指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

『座頭市の世界』

2007年07月31日 | 映画
勝新太郎の座頭市の魅力を田中徳三、井上昭、森田富士郎ら旧大映京都のスタッフの証言で描くもの。
勝の弟子であったと言う、二人の役者勝村淳と橋本力の証言もきわめて興味深い。
その橋本氏は大魔神役者で、ブルース・リーの『ドラゴン怒りの鉄拳』に、勝へのドラゴン映画への出演を前提に出演したらしい。
これは、言うまでもなくジミー・ウォング出演の座頭市『破れ唐人剣』との関係から生まれたものだである。
この辺も、勝の目の付け所はすごい。
最後は、テレビでの自由奔放な制作方法が語られる。
彼の演出は、ゴダール風の即興演出と言われるが、実は歌舞伎の六代目菊五郎のリアリズムなのである。

「弱肉強食」社会

2007年07月30日 | 政治
参議院議員通常選挙の結果を見て分かるのは、日本も完全にアメリカのような「弱肉強食」の社会になりつつある、と言うことだ。

今回の選挙については、事前に自公敗北、民主勝利の予測が伝えられていた。
だが、こういう予測が出ると、従来は国民の「判官びいき」的動きがあり、予想と反対の結果になると言われてきた。惻隠の情と言う奴である。

しかし、今回は、むしろ「勝ち組に乗れ」との弱肉強食的結果になった。
これは、言うまでもなく小泉純一郎前首相が行ってきた「構造改革」の結果である。
言わば、自業自得的結果なので、自公はこの結果を甘受しなくてはならない。

だが、実に嫌な社会になったものである。

『カリートの道』

2007年07月29日 | 映画
ニューヨークのギャング・カリート(アル・パシーノ)が裁判で、懲役30年だったのが、違法捜査等から5年で刑務所から釈放されたところから回想が始まる。
プロローグは、射殺されたカリートの目から見た映像で、そこには南国の島の広告がある。
彼は、ギャング稼業から足を洗い、バハマでレンタカーをやりたいと思っている。
裏世界の非情な緊張、確執、裏切り等が、監督ブライアアン・デ・パルマの切れ味の良い映像で描かれる。
プエルトリコ出身なので、音楽はサルサ。
大人の暗黒世界の話にぴったりの音楽である。

最後、マイアミからバハマに逃げようとするカリートと、イタリア系マフィアのグランドセントラル・ステーションでの追っかけがすごい。
エスカレーターで撃ち合いになり、エスカレーターに逆さで落ちるマフィアの姿は、わが日本の増村保造監督、三島由紀夫主演の『空っ風野郎』のラストシーンだが、まさか増村作品を見たわけではあるまい。
最後、恋人の待つ列車の入口に着いたカリートは、手下の裏切りでイタリア系のチンピラに銃殺されてしまう。

ギャング世界もすごいが、いつもピストルを持っていて、脱獄したマフィア親子を殺してしまう弁護士ショーン・ペンもすごい。
検事との司法取引、盗聴、スパイとし、カリートから証拠を取るための犯罪者の釈放など、アメリカの検察、弁護士の世界もすごい。
日本でも最近、元公安調査庁長官や弁護士会長が容疑者になっているが、アメリカの悪徳とは到底比較できないだろう。

パンツ・スタイル全盛

2007年07月29日 | 都市
今や、ジーパン、ジーンズ、スラックス、その他女性のパンツ・スタイルが全盛のようだ。
最近では、むしろたまにスカート姿の女性を見ると、はっとしたりする。
いつから、こんなに女性のパンツ・スタイルは一般的になったのだろうか。
1980年代、歌手中森明菜がやや不良少女風のジーパン・スタイルを流行らせたあたりが起点だったのではないか。
1991年に、富士山の麓にあった英語研修施設に3ヶ月間入れられたことがある。
そのとき、台湾の青年たちが、そこにきた。
その中で、20代の女性の格好が、ほとんど中森明菜的ヘアー・スタイル、セーターに明菜的不良ジーパンなのであった。
台湾でも中森明菜の人気はすごかったらしい。

さて、今から約40年前、私が大学の劇団に入ると1年上に恵子さんという女性がいた。
ルックスも、クラウディア・カルディナーレを思わせ、また大柄でスタイルもかなり肉感的だった。
芝居の公演の日が近づくと我々は、昼休み身体訓連や発生練習を集まってやった。

