功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『神鳳苗翠花』

2007-09-14 20:56:27 | 女ドラゴン映画
神鳳苗翠花/神鳳苗翠琴
英題:Kung fu Mistress
製作:1994年

●『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地黎明』のヒットによって多くの亜流作品が作り出された。本作もそのひとつで…と、三度目の紹介になりますが、今回はちょっと毛色の違う作品の紹介です。
90年代の香港では古装片(時代劇)ブームが巻き起こっていた。その渦中にいた李連杰も黄飛鴻を演じ続けたが、李連杰以外に黄飛鴻に扮した者も多くいた。そして、この映画の余波によって方世玉や洪熙官といった南派少林伝説の英雄たちも引っ張りだこになり、現代に多くの英雄たちが蘇える事となった。
 今回紹介するこの映画で扱われているのは"苗翠花"という女性。名前だけではパッとしないが、あの少林英雄・方世玉の母といえば思いだす方も多いだろう。李連杰の『レジェンド・オブ・フラッシュファイター』シリーズで蕭芳芳(ジョセフィーヌ・シャオ)が演じていたハッスルママさんこそが、この"苗翠花"なのだ。
本作で"苗翠花"を演じているのは劉家良(ラウ・カーリョン)によって見い出されたレディ・ドラゴン惠英紅(ベティ・ウェイ)なのだが、何とあの『大酔侠』で"武侠影后"と呼ばれた鄭佩佩(チェン・ペイペイ)も呂四娘役で出演しているのだ。惠英紅と鄭佩佩の共演とは、何という豪華な取り合わせだろうか!
 物語は雍正帝を鄭佩佩が討つところから始まり、雍正帝の空飛ぶギロチンに片腕を失いながらも打倒した鄭佩佩は、その後苗家の使用人としてひっそりと暮らしていた。苗家では念願の男児が生まれるが、同じ時期に生まれた女児は鄭佩佩が預かる事となった(ちなみに苗家の当主を演じているのは『猿拳』で元彪をボコった賭博場の主の人)。
…と、ここまではなかなか面白そうだが、これ以降物語はコメディと化し、あまり派手な話ではなくなってしまう。使用人の娘という事で兄に虐げられる事もあったが、鄭佩佩に武術の訓練を受けながら育った女の子は惠英紅へと育った。そんな惠英紅ももう年頃ということでお見合い…となったのだが、相手がデブ男ということで惠英紅も嫌々だ。そこで仲の良かった侍女の手引きで家から脱出し、涙ながらに別れを告げる惠英紅であった。
その後、惠英紅は広東に流れ着き、金目当てに役人試験の武術大会で優勝する。ここからは役人となった惠英紅と上司の麥徳羅(元ショウブラスターで『少林秘棍房』などに出演)との話になる。メルビン・ウォンが何故か王子様だったり、ドラゴン・キッカー(偽)で活躍したりするが、特に大きな見せ場も無く、惠英紅と麥徳羅がラブラブになって本作は終了する。
 英語タイトルが『Kung fu Mistress』。加えて鄭佩佩の出演、扱っている題材が苗翠花ということもあり、当初はバリバリの古装片アクションを期待したが、ほのぼのコメディになってしまったのは残念だ。そのうえアクションは少なく、待望の惠英紅VS鄭佩佩もあるにはあったが、スローモーション多様で手合わせの時間もほんの数瞬でまったく迫力も無い。
それもそのはず、どうやら本作は電視劇のようなのだ。そもそも画質が映画のものではないため、恐らくこの作品はTVスペシャルかTV映画として製作されたものをパッケージ化したのではないかと思われる。いずれにしろ、古装片ブームの風潮に乗って苗翠花を取り上げたのはいいが、題材が題材だけにもう少しアクションが欲しかったところである。
 そんな本作での救いは、惠英紅のハツラツとした魅力にある。製作当時の段階で女の子役はちょっと無理があったかもしれないが(爆)、本作の惠英紅は可愛らしく振る舞い、劇中でもクルクルと変わる佇まいには、どことなく『長輩』などを髣髴とさせる。功夫映画ファンは要注意、惠英紅ファンは要チェックの作品といったところだろうか(笑