1954年の新東宝配給作品、脚本は新藤兼人、監督は吉村公三郎、銀行の店の実態を描くもので、銀行の組合の金でできた作品。
実話からとられていると思われるので、意外にも面白い。
吉村と新藤は、誇張が強く、こんなことがあるかと思われることもあるが、ここでは比較的淡々と進行する。
主人公は言うまでもなく乙羽信子で、帝都銀行京橋支店の従業員、父の御橋公も銀行員で、この親子は非常にまじめで融通が利かない人である。
乙羽は、毎日8時過ぎには出てきて、掃除をしたりするので、日高澄江、中原早苗、岸旗江らの女性からは、嫌味に見られている。
中には、会社重役の娘木村三津子もいて、なんのために勤務しているのか不明。
男性には、金子信夫、原保美、信欣三、芦田伸介らがいて、次長は神田隆、支店長は誰かよくわからなかったが、非常に偉くて、店に来て席に着く時は、芦田が立って背広を脱がせてあげる。
本当かねと言いたくなる場面もあるが、女性の家庭をきちんと描いているのは、さすがに吉村。
吉村の説では、「映画で重要なのは風俗を描くこと」だそうで、日高の家は居酒屋であり、金子が下宿しているのは雑貨屋で、おばさんは戸田春子。
金子は意外にも正義派の組合幹部で、驚く、後年の山守組長ではないのだ。
夜、組合の集会で議論されているのは夏の旅行で、箱根に一泊で行くことになる。
日高は、朝のお茶くみのことの議論を提案するが、却下。
一応、女子職員が交代ですることになっているが、なぜ女子のみかと女性は思っている。
旅行が凄いもので、バスで行き、温泉に入った後、宴会となるが、芸者が来る。
さらに傑作は、支店長の代わりに妻がくることで、清川玉枝と言うのが良い。
乙羽は、泊まらずに帰ることにし、金子も一緒に電車でかえる。
金子と乙羽は、憎からず、そう強くはなく、木村の方が強く惹かれている。
乙羽が帰ったのは、父が病気だからで、原因は貸し倒れ先の殿山泰司の工場に処分に行った時、殿山に暴行されたからなのだ。
最後、父親は自費で熱海の療養所に入院し、その費用が問題になるが、公務災害ではないのか。
ある日、急遽オートレース場の売上金の業務が入り、信欣三の下、女子職員が動員されてレース場で現金の処理を行う。
実際にロケされていて、場所は川口か船橋のように見え、大井オートではないようだ。
集計すると10万円不足していて、支店に戻ると、女子が全員取り調べを受け、ついには刑事が呼ばれる。
乙羽は、父の入院の金10万円を、乙羽に恋している自動車会社の社員の内藤武敏から借りていて、職場に電話してもらうが、内藤は社の金を使いこんでいて、彼は恥じて貸していないと言う。
女子職員は、そのまま当直室に泊まらされ、翌日になる。
レース場から電話が入り、中にあったとの知らせが入る。
最後、金子信夫は、静岡の視点に左遷されるが、乙羽は木村にいう。駅に見送りに行って来なさいと。
そして、刑に服する内藤に、乙羽は「出てくるまで待っているわ」と言って終わり。
ここでも、マージャンは仕事の一環となっているが、1970年代まで、日本の企業は同じだったのだろうか。
要は、村社会だったと言うことだろう。
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