面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「複製された男」

2014年08月11日 | 映画
大学で歴史の教鞭をとるアダム(ジェイク・ギレンホール)は、同僚が勧めるDVDを見て愕然とする。
自分とそっくりな…いや、同じ顔の男が出演しているではないか。
あまりにも自分と瓜二つなその男が気になったアダムが調べてみると、それはアンソニー(ジェイク・ギレンホール/二役)という俳優だった。

アダムがアンソニーが所属する事務所を探し当てて訪ねると、警備員がアンソニーと間違えて、彼あての郵便物を受け取ることに。
アンソニーの自宅までも知ったアダムは、彼の自宅に電話をかけた。
最初は相手にしなかったアンソニーだが、電話を取り次いだ妻のヘレン(サラ・ガドン)は心に引っ掛かるものを覚えて、アダムが勤める大学へ向かう。
そこで見たものは、夫と全く同じ姿形で、夫と同じ声で話す男だった。
ヘレンから責められるようにアダムのことを問われたアンソニーは、ついに彼と接触することにする。

ホテルの一室で対面した二人は、一目見るなり互いに驚く。
声や姿形、生年月日も同じであるのみならず、事故で負った胸の傷までも同じ。
あまりのことに衝撃を受けたアダムは、逃げるようにしてその場を後にするが、混乱はアンソニーも同様だった。
そしてアダムの日常を探ったアンソニーは、アダムの恋人メアリー(メラニー・ロラン)に惹かれ、妻を混乱させたとしてアダムを恫喝し、アダムのふりをしてメアリーに会わせることを承諾させる。
同一人物のような二人の出逢いは、互いの恋人と妻をも混乱の渦に巻き込んでいくのだった…


自らのコピーのような人間を目の前にしたアダムとアンソニーは、互いに混乱し、互いに自己のアイデンティティーを揺るがされてしまう。
いったい、どちらが“オリジナル”で、どちらが“コピー”なのか?
いったい誰が何の目的で“複製”したのか?
謎が謎を呼んで、アダムとアンソニーだけでなく、見ている我々も混乱をきたしてくる。

そして、度々登場する何かの象徴のような大きな蜘蛛。
そもそも、今スクリーンの中で繰り広げられている物語は、一人の人間が実際に“複製”されてそこに二人が存在しているワケではないのではないか?
即ち実際の出来事ではなく、誰かの「夢の中」に連れて行かれているのではないか??
夢か現(うつつ)か現か夢か。
現実と幻想とが曖昧になる境界線、幽玄の世界に我が身を漂わせることによって楽しむ「能」。
観て考えていくうちに、まるで「能」の“幽玄の世界”へと引き込まれていくかのよう。


脳ミソをぐりぐりマッサージされ、思考の奥底を揺さぶられる、脳髄刺激系ミステリー。


複製された男
2013年/カナダ・スペイン  監督:デニ・ヴィルヌーヴ
出演:ジェイク・ギレンホール、メラニー・ロラン、サラ・ガドン、イザベラ・ロッセリーニ、ジョシュ・ピース、ティム・ポスト、ケダー・ブラウン、ダリル・ディン、ミシャ・ハイステッド、メーガン・メイン、アレクシス・ウイガ