功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

メジャー大作を振り返る:日米編(2)『ベスト・キッド(1984年版)』

2016-05-13 22:49:22 | マーシャルアーツ映画:上
「ベスト・キッド」
原題:THE KARATE KID/THE MOMENT OF TRUTH
製作:1984年

●今月は先月に続いて名作・話題作を中心に紹介していますが、その中で最も有名かつメジャーなのは本作といっても過言ではないでしょう。
この作品は『ロッキー』を手掛けたジョン・G・アヴィルドセンが監督し、当時のアカデミー賞にもノミネートされたスポ根映画の金字塔です。格闘映画としては異例の大ヒットを記録し、多くの人々に感動をもたらしました。
 ストーリーは非常にシンプルで、ひ弱な青年のラルフ・マッチオノリユキ・パット・モリタと出会い、彼に弟子入りして空手大会で優勝するまでを描いています。
こうして粗筋だけを書くと単純すぎるように見えますが、本作は細やかな描写を積み重ねることによってキャラクターに深みを持たせ、作品に奥行きを持たせているのです。
 特にラルフとノリユキの関係は印象的で、友情を結んだ2人が師弟となり、やがて擬似的な親子のようになっていくシークエンスは味わい深いものとなっていました(この点はフォロワー作品でも真似された例がほぼ無く、いかに模倣しづらいかが解ります)。
また、この手の作品では師匠=超人然とした存在として描かれがちですが、本作のノリユキは神秘性と親しみやすさの両立に成功。さらには人間的な弱さを併せ持ち、感情移入のしやすいキャラクターに仕上がっています。

 そして本作最大の長所は、あくまで空手を戦いの手段ではなく「精神鍛練と自衛の為」として扱っている点です。これは武術の本質であり、戦わないと始まらない格闘映画では扱いにくいテーマでした。
香港映画においても、『英雄少林拳』『SPIRIT』等で題材になってはいますが、持て余してしまうケースも少なくありません。それに対し、本作ではノリユキがそうした観念を丁寧に説き、その教えをラルフは最後まで貫くのです。
 修行の内容も専守防衛の色が強く、すべてが守りの型の練習になっているのがミソ(唯一の例外は鶴の舞のみ)。それでいて視聴者に堅苦しい印象を与えず、ワックスがけやペンキ塗りといった明快な動作で描き切っている点は、本当に素晴らしいと思います。
難点を挙げるとすれば、後半の空手大会で守りの型がそれほどフィーチャーされず、修行シーンで登場しなかった攻めの型をラルフが普通に使っている事でしょうか(アクション指導は審判役でも出演している空手家のパット・ジョンソン)。
 アクションにおける見栄えにおいても、ラルフより攻撃的なコブラ会の面々のほうが完全に勝っていて、あまり主人公が強く見えないという問題もあります。まぁ、ここまでの展開を考えれば仕方のない描写なのですが…。
とはいえ、決勝のVSウィリアム・ザブカは手に汗握る名勝負となっていて、最後の決着も実に見事。敗北後のウィリアムの改心が早すぎるのと、諸悪の根源であるマーティン・コーヴの末路がカットされたこと以外は、最高のラストだったと思います。
 のちにシリーズ化され、成龍(ジャッキー・チェン)主演のリメイクが作られたのも納得の傑作。本作は今回の特集に際して目を通したのですが、ここまでの逸品ならもう少し早く見ておけばよかったなぁ…と若干後悔してます(苦笑
さて次回は、欧米から飛び出して日本へと帰国! 隻眼の剣豪VS魔界の使者による死闘にご期待ください!

最新の画像もっと見る

コメントを投稿