指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

土屋アンナ、勝訴

2016年01月26日 | 著作権

土屋アンナが、演出家との訴訟の判決で勝訴したとの報道があった。

意外にも思えるだろうが、法的にはそうだと思う。

というのも著作権法では、著作者人格権というものが、非常に強く定められていて、内容の改変は著作者の許可がなければできないからである。

報道では、演出家側が、結末の変更について著作者の許可を得ていると立証できなかったとのことで、これは決定的である。

もっとも、映画などでは、原作と大きく違う内容の作品が作られることがいくつもあるが、その場合は、「原作の題名だけを貰ったよ」という形で権利を買うというものである。

今回の芝居の場合も、題名だけを買ったという形で製作すれば、問題は起きなかったのだろうと思う。

著作権は、結構難しい権利である。

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著作権者は誰か

2014年02月07日 | 著作権

佐村河内守氏の作品が、別人の新垣隆氏の手になるものが明らかにされた。

そこで、曲の著作権は誰にあるのかを考えてみたい。

原則的に言えば、著作権は新垣氏にあることは明確である。なぜなら、著作権法は、権利者を著作物を記述した者と定めており、アイディア等を出した者は権利者ではないとしているからである。

テレビ、新聞等の報道によれば、佐村河内守氏は、図形や文字によって曲の主題、構成と進行、具体的な細部を指示し、それに基づいて新垣氏が譜面に書いたとしているのだから。

ただ、問題はそう簡単ではなく、それは佐村河内守氏と新垣氏との合意によるものになり、新垣氏は権利を主張しないそうなので、佐村河内守氏にあるということになる。

だが、こうした類例は音楽の分野では決して珍しいことではない。

ジャズの世界の神様のごとき大作曲家で私も大好きな、デューク・エリントンの曲のほとんどは、彼と同楽団のピアニスト、アレンジャーだったビリー・ストレイホーンとの共作になっている。

これは、本当はビリー・ストレイホーンが作ったのだが、リーダーで親分のエリントンが、自分との共作にして権利を分け合ったものだとされている。

また、日本の文学でも明治時代の尾崎紅葉の小説の大部分は、彼の弟子の硯友社の作家によるものとされている。

 

もっと最近では、菊池寛の小説の、彼が文芸春秋社を作るなどして多忙になった時代以降の作品は、彼の秘書、愛人だった女性の手によるもので、それを暴露した彼女の本もある。

さらに、ノーベル文学賞作家川端康成は、1950年代に多くの通俗的小説を新聞や週刊誌に書いていたが、それは後に流行作家となる梶山季之のものだった。

本来、詩人のような感性で、通俗的な小説を、それも短時間に書く事は川端には到底不可能だった。

そこで、梶山季之が代作し、川端の名で発表したのだった。

それは、作家、代作者、出版社それぞれにとって利益のあることだから、誰も文句は言わなかったのである。

騙されたのは、読者だけというわけか。

 

 

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TTPには

2013年04月20日 | 著作権

TPPと言うと、コメを代表とする農業分野、あるいはせいぜい医療や保険制度の問題で、文化や芸術は関係ないと思われるに違いない。

だが、実はTPP交渉には、著作権も対象に入っていて、アメリカは著作権の存続期間を50年から70年に延長することを日本に求めているのである。

これは、よく知られているように「ミッキー・マウス法」であり、ディズニーをはじめとするアメリカの映画、音楽産業の利益を増大させることを狙ったものである。

TPPなんて関係ないので、どうでも良いと思っていると、知らないうちに著作権の存続期間が、70年に伸ばされてしまうことになる。

やはり、アベノミクスで浮かれていないで、政治はきちんと見ておかなくてはいけないのである。

私は、著作権の理想形は、「詠み人知らず」になることだと思っている。

その理由に、間違いなく世界中で一番読まれているだろう、キリスト教の「聖書」やイスラム教の「コーラン」に著作権はあるだろうか。

教会へのご寄付は別として、聖書の著作権料を誰かに払ったという話は聞いたことがない。

「聖書」は、その意味で、作者は伝説の彼方であり、ある種の詠み人知らずである。

だが、今もなお多くの人に多大な影響を与えている、それが著作物の理想形だろうと私は思う。

 

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TSUTAYAもレンタルコミックを開始

2013年01月09日 | 著作権

先週、用があって南太田のTSUTAYAに行くと、フロアの構成が変わっていて、2階の中にレンタル・コミックのコーナーが大きく取られ、2階にあったカウンターが1階に下ろされていた。

