功夫電影専科

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『片腕ドラゴン』

2012-12-30 23:03:31 | 王羽(ジミー・ウォング)
「片腕ドラゴン」
原題:獨臂拳王
英題:One-armed Boxer
製作:1971年

▼去年、私はその年最後の映画レビューに王羽(ジミー・ウォング)ことジミー先生の主演作、『戦国水滸伝・嵐を呼ぶ必殺剣』をセレクトしました。そこで今年最後の更新も、ジミー先生の作品から代表作と呼ばれる『片腕ドラゴン』を取り上げてみたいと思います。
この作品は、ショウ・ブラザーズ屈指の剣戟スターとして活躍していたジミー先生が、諸事情で台湾へと活動拠点を移さざるを得なくなった頃に手掛けたものです。先の『嵐を呼ぶ必殺剣』もこの時期の作品で、他にも『ドラゴン武芸帖』などが製作されています。
どちらも傑作と呼び声の高い映画ですが、この『片腕ドラゴン』は台湾という新天地で再スタートを切ったジミー先生の、ある思いが込められている作品なのです(詳細は後述)。

■正徳武館に所属するジミー先生は、あるときライバル道場の鉄鈎門とトラブルを起こしてしまう。軽率な行動を取ったジミー先生は罰を受けるが、怒りがおさまらない鉄鈎門の道場主・田野は道場総出で正徳武館を襲撃する。が、武術の実力は正徳武館のほうが遥かに上であった。
この一件で完全にブチ切れた田野は、日本・チベット・タイ・韓国・インドから武術の達人たちを雇い入れ、正徳武館の人間を皆殺しにせんと動き出した。所有する工場が襲撃を受けたため、再び正徳武館は鉄鈎門との全面対決に挑むのだが、敵はあまりにも強大だった。
 館長や門下生は皆殺しにされ、ジミー先生も沖縄の空手家・龍飛(ロン・フェイ)に片腕を切断された。こうして正徳武館は壊滅し、鉄鈎門はさらなる悪事に手を染めていく事に…。一方、ジミー先生は医者の親子に助けられて一命を取り留めていた。当初は自信を失っていたが、片腕で戦う方法を知った彼は過酷な特訓を開始する。
腕の全神経を焼き切り、一撃必殺の鉄拳を手に入れたジミー先生は、いよいよ仇敵へのリベンジに挑む。対する相手は田野と大勢の手下たち、そして怪物じみた実力を持つ世界武術連合軍!果たしてジミー先生は、腕一本でこの圧倒的不利な状況にどう立ち向かうのだろうか!?

▲本作は、自身の代表作である『片腕必殺剣』のキャラクター像と、初監督作の『吼えろ!ドラゴン 起て!ジャガー』のストーリーを基に、ジミー先生が独特のアイデアを散りばめて作り上げた逸品です。
功夫アクションの完成度は、劉家良(ラウ・カーリョン)が武術指導を担当した『片腕カンフー対空とぶギロチン』には及びません。が、その雑さを補って余りあるエネルギッシュな動作と、次から次へ現れる世界武術連合軍の奇怪さのおかげで、異様にテンションの高いアクションが構築されています。
 これら体当たりのアクションもさることながら、本作はジミー先生にとって重大な”決意表明”が秘められていることについても触れておかなければなりません。
本作でジミー先生は道場を追われ、大勢の強敵を相手に腕1本で戦うことを強いられます。防御を捨てて必殺の一撃に全てを賭けるその姿は、香港のメインストリートから台湾へと移り、海千山千のスターを相手にアイデア1つで勝負を挑む彼自身の姿とダブって見えます。
そう、この『片腕ドラゴン』という作品は、裸一貫で再始動することになったジミー先生の「これから俺はこの路線で生きていく!」という確固たる決意を、映画という形で誇示したものだったのです。ラストでボロボロになってまで戦うジミー先生の表情には、もしかしたら演技を超えた感情が秘められていた…のかもしれませんね。

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