猫じじいのブログ

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二大政党制や小選挙区制だけが代議制民主主義のありかたでない

2021-09-06 23:07:25 | 政治時評

朝日新聞では、8年前から長谷部恭男と杉田敦との対談「考論」を不定期に掲載してきたという。8月21日のオンラインイベントには加藤陽子をゲストに迎え、「〈危機の政治〉と〈政治の危機〉」をテーマに語り合ったいう。その一部がきょうの紙上にのっている。

菅義偉が自民党総裁選に不出馬となる前だから、菅批判がイベント要約記事の先にきている。しかし、私が興味をもったのは、小選挙区の批判である。

宇野重規は、『民主主義とは何か』(講談社現代新書)のなかで、アメリカの代議制民主主義や連邦制は、貧乏な多数派が金持ちの少数派を抑圧しないために、考え出されたものだと述べていた。小選挙区制はまさにその機能がある。選ばれた議員が国民の声を代表しないために適している。しかし、これが、政治不信を生み、投票率が低下する原因となっている。

杉田は、小選挙区比例代表制導入の理由を「政権交代可能な二大政党制」の実現という。そして、その二大政党制が実現しないことをつぎのように説明する。

《政党政治が根付いた国では、現状に不満がある人は与党でない2番目の党を支持する。ところが日本では2番目にいかずに、ゼロ、無党派になるのが特徴》

まず、私には、なぜ、「政権交代可能な二大政党制」が良いのかわからない。アメリカとイギリスをのぞき、ヨーロッパの多くの国では、多数の政党があり、連立で政権ができる。

日本の小選挙区比例代表制導入は、あくまで当時の政権党と野党との「妥協」で、しかも、政権党よりの妥協である。

杉田は党派性を肯定しているが、多様性を容認する社会では、党派の多様な選択肢を残すのが、大人の社会ではないか、と思う。選択肢が、白か黒かでは、社会の分断が進み、不安定な社会になる。また、時代の変化に政治がついていけなくなる。政治に党派性をみとめるのなら、比例代表制を認めるべきだろう。

「政党政治が根付いた国では、現状に不満がある人は与党でない2番目の党を支持する」とはどこの国のことをいうのだろうか。杉田のいっていることは妄想である。

アメリカの民主党・共和党では、党が国民に開かれている。トランプは民主党員だったが、共和党に移って大統領になった。民主党内で左派と右派が大統領候補を決めるのに、1年以上前から争っている。民主党・共和党の党派性が曖昧模糊としており、自分自身の参加によって、党が変化する可能性を秘めていることで、二大政党制への個人の不満を吸収していると思う。

党が誰にでも開かれており、党の信条が柔軟に代わることは、一般には期待できない。これがヨーロッパの多くで、多数の政党と比例代表制をとっているのだと思う。

本当に望ましいのは、代議制民主主義を本質において直接民主主義に近づけることである。代議員(国会議員)が頻繁に代わること、議決において代議員は党に拘束されないこと、選挙期間に制限がないこと、大選挙区にし、党派に属しない人や少数派でも当選できる可能性をもたすこと、選挙区民は選挙のやり直しを請求できること、代議員の俸給を減らし職業政治家になる動機を減らすこと、いくらでも、代議制民主主義の改善のために、ためすことがあるのではないか、と思っている。



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