レンタルコミックは、コミックを借りて読むものだが、これは実は、2003年に私が雑誌『出版ニュース』で、「著作権法を整備してレンタル・ブックを」を書いたのがきっかけだった。

 

「あれ、貸本屋は昔からあるのに」と思われるだろう。

映画ファンなら、川島雄三の映画『幕末太陽伝』で、先日亡くなられた小沢昭一が、本を担いできて、女郎たちに貸していたのを憶えていられるだろう。

その通りで、江戸時代から、日本では本や雑誌は、貸本として購読されていたのである。

そして、貸本業の全盛時代は、戦後の昭和20年代で、漫画や雑誌が貸本として流通していた。

それも、岡本喜八の映画『江分利満氏の優雅な生活』の中で、子供が貸本屋で漫画を借りるシーンとして出てくる。

一方、1980年代にレンタルレコード問題があり、業界から法的規制の要望が出て、1984年に議員立法で規制臨時措置法ができた。

その後、著作権法に取り入れられ、新たに「貸与権」が作られた。

ただ、その時に、本と雑誌については、歴史的経緯があるので、当分の間、適用を除外することになった。

そのため、2000年代に入り、新規に貸本業を開始しようとした場合、その扱いが微妙になり、新規開店はなくなり、貸本店は300件ぐらいまでに減少した。

全盛時代は、全国で5,000店くらいあり、今のコンビニ並みにあったのだが。

また、2003年当時「本が売れないのは、図書館、新古書店、漫画喫茶の性だ」としてそれらを排撃する論調が声高に叫ばれ、その中心メンバーの一人に猪瀬直樹もいた。

そこで、私は書いた。

図書館、新古書店、漫画喫茶の利用が増加しているのは、本を借りて読みたいとの需要があるからで、それに対応するためには、有料のレンタルを増加させれば良い。

そうなれば、そこに需要が向かうので、自然と利用の住み分けが生まれ、著作権者に報酬も入るのではないか、と。

2年後に、漫画家等からの要望で、著作権法が改正され、本と雑誌の適用除外が外されたのである。

そして、ゲオを先頭にレンタルコミックが開始された。

これは、本や雑誌の利用の棲み分けであり、大変良いことだと思う。

因みに、従来から営業してきた小規模の貸本屋については、附則で適用除外は継続されているので問題はない。

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『学術情報ソリューション・セミナー』 東京丸の内 MYPLAZAホール

2011年07月01日 | 著作権
知人のサンメデイアの松下さんからご案内が来たので、丸の内の明治安田生命ビルで開催された「学術情報ソリューション・セミナー」に行く。
構成は、昨年行われたセミナーと同様で、最初は国立情報学研究所や情報提供出版社の最新情報の紹介。
午後は、検索ソフトSUMMONを利用した大学図書館での事例の紹介で、九州大学、東邦大学、仏教大学での導入と使用の例(東邦はまだ導入していないようだが)の紹介。
医学、薬学、理学、看護学の分野では、まさに日進月歩で、今では電子ジャーナル等で日々世界中の最新情報、実例を参照していくことが必然となっている。
その意味で、この分野では、最新情報を得て、利用者の教員、研究者等に提供することが図書館において大変重要なのだ。
正直言って、現在の公共図書館では、こうしたことは求められてはいない。
だが、日本中の行政情報、NPO情報等は、これから益々求められ、それを市民に提供できるのは、図書館のように私は思えるが。

会場は。東京駅と有楽町駅のちょうど中間で、どちらに歩いて行ってもひどく暑いので、二重橋駅から地下鉄千代田線に乗り、西日暮里まで行く。
西日暮里駅近くに、居酒屋Hがあったので、入る。
間口が狭く、ひどく入りずらかったが、勇気を持って入ると、中はウナギの寝床のように長くて意外にも広い。
古いタイプの焼き鳥屋である。

公衆浴場の湯につかったような開放された気分で、ビールを飲み焼き鳥等を食べる。
まずいはずはない。
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手写し本

