猫じじいのブログ

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政府のトリチウム汚染水の海洋放出を科学的・技術的・倫理的にメディアは検証せよ

2021-04-17 23:10:55 | 原発を考える


メディアは、いま、トリチウム汚染水の海洋放出を当然のことかのよう受け止め、反対するものは頭がおかしいかのように、あらぬ風評を流す者かのように、報道している。16日のTBSテレビ『ひるおび』もひどかった。

朝日新聞でも、海洋放出について、16日の言及記事は1件(30面の社会面)、17日は2件(7面の経済面)しかない。それも、不評被害についての言及にすぎない。紙面はコロナ、コロナで埋め尽くされている。

海洋放出の問題は、科学に無知な人たちが騒ぐことで起きる問題なのか。

トリチウム汚染水の海洋放出は、まず自然環境破壊である。

放射能汚染というと、必ず自然界に放射線をだす物質があるという者が現れる。放射線をだすということは、放射性物質が自然に崩壊する不安定な物質ということで、人工的に作らなければ、自然界にほとんど存在しえない。

放射性物質の量は、ベクレル(Bq)という単位ではかる。これは1秒に1個、放射性元素の原子核が崩壊するということである。

トリチウム(三重水素)は、半減期が約4500日であり、つねに生成されなければ、自然界に存在できない。大気上層で窒素原子や酸素原子が宇宙線を浴びて微量ながら常にできている。そのために、自然界にある水素原子のうち、その百兆分の1がトリチウムであると推定されている。

これは、水1リットルにつき0.118ベクレルのトリチウムが自然界にあることを意味する。今回のトリチウムの海洋放出基準では、1リットルにつき1500ベクレルと言っているから、その1万倍以上になっている。

さて、第2次世界大戦後、大気圏内原爆水爆実験をするものだから、大気のトリチウムの濃度が、一時、自然の濃度の200倍になった。私の子ども時代、町の人びとはガンになるから雨にあたらないようにとささやきあっていた。

1963年に米ソ英が大気圏内核実験停止条約を結ぶことで、トリチウム濃度がさがってきた。ところが、この下がりがこの30年間鈍ってきている。これは原子力発電がトリチウムに放出しているからと推定される。

トリチウム海洋放出は自然環境を破壊するのである。

原爆水爆実験でも原子力発電でも、核分裂連鎖反応が起きているから、水素原子がその中性子を2個吸いとってトリチウムができる。

今回、東電と政府は世界中の原発で大量のトリチウムを放出していると主張する。原発ではそのトリチウムが外にでないよう設計されているはずだ。原発のトリチウムの生産量と海洋放出のトリチウム量とは違うはずだと思う。ネットで、現在の海洋放出の量を調べようとしたが、文献が見つからない。メディアは政府の出す資料に基づき報道するのではなく、その信ぴょう性を独自に調べて欲しい。

それに他国が自然界にトリチウムを放出しているからといって、日本がトリチウムを放出すればよいというのは、倫理的に問題である。

また、排水基準と飲料水基準とは異なる。EUの基準は1リットルあたり100ベクレルである。したがって、海洋放出の排水基準の1リットルあたり1500ベクレルのトリチウム水を飲んではいけない。

また濃度と総量とを混同してはいけない。復興庁の動画が、1リットル当たり1500ベクレルは、大人の体内に数十ベクレルとたいした差がないように、いっていたが、前者は濃度であり、後者は総量である。復興庁の論理では、クジラの体内のトリチウム総量と1500ベクレルと比較して、基準は「安全で安心」ということになる。あくまで、水1リットルあたり0.118ベクレルと比較すべきである。

つぎに、政府は、年に22兆ベクレルのトリチウムを海洋に放出するというが、その大きさが問題である。

海洋放出の基準、1リットルあたり1500リットルから計算すると、1日あたり4万トンのトリチウム水を放出することになる。排水基準に達するために、平均500分の1にトリチウム処理水を薄めると政府がいっているが、すると、放出の汚染水とほぼ同量の海水を汲み上げることになる。これを30年から40年続けるというが、現実的なのだろうか。その間に津波が来ることになる。放出したトリチウム水を再び汲み上げることがないようにしないといけない。メディアはこの現実性を検証すべきである。

さらに、政府は原子炉建屋内にどれだけのトリチウムが存在する推定しているのか。5年前にその推定値が出されているが、今回はそれなしに30年から40年と政府はいっている。新しいトリチウムの生成は本当にないのか。それから、ALPSで処理するうちに消えている多量の水があるようだが、第3者がはいって調査する必要がないのか。

最後に私がわからないのは、どうして地下水の原子炉建屋に流れ込まないようにしないのかということである。地下水の流れ込みがなければ、循環型でデブリを冷却できる。汚染水そのものが発生しないのである。

2014年か2015年に安上がりだからといって東電は凍土壁をつくった。しかし、実際には、凍土壁完成後も、地下水が140トン流れ込んでいる。凍土壁は失敗だったから、防水をほどこしたコンクリート壁で原子炉を囲めばよい。地震が起きる前は、原子炉建屋に地下水が流れ込まなかったのだから、コンクリート壁は凍土より有効である。

汚染水が発生しないという方策をコストの面から避け、風評被害の対策をとるから、海洋放出するとは、おかしい。何か、科学技術の問題を精神論の問題に、政府はすり替えている。メディアまで、政府の精神論に乗っかるのではなく、ちゃんと政府のいうことは、科学的か、技術的裏付けがあるのかを検証すべきである。そして、倫理の問題として、国民に判断を求めないといけない。


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