『座頭市』シリーズの12作目、中でも傑作の1本だろう。
脚本は、伊藤大輔先生で、監督は三隅研次、そして配役が実に良い。
将棋の相手で、その打ち方で、山本学と林千鶴の親の敵なのが成田三樹夫。
林は、この後劇団円に入り、高林由紀子となる。
当時劇研の一つ上の男が、円の研究生で、彼に聞いたことがあるが、「林はきれいだ」とのことで、ここでは兄を箱根に探しに来る道中では男装をしていて、これも非常に良い。
市と関わる旅芸人の女が岩崎加根子で、その娘が藤山直美で、当時7歳だが、やはり上手い。
岩崎については、私は1961年夏に行なわれた劇団俳優座後援会の運動会で見ていて、当然にもきれいだった。お台場公園で行なわれた運動会では、時代劇の悪役の横森久が、座内のあれこれを面白おかしく、良い声で話していたが、少し離れて静かにしているのが、岩崎さんで、後援会の会員だった、私の二番目の姉に聞くと、
「岩崎さんは、いつも静かにしているわね」とのことだったが、現在では劇団俳優座の代表のようだ。
成田三樹夫が、唯一敵だと知っていた下男の丸井太郎が殺されて、敵は不明になる。
だが、勝と成田は、声だけで歩きながら、将棋の勝負をしていて、勝つ寸前になると、手を鼻にやるとのクセを出して、市の斬られる。
これは、伊藤先生の新東宝での『下郎の首』と同じ筋立てだが、面白い。
勝新と岩崎加根子は、情を通じるようになるが、もちろん最後は箱根の峠で別れていく。
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