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猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

ドイツの脱原発には着実な歴史がある、と電力事業連合のウェブサイト

2021-09-02 22:58:47 | 原発を考える

きょう、電力事業連合のウェブサイトに面白い記事を見つけた。ドイツにおける脱原子力の歴史である。電力事業連合とは、日本の9つの電力会社が設立した広報組織である。

ドイツの脱原発は歴史が古い。1986年のソ連・チェルノブイリ原発事故のあと反原発運動が高まり、ドイツの世論が脱原発の方向に動き出した。

《 1998年に、二大政党のひとつである中道左派の「社会民主党(SPD)」と、初の連邦政権入りを果たした環境政党「緑の党」による連立政権が発足し、脱原子力政策が開始された。以来、「脱原子力」と「再生可能エネルギー(再エネ)拡大」がドイツにおけるエネルギー政策の基本方針となった。》

だから、アンゲラ・メルケル首相が突然原発廃止を決めたわけでない。

2002年に脱原子力の法制化がなされた。新しく原発を作らない。各原発に生涯発電電力量を決め、それを越えるなら廃炉にする、というものだ。生涯発電電力量は、平均として、32年分であった。2003年に1基、2005年に1基の原子炉が閉鎖された。

日本は、2011年に福島第1原発で、原子炉のメルトダウンがあったにもかかわらず、そして、国民の多数が原発の稼働に反対なのにもかかわらず、新しく原発を作らないとか、古い原発を廃炉にするとか、を法律で決めていない。日本の国会議員は正気でないか、原子炉メーカと電力会社に支援を受けていて、脱原発を法制化できていない。

2005年にメルケル率いるCDU/CSU連合がSPD・緑の党連合に僅差で勝った。

メルケルは電力業界の要請をうけて、2010年に脱原発の法を改正した。生涯発電電力量を平均12年分上乗せしたのである。原発を新たに作らないのは維持された。

ところが、2011年3月11日に東日本大震災が起き、福島第1原発で、3基の原子炉がメルトダウンし、水素爆発も引き起こした。

これを受けてメルケルは方針を変え、運転延長を撤回し、各原子炉の閉鎖年限を決めた。現在、すでに、11基の原子炉を閉鎖している。2022年中に、残りの6基も閉鎖することになっている。これまで、脱原発の準備は淡々と進められ、再生エネルギーで、まかなえるようになっている。

日本では、自民党・公明党だけでなく、立憲民主党も、脱原発を口で言うだけで、その道筋を法律で決めていない。すなわち、やる気がないのだ。経済的な理由で、原発を続ける必要性はもはやない。自分たちが制御できない原子力技術にたよる必要はない。本当のところは、原発事業にたよる組織が執拗に原発の稼働にこだわっているだけである。原発を永延に動かすことはできない。古くなれば、崩壊の危機にさらされる。

それに、ドイツでは、人為的ミスで、チェノルブイ原発事故が起きたことが重視された。また、世界的に、使用済み核燃料の処分も決まっていない。原発を稼働すれば稼働するほど、核のゴミの処分に困るだけだ。

キチンと脱原発を法制化し、脱原発の準備をしないと、取り返しのつかない事態に、日本が陥る。

きょう、テレビ朝日のモーニングショーで、玉川徹が、河野太郎、小泉進次郎のパワーハラスメント記事は、経産省の原発推進派の陰謀だといった。私も、そうかもしれない、と思った。政府や経産省内で原発推進派の暗闘がおこなわれているのは真実だろう。しかし、冷静に考えれば、原発稼働に何の正当な理由もない。原発推進派は正気でない。


合意があってもなくても、トリチウム汚染水の海洋放出に反対

2021-05-12 23:25:41 | 原発を考える
 
きのう、朝日新聞に『(耕論)合意なき海洋放出』というタイトルで3人のインタビュー記事が載ったが、自民党の衆議院議員の山本拓が一番 本質をついていたと私は思う。
 
彼によると、菅政権の福島第1原発汚染水の海洋放出決定の前に、自民党の総合エネルギー戦略調査会への事前報告すら、なかったという。菅義偉は、首相になれば、与党にもはからないで、自分の一存だけで、海洋放出できると思っている。
 