ある日の午後、恵子さんは身体訓練のためジーパンに着替えて、21号館の屋上で訓練をやり、時間がなかったので、そのままの姿で午後のフランス語の授業に出た。
すると、男のすべての視線が彼女のお尻のラインに集まってしまい、授業の集中が多いに妨げられたそうだ。

授業終了後、彼女は「この次からはスカートで出て来るように」教授から言い渡されたそうだ。

40年前は、そのくらい女性がヒップ・ラインを男の目にさらすのは稀なことであり、はしたないとされていたのである。

今のパンツ・スタイルの全盛は、日本人が全員性的発狂に陥ったのだろうか。
いや、そんなことはない。
これもある種の解放であり、人間性の回復なのだ。

パンツ・スタイル万歳。

ブラジル生まれの日系二世のイレーネ・松田先生によれば、ブラジルで男性が女性を見る、あるいは女性が男性に見せたいのは、女性のお尻の大きさ、形の良さだそうだ。
日本も次第にブラジルに近づきつつあるのだろうか。これは大変喜いことだ。

振り逃げ事件

2007年07月29日 | 野球
高校野球神奈川大会の準決勝、横浜高校対東海大相模の試合で、「振り逃げ」事件があったそうだ。
その結果、横浜高校は東海大に負けた。

詳細は、見ていなかったので不明だが、要は三振と勘違いした捕手が審判と話している間に、打者・走者のすべてが進塁・生還し、得点してしまったらしい。

これは、昔パ・リーグの東映対大毎戦で起きた山内一弘の「振り逃げ」事件にそっくりである。このときは、なんとリードを逆転されて、サヨナラ負けになったそうだ。
この時の捕手は、ケンカ八郎で有名だった山本八郎だと思っていたら、当時の正捕手安藤順三だった。
安藤のような比較的冷静だった捕手が、こんな事件を起こしたのか、不思議だが。

スポーツではない相撲

2007年07月27日 | 相撲
横綱朝青龍が、大相撲巡業には同道せず、モンゴルでサッカーに興じていたことが大問題となり、横綱の品格の問題とされている。
本来ならば、大した問題ではないように思えるが、ここで言われるのが相撲は国技であり、精神が問題なのだということである。
精神論は嫌いだが、相撲は実は演劇なのである。
これは、私が言っているのではない。
かの碩学、折口信夫が著書で書いていることである。

相撲は劇であり、儀式なのだから、やはりそこには品格が必要なのだ。
その意味では、「美しい国・日本」のまさに国技なのだ。

『二十歳の恋』

2007年07月27日 | 映画
トリフォー監督作品だが、本当はオムニバス映画で、ドイツ、フランス、ポーランド、イタリアそして日本の監督による合作作品。

トリフォーのこの編は、内気な青年の主人公ジャン・ピェール・レオが、マリー・フランス・ピジェに失恋する話。
特にどうということもないが、レオの勤務先がレコード工場で、LP制作の手仕事的手順が紹介されるのが面白い。
フランスをはじめ欧州の工業製品は意外にも手仕事的方法で作られているのだ。

この『二十歳の恋』の日本編の監督は、なんと石原慎太郎東京都知事であり、題材は東京小松川の女子高校生殺人事件だったが、作品自体は余り評判は良くなかった。
小松川事件は、当時日本の社会に大きな衝撃を与えた事件で、大島渚も映画『絞首刑』で描いている他、大江健三郎も小説にしているはずだ。
さらに、ポーランド編は、アンジェイ・ワイダの監督で、『灰とダイヤモンド』の主人公マチェックのチブルスキーが、戦後の若い世代に違和感を持つと言う話で、なかなか秀作だったと思う。
是非、全部をまた見てみたい。

『遠い国からきた男』

2007年07月26日 | テレビ
山田太一脚本の新作テレビ・ドラマ。
主演は、仲代達矢、杉浦直樹、そして栗原小巻である。
仲代は商社マンだったが、中米の独裁国家に派遣され、そこで反政府派にかかわってしまい、長期に投獄され会社も首になってしまい、その国に永住してしまう。
46年ぶりに母親の墓参りをした後、昔の恋人栗原とその夫で、昔の同僚杉浦直樹と再会する。
この、3人、さらに旅行会社添乗員高野志穂の漫才のようなやり取りでドラマは進み、芝居は良くできている。3人の芝居が、さすがに上手い。
だが、杉浦と栗原の夫婦が、互いに「じいじ」「ばあば」と呼び合っているのは、年を考えれば当然だが、とても残酷である。

