指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

キューポラはすでになかった 『キューポラのある街』

2018年12月31日 | 映画

今では、北朝鮮帰還運動を肯定するのかとの批判もある『キューポラのある街』だが、本当はもっと大きな嘘があるのだ。

それは、映画が作られた1962年に、川口の町にはキューポラ-ポラと称される炉はすでに使用されていなかったことだ。

カメラマン姫田真佐久の本に書かれているが、仕方ないので作って撮影したそうだ。

          

こういうことはよくあり、それは原作が書かれた時と映画化された時代とのズレである。

1950年代末から1960年代初頭は、高度成長時代で、非常に物事が変化したので、こうしたことが起きたのである。

1960年代の比較的リアルな映画を見ると、

「もうこんなことはなかったのではないか」と感じることがある。

年々、当時は物事が大きく変化したので、どこで切り取るかで大きな差異が生まれたのである。

ただ、今見ても『キューポラのある街』は、悪くない映画だが、それは脚本が今村昌平であることも大きいと私は思う。

これは一種の貧乏話だが、きれいごとになっていないのは、今村の力だと思うのである。

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ここでも神戸港は、横浜港だった 『大冒険』

2018年12月30日 | 横浜

暇だったので、録画してあった、クレージーの1965年の東宝映画『大冒険』を見る。

             

筋は、日本で偽札が使われているのが見つかり、首相の指示で警視庁のハナ肇以下の刑事が捜査する。

植木等は週刊誌の記者、谷啓はビール会社の技術者だが発明狂で、谷の妹で植木が惚れているのが団玲子で、全員が贋金騒動に巻き込まれる。

贋札を作っているのは、金貸しの越路吹雪とその上司の中村正で、最後には彼らのボスは、生き残っていたヒットラーであることが分かる。

ほとんどどうでも良い筋書きだが、要は植木、谷、越路らが東京から逃亡して西に行く。

名古屋の後、神戸が悪の巣窟だとなり、神戸港に行き、アクションが展開される。

だが、これが横浜港なのだ。

連中が逃込む公園の入口が、レンガ積みの特徴的な丸形で

「あれっ、これは・・・」と思うと山下公園で、さらにアクションは新興ふ頭や山下ふ頭で展開されるのだ。

日活の傑作『紅の流れ星』の神戸港が横浜港であるのは有名だが、東宝でも横浜港は、神戸港の代わりだったのだ。

日活のそれは、経費節減だが、東宝のはクレージーが忙しすぎて、神戸まで行く暇がなかったからだろうと思う。

ラストの植木と団玲子の結婚式で披露されるのは、赤坂プリンスホテルの旧館と、今はない新館で、これまた貴重な映像である。

仲人は、渡辺晋と渡辺美佐夫妻であり、ナベプロ全盛時代と言うべきだろうか。

NHKBS

 

 

 

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三浦和義は分からなかった 『喧嘩太郎』

2018年12月28日 | 映画

『喧嘩太郎』は、1960年の石原裕次郎主演作品で、彼が『堂々たる人生』につづきサラリーマンを演じた映画である。

相手役は、警官の芦川いづみで、これが非常に可愛い。

            

さて、見たのは冒頭のタイトル部分で、「ここに三浦和義が出ている」と舛田利雄の本に書いてあったからだ。

当時、三浦は中学生くらいで、裕次郎の役を演じているらしいが、よくわからなかった。

裕次郎と芦川いづみの共演で、非常に面白い映画だが、昔川崎の銀星座で見たことがあるので、本篇は見ずに済ます。

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『特攻大作戦』

2018年12月26日 | 映画

1967年、ロバート・アルドリッジ監督作品。

            

リー・マービン少佐は秘密作戦の指示を受け、軍の牢屋から12人の無法者を救い出してフランスでの作戦に行く。それは、ノルマンディー上陸に先駆けて、ナチス将校らのパーティーの館に潜入して破壊することだった。