そして、それ以上に問題なのは、2015年に政府と全国漁業協同組合連合会と結んだ合意「関係者の理解を得ながら対策を行い、海洋への安易な放出を行わない」を菅政権は反故にしたのだ。
 
山本は、処理水の放出と言える代物でないことを指摘している。福島第1原発のタンクの水はトリチウムが残っているだけでなく、ALPSで取り除くことのできなかったセシウムやストロンチウムなどの放射性物質が基準値を超えて残っている。もう一度ALPSを通せば、取り除けるなら、なぜ、取り除いて、トリチウム水としてタンクの中に保存しておかないのか。東芝のALPSの性能の問題でそこまでできないからである。
 
山本は、菅政権が、この汚染水を平均500倍に薄めて、海洋放出するというが、放出する放射性物質の総量は変わらない、と指摘する。山本は、生態系への影響を政府が科学的な評価を行っていない、という。政府の主張は、「ほかもやっている」、「IAEAも支持している」しかない。しかし、IAEAは原発推進国際機関である。原発推進のためには、海洋放出を禁止するという先例を作ると、IAEAは困るのである。利害関係者であり、そんな奴が根拠も見せずに言うことを信用して聞くわけにいかない。
 
海洋放出で、トリチウムが薄まるというのは神話である。大気中のトリチウム濃度は、人類が原子の火(核分裂連鎖反応)が手にしてから、以前の数倍になっている。二酸化炭素濃度の増加の比ではない。トリチウム水を放出することは自然環境破壊である。大気や海洋は有限であり、世界の原発が放出つづければ、汚染濃度は上がり続ける。
 
原発がトリチウムの放出をしないようにするのが、現在の世界の流れで、「ほかの原発がトリチウムを放出しているから」と言ってしまったら、泥棒の居直りと同じである。
 
山本は、第1原発の原子炉建屋の地下に外から水が流れ込まないようにすれば新たな汚染水の発生が抑えることができると指摘している。政府も東電もIAEAも、8年前にそう言っており、壁を作る予定だった。そして、東電は安上がりだと言って、凍土壁を選択した。しかし、凍土壁は1日140トンの地下水を通してしまうことがわかった。
 
どうして、ここからやり直せないのか、国民に説明する責任が東電と政府にあると、山本はいう。
 
私が山本拓の指摘に加えて言いたいのは、放出するにも地層注入というやり方があり、どうしてその方法が選択されなかったのか、いぶかる。金銭的な理由かと思ったら、そうでもない。政府の見積もりでは、177から180億円で、2500メートル地下の砂岩層に注入できるという。アベノマスクの契約金は260臆円である。アベノマスクより安い費用で自然環境破壊が避けられるのだ。
 
政府と東電は海洋放出による風評被害には賠償金を払うというが、本当にその気があるのか、疑ってしまう。原子炉建屋の周りに防水壁を作るとか、地層注入するとかの手があるのに、17億から34臆円と安上がりだから、汚染水を薄めて海洋に放出するという政府・東電に、そもそも誠意があると思えない。
 
原発の公害問題の専門家、小出裕章によれば、政府がトリチウムの海洋放出に固執するのは、使用済みの核燃料の再処理施設を動かしたいからであるという。原発から放出されないように閉じ込めていたトリチウムが再処理の段階で大量に放出されるから、そのために大量のトリチウムの海洋放出の先例を作りたいからだという。
 
使用済み核燃料の再処理に河野太郎は反対していたが、菅義偉の配下にはいってから反対の声が小さくなっている。バカ殿の菅に気を使う必要がないと思う。再処理施設の稼働をスムーズに通すために、トリチウム水の海洋放出がなされるとは、最悪の選択である。海洋放出に絶対に反対する。

トリチウム汚染水の海洋放出も40年超えの原発の稼働もすべきでない

2021-04-29 22:38:44 | 原発を考える
 
きょうの新聞によれば、いよいよ、運転をはじめて40年を超えた原発が再稼働するという。原発はもともと20年が寿命として設計され、稼働したが、その寿命が30年、40年と延長され、60年まで延長できるようになった。
 
