3週間前、機能不全に陥っている代議制民主主義を救うために、田中秀征が朝日新聞で中選挙区連記制を提案していた。はじめは、彼は見当違いのことを言うと思っていたが、時がたつとそんなに悪くないな、と私は思い出した。
彼の中選挙区連記制とは、一選挙区の議員定数を3人から5人にして、有権者は2名に投票できることをいう。
「裏金問題に見られる政治の劣化の主因は小選挙区制にあり」という田中の主張は理解しがたいが、小選挙区制は、確かに、政党幹部に権力が集中し、民意が反映しにくいと思う。小選挙区制ではマイノリティの意思は切り捨てられると思う。
田中はつぎのように言う。
「中選挙区の時代は、農業団体に強い議員と商工団体に強い議員が自民党内で激しく対立し、(党内で)調整するのが常でした」「小選挙区制では、自民党を支持する農業や商工、建設団体、医師会などが、こぞって一人の自民党候補を推すのです」「議員は政党のトップに逆らわなくなる。そのうちに構想力もなくなり、志まで失う」
小選挙区制となると、当選した議員が誰の利害を代弁するのか、曖昧になる。みんなにいい顔をしようするから、政策ではなく、軍備増強とか保守的価値観をふりまくだけになる。これは、ハンナ・アーレントが「全体主義の起源」で訴えた20世紀初頭からワイマール共和国のドイツの代議制民主主義の欠陥そのものではないか。
20世紀初頭のドイツの失敗は比例代表制で起きた。小選挙区制だけが悪だと言えない。
政党が国民を代表しなくなってしまうということこそ、2大政党制が陥る罠ではないだろうか。アメリカでのトランプの出現は、従来の民主党や共和党が、国民のどの層を代弁するのかあいまいになったからではないだろうか。多数の政党があるのが健全な代議制民主主義ではないだろうか。無党派の議員がいても良いのではないだろうか。
こういう問題意識をもって、田中の中選挙区連記制を考えると、あり得る選択肢に思える。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます