は赤で、花嫁衣裳も結婚式の飾りつけも、春節の提灯も赤色が好まれることは承知していました。
 でも、春節の間、運気アップのためにみなこぞって「赤い下着」を身に着けて過ごすということは、服の下をめくって下着を見たこともなかったので、気づきませんでした。特に厄年の人は、赤い下着赤い靴下を着てすごすそうです。
 学生のひとり(女性)が買い物に行って「赤い靴下」を買ってきたというので、はじめて「春節の赤い下着」について知りました。おもてからは見えない中国文化について、これからも学生にいろいろ教えてもらおうと思っています。日本語教師の役得ですから。

<つづく>
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