功夫電影専科

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映画で見る李小龍(3)『Bruce Lee in G.O.D 死亡的遊戯』

2017-11-24 15:18:47 | 李小龍(ブルース・リー)
「Bruce Lee in G.O.D 死亡的遊戯」
製作:2000年

●私がカンフー映画の魅力に取りつかれたのは、中学時代に遭遇した『天地大乱』が切っ掛けであり、高校に進学するとより本格的にカンフー映画を嗜むようになりました。
情報の収集源はもっぱらインターネットであり、ファンサイトを巡っては知られざる作品に思いを馳せたものです。当時(確か2002年ごろ)は映像配信サービスなど存在せず、海外サイトを漁ってはカクカクな動画をRealプレーヤーで見ていた覚えがあります。
 そんな中、『Bruce Lee in G.O.D 死亡的遊戯』の情報を知ったときは本当に驚きました。李小龍(ブルース・リー)が急逝したことによって未完となった『死亡的遊戯』…その映像は78年の『死亡遊戯』で流用されるも、大部分は未使用のまま封印されていました。
その映像が解禁されるとあって色めき立ったのですが、残念ながら片田舎に住んでいる身では劇場に向かう事はおろか、ソフトの入手さえ不可能だったのです(当時はネット通販など一般的ではない時代でした)。
ところが、進学先の区域にある書店で幸運にも本作のDVDと遭遇! 両親に誕生日プレゼントとして購入してもらえる事になり、「買いに行くまで店頭から消えないでくれ!」と必死で祈った記憶があります(苦笑

 とまぁ、そんなわけで色々と思い入れのある作品なのですが、この作品にはもうちょっと複雑な経緯があります。78年版『死亡遊戯』から数十年後、未公開映像の解禁を望むファンの熱意が届き、発掘されたラフカットから2本のドキュメンタリーが製作される事になります。
それが『G.O.D』とジョン・リトル氏による『A Warrior's Journey』であり、本作は前半が関係者のインタビューを交えた再現ドラマ、後半が『死亡的遊戯』の未公開映像で占められています。
要するに、この作品は正式な伝記映画では無いんですが、日本のスタッフによって李小龍の生い立ちが映像化されたという事実は無視できません(限定的な範囲ですが)。故に、セミ・ドキュメンタリーである本作の紹介に至ったというワケです。

 本作で李小龍を演じたのは李[火韋]尚(デビッド・リー…公開当時の芸名は李尚文)で、これが初の主演作。ヒロインで本業は歌手の李蘢怡(ティファニー・リー)も、デビュー間もないため演技に拙さが見えます。
そのため、前半のドラマパートは酷評に晒される事が多く、李[火韋]尚がアクションに慣れていない点(ヌンチャクが使えないのでスタントを使用)もその一因となりました。
 確かに、ドラマパートでのやり取りはアッサリとしており、あまり予算が掛けられていないように見えます。ただ、李[火韋]尚が『死亡的遊戯』のストーリーを尋ねられて自分の頭を指し示すシーンなど、印象的なカットや台詞はいくつもあります。
むしろドラマパートでの問題点は、伝記にもドキュメントにもなりきれていない構成、そして『死亡的遊戯』の未公開映像を小出しにしていた点にあると言えるでしょう。

 と言うのも、劇中で『死亡的遊戯』の未公開映像が何度か挿入されますが、これがあまりにも“見せすぎている”のです。
例えば李小龍とダン・イノサントの会話シーン、或いは田俊&解元のアクションなどがドラマパートでダラっと流され、後半の映像解禁におけるサプライズが削がれてしまっています。
中でも、カリーム・アブドゥール・ジャバールの正体を早々にバラしてしまったのは大問題。あのシーンは本作屈指の衝撃的なカットなので、真っ先に公開するのはどうかと思いました。
かくして未公開映像の有難みは薄れ、視聴者はドラマパートに集中できなくなる悪循環が発生。のちにドラマを短縮したバージョン(残念ながらこちらは未見)が発売されることになったのも、仕方のない話と言えるでしょう。

 さすがに後半の未公開映像は、最高に盛り上がるBGMと相まって見入ってしまうものの、カット割りや効果音などに疑問が残ります(特に『必殺仕事人』みたいな効果音は…う~ん)。
しかし本作の登場により、それまで謎に包まれていた『死亡的遊戯』の一端が解明され、李小龍のファンや評論家による研究は大いに進みました。私もイノサントのスティック捌きや、池漢載の連続投げには度肝を抜かれたものです。
 そして本作で私の心をもっとも揺り動かしたのは、長い時間を経ても色褪せることの無い李小龍の魅力と、並外れたアクション描写そのものでした。本作は伝記としてもドキュメントとしても中途半端ではあるものの、製作された意義は大いにあると思います。
さて、ここまで香港・米国・日本で作られた李小龍の伝記を追ってきましたが、オーラスとなる次回はその最新モデルが登場! そろそろ彼の誕生日が近付いてきてるので、最終回は11月27日に合わせて更新する予定です!

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2 コメント

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『東から来たドラゴン』待ってます (二白桃)
2017-11-24 23:02:13
こんばんは。
私は『VERSUS』『燃えよピンポン』『柔道龍虎房』といった、戦いが続いていく感じで終わる作品が好きで、『G.O.D』の李小龍も非常に格好良いと思います。
でも既に故人の李小龍にいつまでも戦わせるのが酷なようにも感じてしまいます。
Game Of DeathでG.O.Dという言葉遊びは面白いけど、それをドラマ部分でさも事実の再現であるかのように言わせるのはどうかと思います。
このように各要素が長所にも短所にもなっていて評価に困る作品ですが、やはり全体的には失敗作かなあと個人的には思います。
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返信。 (龍争こ門)
2017-11-29 00:01:42
 二白桃さんこんばんは、お返事お待たせしました。

>でも既に故人の李小龍にいつまでも戦わせるのが酷なようにも感じてしまいます。
 故人となったアクションスターは数あれど、ここまで長きに渡って映画やドキュメントの題材になり、戦うことを宿命付けられたスターはそうそう居ません。
そう考えると、確かに李小龍を取りまく環境は過酷だと言えるかもしれませんね。しかし、今後もきっと李小龍をテーマにした映像作品は作られ続けると思います。

>このように各要素が長所にも短所にもなっていて評価に困る作品ですが、やはり全体的には失敗作かなあと個人的には思います。
 李小龍そのものの存在感は凄いですが、作品全体の出来はややイビツでしたね。
2003年に再版されたバージョンはかなり改変されているようなので(BGMやNG集も別のものに差し替えられてる模様)、いずれ目を通して見たいと思います。
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