無法者、「ダァーティ・ダズン」が原題で、昔ダァーティ・ダズン・バンドと言うのがあったが、ここから取ったのだろうか。

彼らへの訓練等が長く、またロバート・ライアンの正規軍との模擬戦闘などもあり、贔屓のライアンが出し抜かれるのは残念だが面白い。

最後、フランスの豪邸での戦闘はさすがアメリカ映画なので物量は凄いが、大作戦と言うよりは、中作戦くらいだろうか。

よく考えると、これも黒澤明監督の『七人の侍』からヒントを得ているのではと思えてきた。

その性か、最後に生き残るのは『七人の侍』と同じく3人のみ。

シネフィルWOWOW

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津川雅彦追悼 『孤独の人』上映会

2018年12月25日 | 映画

今年8月に、78歳で亡くなった津川雅彦を追悼して、彼が17歳の時に出た1957年の『孤独の人』が、横浜キネマ倶楽部主催で南公会堂で上映された。

             

主演は津川だが、映画的には小林旭であり、本当の主役は現在の天皇陛下である。

陛下が学習院高等科3年の皇太子時代のことで、原作は藤島泰輔の小説で大ベストセラーを日活が西河克己監督で映画化した。

皇太子役は公募の人だが、当時のことで正面など顔はほとんど見せず、全身は遠くからのみ見せる。それでも右翼から抗議や圧力があったようだが、そうした騒動も巧みに利用し製作の兒井英生は映画化したようだ。

津川は、成金の息子で17歳にも関わらず、義理の叔母月丘夢路と付き合っているが性交はしていないようで、理由は

「ご学友だから」である。

武藤章生、柳瀬四郎、新井麗子、阿部徹、柳谷寛など、その後の日活でよく出てくる俳優も総出演。岡田真澄も銀座の喫茶店でワンカット出演。

小林旭は、初めは小さな役だったらしいが、演技が上手いことで西河にも買われ次第に大きな役になり、皇太子を銀座に連れ出す連中のボスになる。

旭の付き合っている女性として芦川いづみ、皇太子が好きらしい女性として稲垣美穂子。彼女はスターになった後、監督丹野雄二と結婚し、丹野の死後はテレビ映画製作会社の代表になっている。

さらに小林旭は、兒井に買われて「渡り鳥シリーズ」の主役として大スターになる。

上映後、高崎俊夫さんの講演があり、非常に面白かったが、「銀座のシーンは日活銀座でのロケーションだろう・・・」と言われたので、

「日活銀座が作られたのはもう少し後で、しかも画面が異常に暗いので本当の銀座ロケ撮影ではないか」と質問する。

すると、旭ファンの女性からコメントがあり、

「先週の関内ホールでの公演で、彼が銀座での隠し撮りで大変だった・・・」と言っていたとの発言があり、真偽がはっきりした。

館内には学習院卒の方が多く来ていて、繋がりの強さに驚かされた。

横浜南公会堂

 

 

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『殺すまで追え・新宿25時』 『交換日記』

2018年12月23日 | 映画

ラピュタの開館20周年特集。

『殺すまで追え・新宿25時』は、1969年の松竹作品で、監督は京都から来た長谷和夫、脚本は宮川一郎と共同。

主演は天知茂で、新宿署の刑事、同僚が自宅でピストル自殺し、妻の原知佐子も自殺を言うが、天知は自殺とは信じられず、自分で捜査をする。課長の高野真二は、なぜか捜査の打ち切りを言い、天知は辞職して独自に捜査する。

と、新宿のキャバレーやトルコ風呂を根城にしていたやくざ佐藤允らの組織が分かり、自殺した男、高野課長らも脅されて一味になっていて、さらに原知佐子も一緒にやっていたことがわかる。

松竹にしては、テンポも描写も悪くはないが、最後の結末は当たり前すぎる。

長谷や梅津明次郎らの京都から移籍した監督は、結構頑張ったと思うが、男性スターがいない松竹ではどうしようもなかっただろう。

                                       