建設時に寿命が設定された理由は、原子炉のなかでの核分裂連鎖反応で放出される中性子線が金属やコンクリートを劣化させ、原子炉が崩壊する危険を考慮してのことである。劣化した金属は急冷によってひび割れする危険があるからである。
 
このために、原子炉内には原子炉を構成するのと同じ鋼鉄を炉内部におさめ、劣化をテストすることになっていた。そのテスト用の鋼鉄サンプルも尽きてしまったと聞く。どうやって冷却の安全性を保障するのか、私にはわからない。もしかしたら、非常時に冷却することをやめ、福島第1原発事故のように、放射性物質を含む水素ガスや水蒸気を外部に放出することに規定が変わったのかもしれない。
 
しばらく前、新聞のインタビューで元原子力規制委員は、委員会がチェックできるのは法にしたがっているか、どうかで、合法なら認可しないわけにいかない、安倍首相にかってに「世界で一番厳しい基準で審査しているから安全だ」と、責任を委員会に押し付けるようなことを言われても困るといっていた。
 
原子力規制委員会は、本来、内部に安全の研究機関を持たなければ、書類審査で終わってしまう。
 
トリチウム汚染水の海洋放出も風評対策で終わってしまって、ことの重要性がみすごされている。明らかな環境破壊である。
 
今回、政府は、トリチウムの海洋放出基準を1リットルにつき1500ベクレルと言っている。自然界の水1リットルにつき0.118ベクレルのトリチウムだから、その1万倍以上になっている。
 
他の原発がトリチウム汚染水を放出しているから、いいでしょうという論理はおかしい。現在、原発の存在のため、大気のトリチウムの存在比が、自然界の5倍になっている。確実に自然環境を破壊している。
 
私が疑問に思っているのは、東電と政府が出してくる世界のトリチウム海洋放出量をどこで手に入れたのかである。いまだに出典を確認できていない。原発はトリチウムを外部に放出しないように内部に閉じこめている。だから、トリチウムが大量に放出されるのは、使用済核燃料の再処理工場である。トリチウムの放出を抑えるために、最近は再処理せず、そのまま使用済核燃料を保管するようになっている。
 
日本政府の再処理工場を青森で稼働するという方針は、時代の趨勢に反している。
 
政府のトリチウムの海洋放出基準、1リットルにつき1500ベクレルは、福島第1原発事故後、サブトレインの雨水の放出基準である。サブトレインは原子炉建屋のまわりにある溝のことである。政府資料では2017年度では1日220トン放出したとある。
 
今回、毎年約22兆ベクレルのトリチウムをこの濃度基準で放出するとなると、毎日4万トンの希釈されたトリチウム水が放出される。(政府の試算では毎日5万トンが放出される。)
 
これは、これまでのサブトレインの雨水放出より、桁違いに大量のトリチウム水が放出されることになる。
 
また、年間約22兆ベクレルというのは、事故前の管理目標値であって、政府資料によれば、事故前は、実際には年間2兆ベクレルしか放出されていなかった。これまでの10倍以上のトリチウムが放出されるのである。これは重大な環境破壊ではないか。
 
さらに私が不信になるのは、2018年に政府が公聴会に出した資料では、毎年55兆ベクレルのトリチウム水が発生し、55兆ベクレルのトリチウム水をどこかに放出しないといけないと書いている。この資料はインタネット上の政府のサイトにある。
 
いつから、年間22兆ベクレルになったのか。何か、その場しのぎのために、ウソの数値を言っているのではないか。
 
2016年の政府資料によると、原子炉建屋とタンクに残っている総トリチウムは約2600兆ベクレルで、760兆ベクトルがタンクにあるという。トリチウムの半分が4500日(12.32年)でベータ線をだしてヘリウムに変化する。大ざっぱにいって、現在約2000兆ベクレルが福島第1原発内にあることになる。
 
毎年22兆ベクレルのトリチウム水を放出するとして、いつまでかかるのかは、つぎの微分方程式を解いて得られる。
 
 dq/dt=-(a+q/λ)
 