2011年04月23日 | 著作権
先週、神奈川県の図書館協会総会があった。
内容は、例年の決算・予算、事業報告・計画、永年勤続職員表彰等で、特に目立ったものはなかった。
県視聴覚教育連盟の解散と、同連盟事務の継承があったくらい。
視聴覚教育と言うのも、戦後のアメリカ民主主義の遺産のようなもので、ナトコ映写機の配布と共に、全国民に映画を利用して民主主義と文化の向上を図る目的で行われたものであり、1950年代には大きな効果があったといえる。
だが今や、視聴覚教育は、良くも悪くもテレビの教養番組がやっており、同連盟の解散も時代の流れであろう。

さて、総会の後は毎年「講演会」があり、今年は芥川賞作家の揚逸(ヤン・イー)さんだった。
今は、関東学院大学の客員教授でもある彼女は、2007年に日本語を母国語としない作家として、初めて芥川賞を受賞したのだそうだ。
講演の内容は、特にどうということもなかった。
ただ、彼女が中学・高校生時代に、学内で流行していた「手写し本」は、大変興味深かった。

当時、彼女が生まれ住んでいた中国のハルピンにも書店はあった。
だが、そこに並んでいるのは、マルクス・レーニン、毛沢東等の本ばかりで、彼女のような若者が興味を持つ本は売っていなかったそうだ。
そこで、彼女たちの間で流行していたのが、手写し本だった。
それは、まさに手で紙に写して書くもので、教師等に見つかると、当然取り上げられてしまうものだったとのこと。
内容的には、かなりいい加減なものもあったが、中には文革の犠牲となった、劉少奇国家主席の夫人王光美のことを叙述したものもあったという。
揚逸氏も、様々な本を友人から借り、夜に家で写したそうだ。

まるで『源氏物語』の写本ではないか。
近代的印刷術ができるまで、本は写本の形で作られ、流通してきた。
今の日本に、手写しでも読みたいと思える本が本当にあるだろうか。
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「学術ソリューション・セミナー」で六本木に行く

2010年07月03日 | 著作権
サンメディア取締役の松下茂さんからご案内をいただき、「第6回学術情報ソリューション・セミナー」に行く。
会場は、六本木のベルサール六本木。

「図書館を変えるディスカバリーサービス」ということで、海外ですでに行われている企業のインターネットを利用したデーター・ベース・サービスがまず紹介される。

午後は、「SUMMON」というすでにアメリカの大学で開発されたデータ・ベースが紹介される。
現在の図書館のシステムであるOPACに代わるものとして考慮されているもの。
さらに、九州大学や佛教大学でのシステムの構築についても講演が行われる。
図書館の情報システムも様々に変化していることを改めて再認識させられる。

多分、この日に紹介されたデータベースを利用した情報システムは、多分医学系や薬学系等の大学図書館や企業の資料室には有効だと思う。
だが、今の公共図書館で必要とされている情報は何か。
これは十分に考えて見る必要があるだろう。

私個人としては、地方自治体の各種の行政情報が一番利用者が求めているように思える。
例えば、議会の質疑や首長の記者会見、発表など、あるいは諸施策についての各自治体を通じての横断的な比較統計等が求められているのではないか。
いろいろと考えさせられた一日だった。

六本木では、20代の終わりに芝居をしたこともあるのだが、まったく変わっている。大ビジネス街である。
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1枚50円

2010年05月15日 | 著作権
先日、事業仕分けの対象となる法務省の認可法人司法協会が、裁判所のコピー代を1枚50円でやっていることが挙げられていたが、著作権法上は正しい扱いなのである。
現在の著作権では、図書館や類似施設で資料をコピーする時は、その施設の職員にやってもらうことになっていて、利用者がコピーしてはいけないのである。
だが、横浜市図書館を始め多くの公共図書館では、セルフ・コピーをやらせている。
どうして可能なのか。
これは、著作権法上の「個人利用」でやっているのだ。コンビニでやるのも、自宅でテレビやCDをコピーするのも個人利用である。

だが、横浜市図書館がおよそ10年前に、館内にコピー業者のコピー機を置かせて利用者にコピーをさせた時、図書館業界から猛反発を受けた。
もちろん、著作権者や出版社からも。
私も、彼らから「即時中止するよう、しなければ裁判に訴える旨」の、内容証明の文書を受けた。
だが、結局これは双方妥協して結末を付けた。
内容は、21条複写の掲示をし、利用者から申し出があった時はやらせること等であり、今後双方とも問題化しないことだった。