もう1本の『交換日記』は、横浜の高校3年生の山内賢と和泉雅子が、ノートの日記を交換し合う話。和泉の家は、元町の裏通り辺りで、親父の山田禅二は大工、母親の初井言栄は自宅で総菜上げをやっている下町の店。山内の父は清水将男、母は小夜福子でインテリで裕福そうな家である。

クラスの同級生は、小沢直好と前野霜一郎で、この時期よく日活で見た子役である。前野はロマンポルノ時代にもいた俳優だが、1976年春のロッキード事件の時、児玉誉士夫邸にセスナ機で突っ込んで死ぬことになる。

監督は森永健次郎で、適当にまとめたという感じしかしないのは困ったものだが。

交換日記は、今でいえばラインでのメッセージの交換だろうか、いつでも若者は誰かと繋がっていたいものなのである。

『交換日記』という二人の曲もあったと思うが、映画ではなし。中で和泉雅子が一人で歌うシーンがあったが、どへたで驚く。

後には二人には『二人の銀座』という大ヒットがあったのだが、それまでには相当に歌を練習したのだろうか。

和泉も適当に演じているとしか見えない。彼女は浦山桐朗の『非行少女』で熱演した後なので、気が抜けていたのかもしれないが。

彼女は何でもできる女優で、逆に決定打がなく、結局は高橋英樹の『男の紋章』の相手役に終わったということだろうか。

阿佐ヶ谷ラピュタ

 

 

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『ダーティ・マリー』は、一般映画だった

2018年12月23日 | 図書館

早稲田で行われた「プレスシートから読み解く日活ロマンポルノ」で紹介された、長谷部安春監督、梢ひとみ主演の『スケバン刑事・ダーティー・マリー』は、ロマンポルノでも成人映画でもなく、一般映画だったことを初めて知った。

                            

これは、梢ひとみの主演で、私も見て面白かった記憶があるが、この日の報告では、彼女のセックス・シーンはなく、裸の露出もほとんどないアクション映画だったとのこと。

「ああ、そうだったのか」と思い、併映が『子連れドラゴン・女人拳』だったと言われ、「これも見た」と思い出した。

ノートで見ると、1975年5月に川崎名画座と言うロマンポルノ上映館で見ていた。

当時は、ドラゴン映画の大ヒットに便乗した作品が多くあり、『ドラゴン対アマゾネス』などと言う『七人の侍』にヒントを得たのではないかと思われる映画もあり、結構面白かった。

言うまでもなく、これらはイタリア製映画であることは言うまでもない。

 

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『赤穂義士』

2018年12月20日 | 映画

1954年に大映で作られた浪曲映画で、たぶんこれが最後の「浪曲映画」だろうと思う。

冒頭に4人の浪曲師の挨拶があり、口演で筋に入っていく。寿々木米若、梅中軒鶯童、富士月子、玉川勝太郎の4人。

   

話は特別なものはなく、普通の歌舞伎の忠臣蔵であるが、浅野内匠頭は黒川弥太郎、吉良上野介は瀬川路三郎、そして大石義雄はなんと進藤英太郎と異色の配役である。あえて言えば、大映の二線級の連中で作ったというところだろうか。

監督は、時代劇のベテランの荒井良平で全体としては無難なできである。

各シークエンスの始めに浪曲が流れ、そこから物語に行くが、非常にスムーズである。もともと日本の大衆芸能の中で、浪曲は極めて大きな部分を占めていたので当然なのだが。

最後は、義士たちが吉良上野介を囲んで首を取って終わり、泉岳寺に行ってエンドマーク。

これを見て驚くのは、1954年だが、2年後には日活では「太陽族映画」が出てくるにも係わらず、一方ではこうした古いタイプの映画も製作されて受けていたはずだからである。

衛星劇場

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『忠臣蔵・梅花の巻 桜花の巻』

2018年12月20日 | 映画

12月は『忠臣蔵』の季節で、CSでは沢山放映されている。以前は、地上波でも製作されていたが、最近はないようだ。

これは、1959年1月に公開された東映作品。冒頭に「発展感謝記念」の大川博社長の言葉が出る。

         

