指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

Sさんのこと

2022年04月13日 | 横浜

横浜市に40年にいて、いろんな人とあったが、Sさんも印象に残る人だった。

 

                                                     

ある局で、係長をやっている時、局の庶務課係長で、その局を背負って立っているように毎日忙しく動いていた。

相当にうるさい人で、なんでも口を挟んで来たが、根は悪くないので、みな付いていたようだった。

ただ、気分屋で、その時々で言うことが違うので、困ることがあった。

あるとき、少しやばいかなと思える起案があり、それが無事通ったと言うので、総務課に見に行き、趣旨を話すと予想通りまったく理解していないで判を押しているのだった。

「指田さん、こんなのだめだよ・・・」と印の上から鉛筆でバツを付けられてしまった。

どのように通してもらったが忘れたが、たぶん庶務課長と私は仲が良かったので、課長に話し、課長から言ってもらったのだと思う。

結局、そう悪い人ではなかったと今では思っている。

60歳で定年後、比較的すぐに亡くなられたと聞いている。

今も、憶えている人の一人である。

 

 


『心』

2022年04月13日 | 映画

言うまでもなく、夏目漱石の小説の映画化で、1973年2度目である。

監督の新藤兼人は、苦手で、そのドラマ作りが暑苦しくて気が抜けないからである。

彼は、やはり師の溝口健愛愛の作風に似ているといえるのだろうか。

これは、公開時に日劇文化で見たと思っていたが、ノートに記録がない。

特に感想がなかったからだと思うが、20年後にシネマジャックで見ている。 

 

                                                 

このときも感じたが、主人公松橋登が惚れる下宿の娘杏梨の母親の乙羽信子の美しさである。

昔の日本の女性の着物姿は、実に美しいなと思う。

なんとなく、ずるいなとも思う。この映画は、乙羽さんの賛美なのか。

杏梨は、この映画の他出ていないが、当時はモデルで有名だったと思うが、乙羽さんの比ではない。

松橋登に出し抜かれて自殺してしまう友人が辻萬長で、いかついかんじだが、よく見ると良い顔である。

よく知られているように、これは、明治天皇が崩御したとき、乃木希典が殉死したことに衝撃を受けて漱石は書いた。

殉死というような、封建的精神ではなく、自己中心主義がこれからは正しいと言うか、そこで悩むと言っているのだろうか。

その辺はよく分らない。