要は、著作権法が現在のコピーの発展を想定せず、時代にずれているからである。
だが、県立図書館等では、未だにコピーは職員がやっている。随分、暇なんだなと思うが。
だから、司法協会が職員がやるのは法的には正しいのであり、法を守る法務省としては仕方ないのだろう。
でも、1枚50円は高い。大体、20円から30円だろう。いくら管理費がかかっていると言っても。
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福原義春さんのご講演はさすがだった

2010年04月22日 | 著作権
昨日の4月21日は、神奈川県図書館協会の総会が開催されたので、職務として紅葉坂の青少年センターに行く。
今年4月に図書館長になったH君もいて、
「紅葉坂は、高齢化時代の今日、集客施設は難しいね」との話になる。
坂の下のみなとみらいは、大にぎわいなのに対し、かつて神奈川の文化ゾーンだったこのエリアは、今や忘れられた「シャッター商店街」のようなエア・ポケット化している。
一時、岡崎県政の下で、音楽堂、図書館、青少年センターをすべて再開発し「大文化センター」を作る構想もあり、実際の絵も見たことがある。だが、県は金が全くないので、それぞれの施設の最小限の改良で終わり、じり貧である。

総会は、特にどうということもなく、すべて原案了承で終わる。
その後、各図書館の永年勤続職員表彰が行われた後、特別講演があった。

講師は、資生堂の名誉会長で、今は(財)文字・活字文化推進機構代表の福原義春氏。
東京都写真博物館館長もされており、書物は言うに及ばず、音楽、映画等々にご造詣が深いのは、さすが、昔の財界人は、低級なホリエモンとはレベルが違う。

中で、文化・芸術はすぐに直接的に社会経済に貢献するものではないが、中長期的には経済にも大きな寄与する例として、1930年代のアメリカのニューディール政策をあげられた。
よく知られているように、民主党下のニューディールでは、TVA等の公共投資が実施された。と同時に「フェデラル・ワン」で、失業している若手芸術家を州や国の広報事業に雇用された。
実際、劇作家のアーサー・ミラー、テネシー・ウィリアムズらが政府機関で働いたことは有名である。
さらに、1940年代になると、欧州のナチスから逃れた知識人が多数アメリカに亡命してきたが、彼らをアメリカ政府は積極的に援助した。
ブレヒト、シェーンベルグ、クルト・ワイルらがそうで、彼らは後にハリウッド映画に貢献することになる。その知識人の代表はアインシュタインで、彼は戦時中の原爆開発に多大な寄与をした。
こうした1930年代以降の文化・芸術政策が、戦後の1950年代のハリウッド映画やポピュラー音楽の世界的な席巻へと結びついた、と福原さんは言われた。

全くそのとおりで、こうした世界文化としてのアメリカの大衆文化は、戦後の世界を覆いつくした。
それは、日本では太陽族になり、フランスではヌーベル・バーク、ブラジルではボサ・ノバ、イギリスでは怒れる若者たちの芝居に、ポーランドではA・ワイダらの映画になる。

このように戦後、アメリカ文化が世界を席巻した理由は、その形成過程で欧州等々の多様な文化の流入がアメリカに流入したことが基盤になっていた。
その意味では、一方的にアメリカ文化が世界に普及したのではなく、アメリカにも多くの多様な文化が存在していたのだ。
そうしたダイナミックな活動の中で、新しい若者文化が生まれたのである。
さて、日本の輝ける太陽族の旗手だった石原慎太郎はどうして、かくもひどくなってしまったのだろうか。原因は唯一つ、「長期の権力は人を駄目にする」と言うことに尽きる。

福原氏が、最後に話された図書館の現状、ベストセラーを購入することへの疑問には、勿論異論があるが、それについてはまた別に書くことにする。

その後、30年ぶりに横浜に戻ってきた友人と野毛の椿で飲む。
ここは、野毛で一番美味いと思う。
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レンタル・ブックが増大中

2009年11月15日 | 著作権
雑誌『出版ニュース』の11月中旬号に、出版物貸与権管理センター専務理事の酒井仁志氏が、レンタル・ブックの現状について書いている。
また言うのは気が引けるが、「著作権法を改正してレンタル・ブックを始めよ」と日本で最初に提唱したのは、実は私なのだ。横浜市中央図書館の担当部長をしていた、平成15年10月のことだ。
当時、本が売れない原因は、漫画喫茶、新古書店、そして図書館の3悪人だとの愚説が広がっていた。
だが、この三つは、よく考えるとすべて本を買わずに借りて読むことである。いくら文句を言ったところで、本や雑誌を借りて読みたいというニーズがあるのは事実であり、要はそれにどう対応するか、なのだ。
そこで、「本を借りて読むことを事業化すれば、問題は解決する」と提唱したのである。そして、著作権法が当時は、本と雑誌には貸与権が働かなくなっていたのを改正し、本と雑誌にも貸与権を適用し、レンタル・ブックがきちんと法制化されたのだ。貸与権は、元々レコードのレンタルから始まったので、法が出来る前から長い歴史があった貸し本業に配慮して、本と雑誌には適用しなかったのである。