この時期、東映は、中村錦之助・東千代之介の娯楽版が大ヒットし、戦前からの大スターの片岡千恵蔵、市川右太衛門も擁して大変な勢いで、

「スタジオでは歩いているものはいなくて、全員が走っている」と言われた。

大石義雄は、もちろん片岡千恵蔵で、浅野内匠頭は錦之介、吉良上野介は進藤英太郎で、実に憎々しい。

前半は、内匠頭が吉良のいじめに会い、我慢に我慢を重ねるがついに松の廊下で刃傷に及び、切腹させられるまで。

錦之助は、もちろん歌舞伎の出なので、台詞は歌舞伎的だが、そこここで見せる笑顔や言葉尻には戦後派的な若者の姿があり、それは石原裕次郎にも通じる同時代性が感じられる。その辺が、彼の絶大な人気の所以だと思った。

ともかく多数の俳優が出ていて、新劇の加藤嘉、小沢栄太郎、山形勲らの他、大川橋蔵、里見浩太郎、原健策、月形龍之介、大河内伝次郎、大友柳太郎、大川恵子、丘さとみ、千原しのぶら東映の役者の他、木暮三千代、エノケン、香川良介、徳大寺伸、清川装司ら俳優、さらに岡譲二や立松晃などの戦前の二枚目も出ているが、多すぎてどこにいるのか分からなかった。

そして、大川橋蔵と結ばれて、吉良邸に女中として潜入し、絵図面を盗んでくるのが美空ひばりの豪華さ。

後半は、京の撞木町での大石のご乱行から始まるが、千恵蔵は、世話物的なこうした場面の演技は上手いことが分かる。

千恵蔵の息子と娘の植木も出ているのは、やはり東映重役の片岡千恵蔵のお力だろうか。

音楽は、現代音楽の深井史郎で、荘重かつテンポの良いメロディーで軽快にドラマを進める。

最後は、もちろん杉狂児と堺瞬二の蕎麦屋の二階に結集して本所松坂町に行き、吉良の首を上げる。この蕎麦屋は、元禄時代の江戸にはないものだったので嘘なのだが、まあいいだろう。

要は、江戸時代の庶民が思っていた武士の姿が凝縮されているのだ。

時代劇専門チャンネル

 

 

 

 

 

 

 

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『スカイライト』

2018年12月17日 | 演劇

小川絵梨子芸術監督の手腕については疑問があったので、どうかと思っていたが、まあ普通の出来だった。

この日は忙しくて、まず宝町に行き、「最古の忠臣蔵」の予約券を取ってから地下鉄等を乗り継いで初台に行く。

           

イギリスの劇作家デビット・ヘアーの作で、ロンドンの郊外に一人で住むキラ(蒼井優)のところに若い男エドワード(葉山蒋之)がやってきて、母親が死んだのち、父親は精神が不安定になり、怖いといって去る。

この二人は、姉・弟なのかと思う。

すると中年のトム(浅野雅博)が来て、蒼井と関係が次第に分かってくる。それは、キラはトムと不倫関係にあった間柄で、エドワードはトムの息子なのだった。

なぜ、間違えたかといえば、浅野は、何軒かのレストランを所有し、運転手付きの車に乗っている富豪なのだが、そうは見えないからだった。これは配役の誤りで、完全に演出の小川絵梨子の間違いである。

