功夫電影専科

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ジャッキー、ハリウッドに行く(終)『ベスト・キッド(2010年版)』

2017-01-30 14:51:19 | 成龍(ジャッキー・チェン)
「ベスト・キッド」
原題:The Karate Kid
中文題:功夫梦/功夫夢
製作:2010年

●2000年代における成龍(ジャッキー・チェン)の躍進は、ハリウッドへの本格進出だけに留まりません。この当時、中国では好景気の到来に伴い、映画市場が規模を拡大していました。
その勢いはハリウッドでさえ無視できないものになり、米国での活動が頭打ちになっていたジャッキーは、新たなフロンティアである中国への参入を決意します。
中国における映画製作にも制約はありますが、ハリウッドよりは馴染みやすい土壌だったらしく、彼は徐々に大陸寄りの姿勢へと転換。中国との合作映画を連発し、多大な成功を収めていくのです。
 また、ほぼ同時期にジャッキーは役者としての在り方を改め、スタントより演技に集中していくようになります。その結果、『香港国際警察/NEW POLICE STORY』で評価を受け、『新宿インシデント』でシリアス路線を確立するに至りました。
中国での名声と演技者としての改革。この2つの要素によって新たな局面を迎えたジャッキーですが、それに合致するかのような、まさに最高のタイミングでハリウッドからオファーが舞い込んできました。それが『ベスト・キッド』だったのです。

 この作品は1984年に製作された同名作品のリメイクで、ストーリーラインはほぼそのまま。主人公は製作を担当したウィル・スミス夫妻の息子であるジェイデン・スミス、ジャッキーはパット・モリタにあたる役柄を演じました。
オリジナルとの違いは、使用する武術が空手から功夫に、舞台がカリフォルニアから北京に変わったこと。登場人物の設定にも手直しが行われ、オリジナルではあまり存在感の無かった母親とヒロインに関する描写も、かなり付け加えられています。
 他にも細々とした部分での変更はありますが、先述したように全体の物語はほとんど同じです。しかし本作は、中国の伝統的な文化や人々との交流、キャラクターの細やかな心情の変化を描いており、単に原典を模倣しただけで終わってはいません。
矛盾点の解消にも力が注がれていて、たとえばオリジナルでは防御しか練習するシーンが無かったのに対し、本作では最初から攻撃と防御についての描写が存在します。これにより、大会で攻撃の型を使用している点が唐突に見えなくなっていました。

 しかし本作でもっとも素晴らしいのは、師匠を演じたジャッキーの存在そのものにあります。本作における彼は非常に無愛想(ミヤギさん以上に取っつきにくそう)で、他人との交流にも消極的な世捨て人を演じています。
そこには過去のハリウッド作品で見せた愛想や、誇張されたヒーローの面影は存在しません。大人数を相手にすれば息切れもするし、年相応に老け込んだ姿からは虚構を超えた現実味すら感じました。
やがて彼はジェイデンとの特訓を通じて絆を育み、後半のクライマックスである車中のシーンに至ります。ここでのジャッキーは情感に満ちた演技を見せ、それを見ていたジェイデンが取った行動が更なる感動を呼ぶのです。
 この作品が製作された背景には、中国市場を見据えたハリウッドの戦略や、自分の息子を主演にしたいスミス夫婦の意思、世界に自国の文化をアピールしたい中国側の野望など、様々な思いが渦巻いていたことは確かでしょう。
ですが、このシーンでジャッキーは役者としての本領を存分に発揮し、その実力を世界中の観客に見せつけました。周りの思惑が何であれ、「決して自分はハリウッドという冠が付いただけのアクションスターではない」と明確に示したのです。

 思えば、かつて奇妙な師匠に特訓を受けていた青年が、時を経て特訓を課す側となっている点も実に感慨深いものがあります。『ドラゴン・キングダム』でも同じ立場でしたが、あちらはお祭り映画的な要素が強く、情緒的な物では本作に分があると言えます。
また、しっかり体を仕上げて見事なアクションを見せたジェイデン、コブラ会の5倍くらい怖かった于榮光(ユー・ロングァン)の存在感もなかなかのもの。欲を言えばNG集の挿入と、どこかでラルフ・マッチオをカメオ出演させてもらいたかったかなぁ…。

 …と、そんなわけで今月はジャッキーのハリウッド主演作をおおまかに追ってみました。ハリウッドという巨大な壁に立ち向かい、一旦は挫けるも役者として研鑽を積み、遂にはハリウッドをも制覇したジャッキーの生き様にはドラマチックさすら感じます。
彼の活躍は現在も続いており、去年はロシア映画でジェイソン・スティサムやシュワルツェネガーと仕事をしたばかり。さらにはブルース・ウィリスとの共演も噂されているらしく、今後の動向が注目されます。
果たして、ジャッキーは次にどんな作品をハリウッドで撮ってくれるのか? まだまだバイタリティ溢れる彼に大きな期待を抱きつつ、今回の特集はこの辺りで終わりたいと思います。
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