面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「ゼロ・グラビティ」

2014年01月02日 | 映画
地球の上空600kmの宇宙空間。
スペースシャトルの船外で、メディカル・エンジニアのライアン・ストーン博士(サンドラ・ブロック)は通信システムの復旧に関わるミッションを遂行していた。
ベテラン宇宙飛行士のマット・コワルスキー(ジョージ・クルーニー)は推進装置を背負い、NASAと宇宙遊泳の長時間記録について雑談をしながら浮遊していた。
もう一人のクルーも宇宙遊泳を楽しむようにミッションを遂行している。
そんな平和な時間が過ぎていく中、NASAから少し緊迫した通信が入った。
「ロシアが人工衛星の一つを破壊したが、破片は遠くの軌道を流れるので影響はない。」
クルー達は気にすることなくミッションを続けた。

しかししばらくするとその平和なひとときは突然中断された。
「すぐにスペースシャトル船内に退避して地上へ戻れ!」
緊迫した通信が流れる。
「破壊された衛星の破片が予期せぬ方向へ飛び、別の衛星を破壊した。その破片の軌道はそちらへ向かっている!」
もう少しで作業にキリがつくライアンが退避に手間取っている間に、破片の一部が到達し始めた。
「すぐに退避するんだ!」
マットもライアンを手伝って退避しようとしたが、瞬く間に降り注ぐ破片の数は増えていく。
同じく船外作業に就いていたもう一人のクルーに破片が直撃した。
次々に降り注ぐ破片はライアン達を襲ってきた。
そして破片が当たった衝撃でライアンが乗っていたアームが吹き飛ばされ、ベルトを外したライアンは反動で宇宙空間へと放り出されてしまう。

酸素が残り少なくなった状態の宇宙服だけを身に付けた状態で、真っ暗な音の無い宇宙空間に投げだされたライアン。
NASAとの交信も途絶えて絶体絶命となったとき、マットとの通信がつながり、九死に一生を得ることはできたが、そこから凄まじいサバイバルが始まる…


温度が、摂氏125度からマイナス100度の間で変動する宇宙空間。
空気はもちろん酸素も無く、重力も無く全く何もない。
生身では生物が生きていくことはできない、「無」だけが広がる空間に放り出されるライアン。
時に彼女を俯瞰し、時に彼女の目線となるカメラワークに、まるで自分が宇宙空間に投げだされた気分になる。

更に緊迫感を増すのは、本当に宇宙空間で撮影されたのではないかと見紛うばかりの見事なSFX技術にもよる。
新たに開発されたワイヤーアクションによって、よりリアルな動きを撮影することができたため、全くの無重力状態で撮影されているように見えるところは素晴らしい。

ライアンに同化すると同時に、リアルな宇宙空間を描くことができたため、事故発生からエンディングまでの間、全身の筋肉と思考回路や感情は、常に緊張を強いられ続ける。
この点で上映時間91分という長さが実に絶妙。
あの緊迫感が2時間も続くことになれば、観客は全身凝り固まってドッと疲れてしまい、映画を観終わった後の日常生活に支障をきたすに違いない。


宇宙空間における壮絶なサバイバルを、ライアンと一緒に恐怖におののきながら体験することができる、アトラクション型SFスリラー。
3D版を鑑賞すれば、スリル感は絶頂に達する。
最後の最後では、大きく安堵の呼吸ができて楽になれるということだけは請け合うので、安心して劇場に足を運んでいただきたい佳作。


ゼロ・グラビティ
2013年/アメリカ  監督:アルフォンソ・キュアロン
出演:サンドラ・ブロック、ジョージ・クルーニー