そして、徐々にレンタル・ブックは拡大している。大手では、ゲオがコミックでやっている。
酒井氏の報告では、全国では1,611店あるとのこと。本の種類はコミックが多いとのこと。実際、コミックは友人間での「読みまわし」が普通に行われていることから見ても、コミックはレンタルに最も適したジャンルである。
その結果、20年度は、使用料から出版社を通じて著作者に9億9千万円を支払ったそうだ。
これは、今後の出版界の新しい方向性として大いに注目すべきことだと思う。
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拡大するコミック・レンタル

2009年07月02日 | 著作権
図書館問題に関して、コミック・レンタルがゲオで始まっていると書いた。
だが、ツタヤでも始まったそうだ。
いずれ、さらに拡大し、コミック・レンタルが普通になるに違いない。
なぜなら、それが一番良く、自然な道であるからだ。

長い目で見れば、いろいろ紆余曲折はあるだろうが、結局は一番良い方法に至ることになる。
それが、世の中というものである。
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佐野真一 「売れ筋本ばかりの図書館はいらない」

2009年06月29日 | 著作権
6月20日、土曜日の朝日新聞朝刊の「オピニオン・異議あり」に、作家佐野真一が,近年の図書館の変化についての記者の質問に答えていた。

感想を言えば、「この人はずいぶんと遅れているな」である。
彼が言うことは簡単で、図書館が売れ筋本ばかりを買い、貸しているのはよろしくない、図書館にはもっと別のやることがあるだろう、とのご意見である。

では、なぜ市民は、図書館でべストセラー本を予約し、借りるのだろうか。
答えは、簡単。
図書館以外、本を貸してくれる所がないからだ。

かつて日本には、昭和30年代まで、全国に約2万軒の貸本屋があった。だが、現在は多分全国でも300店くらいである。
減少した原因はさまざまだが、ともかく減った。

第一、利用者が図書館で本を借りる理由は、無料、節約のためではない。本を買っても家に置く場所がないからである。
買っても、いずれ邪魔になり捨ててしまう。それなら、買うのではなく図書館で借りた方がエコロジーからも良いとなる。
あるいは、どうせなら捨てるなら、ブック・オフに持って行くとなる。
ブックオフは、現在消滅してしまった貸本屋の代替でもある。

さて、貸本屋が減少した理由に、実は著作権法の規定があった。
同法には、著作物を貸与したときの著作権者の権利、「貸与権」があるが、ここに本と雑誌は2006年まで除外規定であり、適用が猶予されていた。
理由は、「貸与権」は、もともと昭和50年代の「貸レコード屋」対策の特別措置法からスピン・アウトしてできたもので、すでに江戸時代からあった貸本屋には適用するのはまずいとのことで、猶予になっていたのである。
つまり、本と雑誌については、一種の「無権利状態」で、極端に言えば、新規に貸本屋を始め、有料で利益をあげても著作者に一銭も払う必要がなかったのだ。

「これは、本当は問題だ」と日本で最初に指摘したのは、実は私である。
雑誌『出版ニュース』の2002年11月下旬号の論文『貸与権を整備してレンタル・ブックを』だった。
趣旨は、「貸与権を本と雑誌にも適用するようにし、正式に貸本も貸与料を取るようにして、レンタル・ブックを盛んにし、公共図書館との棲み分けをせよ」というものだった。
この私の提言を受け、文化庁が権利者団体等と調整し、著作権法を改正し、2006年から本と雑誌にも貸与料を課せるようになったのだ。

まだ、まだ多く普及していないようだが、横浜にもレンタル・コミックをやっている店が弘明寺にある。また、大手のゲオも一部の店舗で始めたようだ。
図書館が無償で売れ筋本を貸すのが問題ならば、民間企業が有料レンタルでベストセラー本等を貸すようになれば、この問題は自然に解決するだろう。
その証拠に、ほとんどの公共図書館では、本の他、今日ではCD、DVD、ビデオ等もただで貸しているが、それが問題にされたことはない。
なぜなら、この分野にはレンタル店があり、無償の公共と有料の民間がすみ分けているからである。本や雑誌もそのようになれば良いだけのことである。