ここで、qは残っている総トリチウムの量で、a=22兆ベクレル、λ= 12.32 / log2 である。
これより、すべて放出するに必要な期間は、
 
 T=λ log(1+Q/λa)
 
で与えられる。ここで、Qは現在の残っている総トリチウム量、2000兆ベクレルである。
 
放出期間は約32年になる。したがって、総トリチウム量があたっていれば、政府の試算通り、30,40年で放出が終わる。が、これまでの毎年の放出量の10倍以上を放出だから、異常なトリチウム水放出に変わりがない。
 
2018年の公聴会資料では、費用の見積もりが海洋放出で17から34億円、地層注入で177から180億円となっている。地層注入では2500メートルの深さの砂岩層が仮定されている、
 
地層注入の方が、環境破壊が少ないのではないか、と私は思う。そんなに高額な費用ではない。
 
福島第1原発事故の教訓とし、老朽化した原発を稼働することは、やめるべきである。自民党政権は、なぜ、安全性をいつも無視するのだろう。

葛飾北斎浮世絵で海洋放出のメイドイン日本パロディを作ろう

2021-04-28 23:24:42 | 原発を考える

きのう、中国報道官が日本のトリチウム汚染水の海洋放出を皮肉った絵をツィッターに投稿したという。それを日本政府が抗議したという。

葛飾北斎の浮世絵「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」を使って、海洋放出をパロディ化したものだ。発想が面白い。どうして、日本人が先に、海洋放出のパロディを作らなかったのだろう。日本の誰かがこれを作っても、日本政府は抗議したのだろうか。

本来、日本政府が風刺にいちいち抗議するようなことではない。風刺は表現の自由の範囲だ。私が恐れるのは、トリチウム汚染水の海洋放出に反対する者は非国民だという風土を作るのために、わざと政府が抗議している、と感じるからだ。そうでなければ、何を抗議しているのか、わからない。著作権侵害にあたらない。

今回、葛飾北斎の波しぶきに、骸骨や赤ん坊や奇怪な生き物を埋め込んだのは、秀逸だと思う。よくできている。

不満なところは、北斎が富士山の上高く描いた人のような入道雲を、十字架のような雲にしたことだ。これは面白くない。もっと、人間のようで妖怪のような雲にすべきだった。

富士山を原発に置き換えたが、この原発はスリーマイル島原発で、福島第1原発と形が異なる。といっても、福島第1原発の原子炉建屋は四角い箱型なので、それでは造形的に面白くない。壊れた原子炉建屋にクレーンを描くの良いのではないか。あとは、むき出しの原子炉を描くのもある。

あと、防護服が黄土色になっていたのが、福島第1原発の事故処理では、白の防護服を使っている。

誰か、メイドイン日本のトリチウム汚染水の海洋放出パロディを作ってみませんか。

政府のトリチウム汚染水の海洋放出を科学的・技術的・倫理的にメディアは検証せよ

2021-04-17 23:10:55 | 原発を考える


メディアは、いま、トリチウム汚染水の海洋放出を当然のことかのよう受け止め、反対するものは頭がおかしいかのように、あらぬ風評を流す者かのように、報道している。16日のTBSテレビ『ひるおび』もひどかった。

朝日新聞でも、海洋放出について、16日の言及記事は1件(30面の社会面)、17日は2件(7面の経済面)しかない。それも、不評被害についての言及にすぎない。紙面はコロナ、コロナで埋め尽くされている。

海洋放出の問題は、科学に無知な人たちが騒ぐことで起きる問題なのか。

トリチウム汚染水の海洋放出は、まず自然環境破壊である。

放射能汚染というと、必ず自然界に放射線をだす物質があるという者が現れる。放射線をだすということは、放射性物質が自然に崩壊する不安定な物質ということで、人工的に作らなければ、自然界にほとんど存在しえない。

放射性物質の量は、ベクレル(Bq)という単位ではかる。これは1秒に1個、放射性元素の原子核が崩壊するということである。

トリチウム(三重水素)は、半減期が約4500日であり、つねに生成されなければ、自然界に存在できない。大気上層で窒素原子や酸素原子が宇宙線を浴びて微量ながら常にできている。そのために、自然界にある水素原子のうち、その百兆分の1がトリチウムであると推定されている。