浅野は元は貧困な家の生まれだったが、飲食店事業で成功した男で、元モデルの女性と結婚したというのだ。

蒼井が今住んでいる地区は貧困らしく、彼女の父は弁護士だったが、それほど裕福ではなく、今、彼女は貧しい子供がいる公立学校で教師をしているのだ。

結局、二人は3年ぶりの逢瀬で性交するが、最後は分かれることになる。

当たり前だが、階級差であり、それはイギリスが今でも非常に強い階級社会だからである。

蒼井優はすごいが、それ以外に見るべきものはなかった。

終わると、元のように電車を乗り継ぎ、国立映画アーカイブに行き、最古の『忠臣蔵』を、弁士と楽団付きで見る。

浅野内匠頭と大石義雄を、尾上松之助が二役で演じるもので、完全に歌舞伎の作りで、背景はセットではなく、書割で中には布に書いたようなものもあった。画面は、完全な据えっぱなしで、アップも移動もなく、歌舞伎を劇場で見ている感じ。

このように日本の映画は、先行芸能である歌舞伎や浪曲、講談、漫才等を受け継いでできたものであることがよく分かった。

 

 

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『男の紋章・流転の掟』

2018年12月12日 | 映画

高橋英樹の『男の紋章』シリーズの最後の方で8作目、監督はこれが遺作になった滝澤英輔。

滝澤は、「若草山の滝澤」と言われ、「順撮り監督」で有名で、抒情的な作風で、日活では蔵原惟繕らに影響を与えていると思う。

話は、冒頭で中年男と斬りあいになり、殺害した英樹が、母轟夕起子、恋人の和泉雅子らに見送られて旅を続けるところから始まる。

可笑しいのは相手は、山内明だが、どこにもクレジットがない。ナレーターも鈴木瑞穂だが、これもノンクレジット。当時、二人は劇団民芸だったので、ヤクザ映画はご法度だったのだろうか。女優の吉行和子は、石原裕次郎主演の『あいつと私』に出演し、60年安保で、全学連の男に強姦される女性活動家を演じ、民芸から注意され、それも理由で劇団民芸を辞めたのだそうだ。

               

英樹は、旅で男を磨いているのだが、そこに子分の桂小金治と谷村昌彦が追いかけてくる。

娯楽映画で重要なのは悪役だが、井上昭文、柳瀬四郎、富田浩次郎などのベテランなのでドラマは締まるが、どこか日活のヤクザ映画は、東映に比べて違和感がある。

それは、日活の方が、撮影、照明、美術等がきれいで美しいのが皮肉にも東映に敵わなかった原因だと思えた。東映は、撮影と照明が暗く、美術もダサいので、逆にリアリティと情緒があったのである。

女優は、和泉雅子の他、太田雅子(梶芽衣子)、西尾三枝子が出ているが、太田は新人で扱いは小さく、西尾の方が英樹を慕うが、本当は山内の妹で、仇の仲と言うおいしい役を演じて上である。

この1965年は、まだそうだったのだ。

チャンネルNECO

 

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京都は大混雑だったので

2018年12月10日 | 都市

昨日は、一昨日の日本映画学会が終わった後で、何もない。

調べると国立京都近代美術館で「藤田嗣治展」をやっているので、梅田から河原町に向かう。

ところが手前の烏丸駅で、乗降客を見ると大混雑。これでは地上はもっと大変だろうと思い、そのまま阪急京都線を引き返す。

国立文楽劇場も今月は文楽の公演はないので、適当に昼食をとった後、近鉄で名古屋に行くことにする。

上本町は、新歌舞伎座で、「冬のソナタ」なので、これもパス。

                          

この近鉄の名古屋への線は4年前も通ったが、実にローカルなところに、桜井や樫原神宮などの名も出て来て非常に興味深い路線である。

また、ところどころに「こんなところから私鉄が接続しているの」という線もあり、非常に面白い。

さすがに保守的な地域らしく、高齢の爺さんが読んでいたのは、勿論産経新聞だった。

名張で乗り換え、さらに伊勢中川でもう一度乗り換え。この夜は、なばな花の里に行くとのことで、臨時で桑名駅に止まるサービス。

名古屋で土産を買い、ポンパドールでサンドイッチを買ってワインを飲んで新横浜に向かう。

ポンパドールは、横浜のパン屋だが、ここに出ているとは知らなかった。

大阪に続いて横浜も非常に寒い。

 