だが、彼らが戻る先の共通の記憶である音楽が、「歌声」というのはいただけない。
1960年代を舞台としているから、仕方ないが、私は大嫌いである。
1950年代末から60年代にかけ、日本共産党を中心の「歌声運動」は、日本の文化運動に大きな影響を与えた。
私が大学に入学したときも、民青の連中が花笠を持って民謡を歌い、踊っていた。
どうして、ああいう恥ずかしいことができるのか、不思議でならなかった。

最後、3人は今は懐かしい、またやってるらしい「歌声喫茶」に行く。
そのシーンのいやらしさ。
俗に「三つ子の魂百まで」と言うが、10代で嫌いになった、歌声・民青は今でも大嫌いである。

高野志穂の若さが眩しい。

グナワはすごい

2007年07月25日 | 音楽
渋谷の原田さんの店「エル・スール」で買ってきた『グナワ10周年』を聞く。
グナワとは、モロッコを中心としたマグレブの音楽で、土俗的な楽器を使いハードな音楽を展開する。
砂漠のブルースとか、フージョンとも言われているが、確かに他に類例をみない音楽である。
近年、注目されているとのことだが、当然だろう。
1986年にザイコ・ランガ・ランガが来た時、前座でジル・ジララというギター・バンドがやって、余り評判は良くなくて、私は結構面白かったが、あれは今考えればグナワだったと思う。

渡辺美佐を演じた4人目の女優

2007年07月23日 | 音楽
渡辺プロダクションを夫の渡辺晋と共に作り発展させたのは、言うまでもなく渡辺美佐だが、日本映画界では2人の女優が演じてきた。

最初は、余りにも有名な石原裕次郎主演、北原美枝共演の井上梅次監督の大ヒット作品日活映画『嵐を呼ぶ男』での、ドラマーの裕次郎らの所属するジャズ・バンドのマネージャー北原である。
二人目は、余り有名ではないが、篠田正浩の監督デビュー作で、なんと山田洋次がチーフ助監督だった『恋の片道切符』での、芸能プロ社長の鳳八千代である。
彼女を渡辺美佐をヒントに造形したことは、篠田が明言している。
この、映画は、ジャズからロックへの音楽の移行を、ジャズ・サックス奏者小坂一也からロカビリー歌手平尾昌明に乗り換える牧紀子を通して描いている。
青春悲劇としては、なかなか面白い作品である。

そして、先日フジテレビの『ザ・ヒットパレード』で、多分21世紀最大の大根役者の常盤貴子が演じたらしい。
そして、今回舞台での戸田恵子である。
だから、彼女は4人目の渡辺美佐なのである。

琴光喜は前非の反省を

2007年07月22日 | 相撲
琴光喜が希勢の里に負け、白鳳も朝青龍に負けて優勝は、朝青龍になった。

今まで、さんざ自分が優勝候補を破り、その代わりに朝青龍にはいつも負けていて、朝青龍を優勝させていたのだから、今日は栃東や白鳳、魁鵬らの悔しさがよく分かったに違いない。
今回、優勝できなかったのは今までの罪から考えれば当然である。
この次は、自力で優勝すべきである。

ざまあ見やがれ。

『ハーベイ・ミルク』

2007年07月22日 | 政治
ツタヤに行くと、こんなドキュメンタリーがあったので、すぐに借りて来て見る。
ハーベイ・ミルクはサンフランシスコのカメラ屋だったが、同時にゲイ運動家で、市のスーパーバイザー(ここでは執行委員と訳されているが、明治時代には日本の市にもあった市参事会委員だろう)になる。今の日本で言えば、市議会議員と副市長の中間の存在で、多分10人くらいで、公選されて市長を補佐し、いくつかの部局を担当する。国の議員内閣制に似た制度である。