そうじゃありませんか、佐野先生。
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図書館の指定管理者制度導入

2009年06月01日 | 著作権
今日の朝日新聞一面トップに、図書館で進む指定管理者制度のことが出ていた。
全国の図書館の1/6がすでに民間委託されているというのだ。
また、ICタグの利用も進行しているとのこと。
勿論、指定管理者制度にも問題はある。
だが、基本的には良いことだと私は思う。
所謂図書館業務の中の貸出業務、カウンター業務等は、民間委託になじむ部門だと思う。
横浜でも、青葉区の山内図書館では、来年度から指定管理者が導入される予定で、すでに2月市会で議案が可決され、現在は委託先の選定等の具体的作業に入っている。
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講談社等がブックオフの株を取得

2009年05月14日 | 著作権
講談社、集英社、小学館の出版大手3社と、大日本印刷が、新古書店・ブックオフの株式の28%を取得し、筆頭株主になったそうだ。

もう、忘れられているが、2005年頃、「本や雑誌が売れない原因は、新古書店と公共図書館だ」として、マスコミを上げての大騒ぎになったことがある。
特に、朝日新聞と文芸春秋が大騒ぎした。
林望は、文芸春秋に『図書館は無料貸本屋か』と書き、楡周平も『図書館栄えて物書き滅ぶ』を書いた。「本当に、こんなことを信じているのかね」と言うのが正直な感想だった。

だが、現在、本や雑誌が売れない理由を新古書店や図書館のせいにする者などいるだろうか。
本や雑誌が売れないのではなく、むしろバブル期に異常に売れすぎたのである。

本と雑誌が、新聞と並び再販制に指定されていることが本当は最大の問題であり、この問題の解決なくして、出版流通の改革もない。
ブックオフと協力する、と言うのは再販制への一種の改革とも言えないこともないかもしれない。
つまり、いずれは新刊本もブツクオフの店舗で自由に販売することになるのかもしれない。
勿論、それは市場経済から見て良いことなのだ。
たしかに、時代は急速に変化しつつあるようだ。
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オフサイト・ミィーティング

2008年08月07日 | 著作権
新橋で行われた『複写と著作権( Copy & Copyright )』のオフサイト・ミィーティングに参加した。
10人ほどで、ほとんどが民間企業の図書資料室に勤務されている方。
主催者の資生堂研究所の末広恒雄さんをはじめ、サン・メディアの松下茂さん、国立国会図書館の南亮一さんたちの熱心な調査、情報収集・提供、意見交換で出来ているサイトである。
私が知る限り、利用者の立場から著作権問題を考える、最も充実した公平なサイトだと思う。
年に2回くらいオフ・サイトをやっているが、私は久しぶりに出た。

新橋の居酒屋の3階で、いつもの気楽な雰囲気。
各自勝手に飲み、食べ、話す。
だが、様々な情報が得られてとても有益だった。

その一つに、戦前からの歴史ドキュメント映像等では、必ず資料提供が毎日新聞になっているのは、なぜか。現在は必ずしも大新聞とはされていない毎日なのは何故か。
それは、朝日新聞、読売新聞が戦争で焼けてしまったのに、毎日新聞は戦災にあわず戦前の資料が残っているためだそうだ。
確かに、毎日新聞社は、戦後もずっと有楽町西口駅前の古いビルにあった。
戦後すぐの頃、東京の大半の劇場が焼けたとき、毎日新聞社ビルとホールは数少ない焼け残った施設だったので、芝居やコンサートが行われた。
武満徹の最初の曲『二つのレント』が演奏され、音楽評論家山根銀二から「音楽以前」と酷評されたのも、毎日ホールでの演奏だった。

また、先日黒澤明の廉価版ビデオの発売差し止め事件判決があったが、これは昭和45年以前の著作権法、所謂「旧法」には、権利者として監督も入っていたので、判決としては当然とのこと。
現在は、監督は権利者ではなく、製作者のみが権利者であるが、これは二次、三次の使用を考えれば正しいことである。

二次会に行く連中と別れて戻る。
まだまだ暑い新橋の町だった。
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