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『ミッドウェー』

2018年12月06日 | 映画

1976年に作られた戦争映画。以前、NHKが放映したのを見たので、二度目だが結構きちんと描かれている。

監督は、『エアーポート75』などの大型映画の多いジャック・スマイト。

山本五十六は三船敏郎だが、彼一人がハリウッドに行って撮影したようで、他は日系俳優の総集合。

                   

タイトルは、ドーリットル空襲で、驚いて広島にいた三船が上京するが、そこは先日の「力道山映画」にも出てきたサンフランシスコの日本庭園らしい。

そしてミッドウェー海戦になるが、日本側とアメリカ側を交互に描いていく。

これを見ると、日本はアメリカの物量に負けたというのが大嘘であることが良く分かる。

空母等の艦船では日本の方がアメリカ側を遥かに上回っていたのだから。

なぜ、日本が大敗北したかは、やはり「情報」で、ここでも索敵の失敗で敵の位置を知らなかったことが敗北の大きな原因になる。

よく知られているが、太平洋戦争が始まると、日本は英語教育を止めさせるなどして敵性用語、文化の使用を禁じ、カタカナの名前も変更させた。デック・ミネは三根耕一に、野球のストライクも「よし1本」になどにさせて、カタカナを禁止した。古川ロッパも変更を言われたが、「もとが録波だ」としてロッパで通した。

しかし、逆にアメリカは日本語をはじめ日本語と文化研究を促進させたのである。

この日本語教育から出たのがドナルド・キーンやサインディー・ステイッカーなどで、彼らは戦後は日本文学研究者となるが、太平洋の島に派遣され日本軍兵士の手帖の記事の判読をやらされた。

手帖には、日本軍の装備、状況、計画等が克明に書かれていたので、米軍は対応方法の参考にした。

要は、孫氏の兵法、敵を知るのをきちんとやっていたのは日本ではなく米軍の方だったのだ。

ここでの戦闘の詳細は詳しい方が多いだろうから書かないが、魚雷と爆弾の兵装転換と時間の空費は本当に愚行だつたと思う。勿論、結果論に過ぎないが、米軍機の襲来が迫ってきたとき、なんでもよいからすぐに航空機を発進させて反撃した方が有効性はともかく、米軍艦船にそれなりの被害を与えられたのではないかと戦争の素人としては思う。

そして、一番に驚くのは、このミッドウェー海戦の大敗北を、日本では国民はおろか東條英樹首相も詳細を知らず、天皇から上奏時に初めて知ったことである。

つまり、統帥と軍政がきちんと分離していたからで、本当に驚いてしまう。米軍では、この映画でも、開戦の直前に国務省がハワイに来て作戦を調査し、軍事を政治がチェックしている。

この日本軍の官僚的硬直性と秘密主義は日本の敗北の主原因の一つだったと思う。

これの犠牲は日本軍兵士で、本当にひどいことだと思う。

 

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『力道山の世界征服』

2018年12月04日 | 映画

1956年の日活映画。

         

 力道山は当時大変な人気で、日活では何本も製作公開されている。3月に力道山が世界の旅に出る壮行会が日活ホテルで行われる。

堀社長の他、芦川いづみ、北原三枝など。羽田からインド航空機でシンガポールに行き、ここではキングコングと闘う。

その後、ベイルート、ジュネーブに行くが、試合はなし。パリに行くとレスリングの試合に出るが挨拶のみ。

ゲームの印象が語られ、「単純で技がない」と批評されるが、確かにキックとパンチのみの単純なゲーム。日本は、やはり相撲があったので投げ技、さらに柔道の締め技などがあったことの意味があったことが分かる。