これは、水1リットルにつき0.118ベクレルのトリチウムが自然界にあることを意味する。今回のトリチウムの海洋放出基準では、1リットルにつき1500ベクレルと言っているから、その1万倍以上になっている。

さて、第2次世界大戦後、大気圏内原爆水爆実験をするものだから、大気のトリチウムの濃度が、一時、自然の濃度の200倍になった。私の子ども時代、町の人びとはガンになるから雨にあたらないようにとささやきあっていた。

1963年に米ソ英が大気圏内核実験停止条約を結ぶことで、トリチウム濃度がさがってきた。ところが、この下がりがこの30年間鈍ってきている。これは原子力発電がトリチウムに放出しているからと推定される。

トリチウム海洋放出は自然環境を破壊するのである。

原爆水爆実験でも原子力発電でも、核分裂連鎖反応が起きているから、水素原子がその中性子を2個吸いとってトリチウムができる。

今回、東電と政府は世界中の原発で大量のトリチウムを放出していると主張する。原発ではそのトリチウムが外にでないよう設計されているはずだ。原発のトリチウムの生産量と海洋放出のトリチウム量とは違うはずだと思う。ネットで、現在の海洋放出の量を調べようとしたが、文献が見つからない。メディアは政府の出す資料に基づき報道するのではなく、その信ぴょう性を独自に調べて欲しい。

それに他国が自然界にトリチウムを放出しているからといって、日本がトリチウムを放出すればよいというのは、倫理的に問題である。

また、排水基準と飲料水基準とは異なる。EUの基準は1リットルあたり100ベクレルである。したがって、海洋放出の排水基準の1リットルあたり1500ベクレルのトリチウム水を飲んではいけない。

また濃度と総量とを混同してはいけない。復興庁の動画が、1リットル当たり1500ベクレルは、大人の体内に数十ベクレルとたいした差がないように、いっていたが、前者は濃度であり、後者は総量である。復興庁の論理では、クジラの体内のトリチウム総量と1500ベクレルと比較して、基準は「安全で安心」ということになる。あくまで、水1リットルあたり0.118ベクレルと比較すべきである。

つぎに、政府は、年に22兆ベクレルのトリチウムを海洋に放出するというが、その大きさが問題である。

海洋放出の基準、1リットルあたり1500リットルから計算すると、1日あたり4万トンのトリチウム水を放出することになる。排水基準に達するために、平均500分の1にトリチウム処理水を薄めると政府がいっているが、すると、放出の汚染水とほぼ同量の海水を汲み上げることになる。これを30年から40年続けるというが、現実的なのだろうか。その間に津波が来ることになる。放出したトリチウム水を再び汲み上げることがないようにしないといけない。メディアはこの現実性を検証すべきである。

さらに、政府は原子炉建屋内にどれだけのトリチウムが存在する推定しているのか。5年前にその推定値が出されているが、今回はそれなしに30年から40年と政府はいっている。新しいトリチウムの生成は本当にないのか。それから、ALPSで処理するうちに消えている多量の水があるようだが、第3者がはいって調査する必要がないのか。

最後に私がわからないのは、どうして地下水の原子炉建屋に流れ込まないようにしないのかということである。地下水の流れ込みがなければ、循環型でデブリを冷却できる。汚染水そのものが発生しないのである。

2014年か2015年に安上がりだからといって東電は凍土壁をつくった。しかし、実際には、凍土壁完成後も、地下水が140トン流れ込んでいる。凍土壁は失敗だったから、防水をほどこしたコンクリート壁で原子炉を囲めばよい。地震が起きる前は、原子炉建屋に地下水が流れ込まなかったのだから、コンクリート壁は凍土より有効である。

汚染水が発生しないという方策をコストの面から避け、風評被害の対策をとるから、海洋放出するとは、おかしい。何か、科学技術の問題を精神論の問題に、政府はすり替えている。メディアまで、政府の精神論に乗っかるのではなく、ちゃんと政府のいうことは、科学的か、技術的裏付けがあるのかを検証すべきである。そして、倫理の問題として、国民に判断を求めないといけない。