言うまでもなく、夏目漱石の小説の映画化で、1973年2度目である。
監督の新藤兼人は、苦手で、そのドラマ作りが暑苦しくて気が抜けないからである。
彼は、やはり師の溝口健愛愛の作風に似ているといえるのだろうか。
これは、公開時に日劇文化で見たと思っていたが、ノートに記録がない。
特に感想がなかったからだと思うが、20年後にシネマジャックで見ている。
このときも感じたが、主人公松橋登が惚れる下宿の娘杏梨の母親の乙羽信子の美しさである。
昔の日本の女性の着物姿は、実に美しいなと思う。
なんとなく、ずるいなとも思う。この映画は、乙羽さんの賛美なのか。
杏梨は、この映画の他出ていないが、当時はモデルで有名だったと思うが、乙羽さんの比ではない。
松橋登に出し抜かれて自殺してしまう友人が辻萬長で、いかついかんじだが、よく見ると良い顔である。
よく知られているように、これは、明治天皇が崩御したとき、乃木希典が殉死したことに衝撃を受けて漱石は書いた。
殉死というような、封建的精神ではなく、自己中心主義がこれからは正しいと言うか、そこで悩むと言っているのだろうか。
その辺はよく分らない。