ロンドンも市内観光のみで、試合はなく、アメリカに飛びニューヨークに着くがこれも観光だけ。

もちろん、力道山は優れたプロモーターであり、各地で対戦相手を探していたのだと思うが。

ここから車で西海岸に行き、サンフランシスコで、遠藤と共にタッグを組み、シャープ兄弟とのゲーム、もちろん勝つ。

ストッくトンでは、遠藤、エンリキ・トーレスと組み、相手はグレート東郷、ハロルド坂田、オルテガとの3人タッグ。

ハロルドは、映画の007にも出た。東郷は、その後来日して悪役を演じて有名になる。

ロサンゼルスで、シャープ兄弟に対してエンリキ・トーレスと組んで戦う。そして、ルー・テーズと再選の契約をする。

ただ、不思議なのは全体のナレーションは高橋博だが、試合のは志村正準で、これは実際の試合のフィルムはニュースで随時紹介されていて、それは志村だったためだと思う。

全体として、どこでも力道山は、子供好きの優しいオジサンを演じているのが凄い。

実際は、酒乱で暴力的な男だったのだが、表で見せる顔はいつも優しさを演じていた。

これは彼が戦前に朝鮮半島から来て、善良な日本人を演じていたことで育まれたものだったのだろうか。

「世界征服」とは羊頭狗肉だが、世界旅行だけで意味のあった時代で、今のテレビの旅番組のようなものであると言える。

衛星劇場

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『結婚作戦』

2018年12月01日 | 映画

日本映画には、女中映画というジャンルがあった。製作再開した日活でのヒット作、左幸子主演の『女中っ子』は良い映画だった。

その他、谷崎潤一郎の『台所太平記』も、次ぐ次とやってくる谷崎家の女中の話だった。ただ、女中と言う言葉が、禁止用語になったので、西河克己が森昌子主演で『女中っ子』リメイクした時には、『どんぐりっ子』になった。ここでは脇役になっているが、もともと若水ヤエ子の主演で日活には「おヤエの女中シリーズ」があり、7本も作られている。小沢昭一によれば、女中は「お女中」と言うように、本来は尊称であり、差別用語ではなかったのだが、時代の推移と言うものだろう。

一時代前には、テレビで市原悦子の「家政婦は見たシリーズ」があったが、これも広い目で見れば「女中映画」の変種と言うべきだろうか。

 

1963年の笹森礼子主演の映画は、東京の郊外の電子部品メーカーの社長宅(大滝秀治、三崎千恵子夫妻)に住み込んでいる女中の話で、長女は松尾嘉代、長男は杉山元などの一家。笹森は、素直な女性で、孤児の設定。

笹森は、テレビの『日真名氏飛び出す』のCM兼ドラックストア・ガールで出ていた女優で、目が大きいせいか浅丘ルリ子に似たルックスで、日活に入り、赤木圭一郎などの作品に出た。赤木の遺作、牛原陽一監督の『紅の拳銃』は良い作品だったと思う。

町には、魚屋、八百屋、肉屋等があり、それぞれに小僧や女中がいる。当時の日本の人件費が安かったことがよくわかる。経済の高度成長期の直前なので、人件費はまだ高騰していなかったのだ。

松尾嘉代は、会社の同僚山田吾一が好きだが両親には言えず、上流階級の若者の見合いパーティーに行かされるが嫌なので、笹森に代わって行ってもらう。会場は、横浜港の氷川丸で、この頃はホテルや宴会業をやっていた。

                   

そこに女中仲間の若水ヤエ子と久里千春が飛び込んできて、笹森に一目惚れした藤村有弘とドタバタになる。

本当は藤村は大会社の社長で、松尾の代わりの笹森に求婚する間違えの喜劇が最大の見せ場になるが、実に能天気。

1963年と言えば、ピンク映画の草創期で、セックス映像が氾濫していたのだが、そんな気配はまるでなし。

笹森は、肉屋の御用聞き、実は息子の沢本忠雄と、松尾嘉代は山田吾一と結ばれることが示唆されてめでたしめでたし。

監督の吉村廉は、戦前からの日活で、なんでも撮る器用な監督だったが、こういう平穏な作品はすぐにお呼びでなくなる。

じきに日本映画界は、ピンク映画の性と東映のヤクザ映画の暴力で占められるのである。

チャンネルNECO

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