ハーベイは、執行委員会委員選挙に2回出て落選したが、進歩的なモスコーニー市長が、選挙区を全市ではなく各地域毎に変更したことで見事に当選し、市政に参画する。

そして、カルフォルニア州の保守派上院議員によって、公立学校からゲイ・レスビアン教師を追放できる「プロポジション6号」を住民投票で否決することに大きな力を発揮する。
すると、同じ執行委員の元消防士で白人のダン・ホワイトが急に辞職する。
だが、彼はすぐに撤回し再度就任しようとする。
その談判に行った市庁舎で、モスコーニー市長から再任を拒否されると市長を銃殺し、さらにミルクも射殺してしまう。
彼は逮捕され、裁判にかけられるが、白人多数の陪審員によって「計画的な故意殺人ではない」として微罪になり、1980年代には刑を終え出獄してしまう。

映画では出てこないが、その後サンフランシスコ市は、新設のコンベンション・センターをモスコーニー市長の名を取って、モスコーニー・センターとする。
さらに、ニューヨークでは、1990年代には「性同一性障害者」を受け入れる高校として、ハーベイ高校ができたそうだ。
誠にアメリカは不思議な国である。

昭和史の一日

2007年07月22日 | その他
7月15日は、母の命日で、本当は先週の土曜日に実家に子供たちが集まる予定だったが、台風で行けなかったので、昨日池上の実家に行き、仏壇に線香を上げた後、兄夫婦と話す。
兄は68歳になったが、二度目の再就職先でも元気に働いているようだ。
池上駅前で、ラーメンを食べた後、東急線を乗り継いで渋谷に出る。

原田尊志さんのレコード店「エル・スール」に行き、注文しておいたファイルーツの『愛しのベイルート』を受け取る。勿論、20前から持っていたが、カセットがいかれてしまい、新たにCDを買うことにした。
ついでに、「グナワ10周年」と「アフリカ映画音楽」も買う。

シネマ・ラセットに行き、『特攻』を見る。
わずか50人の部屋だが、満員で立見も出ている。
監督は日系二世の女性のリサ・モリモト。
彼女は、死んだ叔父が特攻隊だったと知り、日米の生存者をインタビューする。
特に目新しいものはないが、爆撃機で出撃しコルセア戦闘機と遭遇し、戦闘の末、「もう帰ろうか」と同乗者と言い合い、戻ってきた人の話は笑わせる。

特攻隊と言えば鶴田浩二で、昔日劇で鶴田浩二ショーを見たら、最後は勿論『同期の桜』で、天井から糸で吊った無数の戦闘機が降り来る中の絶唱だった。
鶴田が特攻隊ではなく、整備兵だったのは今や周知の事実だが、何度も特攻隊を演じている内に、自分も特攻隊だと信じ込んでしまったと言うが、実に可愛いいではないか。

地下鉄で京橋に行き、ミュージカル『ザ・ヒットパレード』を見る。
言うまでもなく、渡辺プロダクションを作った渡辺晋・美佐夫婦の成功物語で、チョーチン芝居だが、一応面白かった。
戦後、ジャズを始めた渡辺晋は、学生バンドのマネージャーをやっていた美佐と一緒になり、渡辺プロダクションを作る。
ジャズ・ブームは去ったが、ロカビリー・ブーム、テレビの台頭で会社は大成功する。
細かく言えば、テレビの『ザ・ヒットパレード』は、1960年代初頭の言わば、カバー・ポップスの時代の象徴であり、その「混合文化」としての意義が十分に表現されていない。
さらに、ヒット曲として、小柳ルミ子からアグネス・チャンまで歌うのは、いくらなんでも時代が違うだろう。
戸田恵子は、渡辺美佐を演じた3人目の女性だが、それについてはまた書く。

戦中、戦後、そして母親の死と、昭和史、戦後史を歩いた一日だった。

やはり中日が優勝か

2007年07月21日 | 野球
オールスター戦は、セ・リーグがホームラン攻勢で勝った。
だが、落合監督の投手1イニングづつの交代には驚いた。
落合の発想はすごい。
この落合の発想の意外さから考えて、後半戦も中日にセ・リーグの他の球団は勝てない気がする。
落合は、あまり好きではないが、やはりすごさは認めざるを得ない。
ダルビッシュと藤川はさすがの投球だった。

お邪魔虫は早く引退を

2007年07月19日 | 相撲
琴光喜が、朝青龍に負けて1敗になった。
こいつは、白鳳や、かつては栃東には勝って優勝を妨害するくせに、朝青龍には絶対に勝てず、彼の優勝を何度も助けてきた。
大関などとんでもない、早く引退することが大相撲のためである。
本当に冗談じゃない野郎だ。
魁鳳、千代大海も同様で、早く引退した方が良いと思う。