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猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

最低賃金は全国一律、時給千5百円で良いのだ

2019-07-06 20:21:18 | 経済と政治


昨日の朝日新聞夕刊に、はっとしたインタビュー記事があった。

《これが超ブラックな会社で。休みは2か月に1日で、時給は600円くらい。「最低賃金、下回ってますよね」って社長に言ってみたけど、「仕方がないよな!」で終わりでした。》

幸いにも、この21歳の派遣の青年は、IT系の資格を生かして、今年1月に転職したとのことである。

しかし、もし、あなたが、ずっと、時給600円だったら、どうするだろうか。家賃を払って、食べていくだけで、カツカツである。もし、あなたが若いなら、結婚することも夢みるだろうが、できるか不安になるだろう。共稼ぎで、よりそってくれる女の子に出会えても、子どもが生まれたときに、厳しい現実に出会うだろう。

青年はさらに言う。

《ブラック企業はなくしてほしいけど、経営のためにはブラックにならざるを得ない会社もあると思うです。》

この青年は、社長に同情している場合ではなく、最低賃金より安い時給しか払わない企業を許してはならない。もし、同情するなら、社長に共同経営者にしてもらって、自分の会社を、最低賃金以上を支払える会社に、育てるべきである。
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日本国憲法第25条に「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と書いてある。

日本国憲法第27条に「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ」と書いてある。もっとも、ここに「義務を負ふ」とあるのは、おかしいが。

日本では、「最低賃金」が都道府県によって違う。

低い時給から挙げると、鹿児島県が761円、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、沖縄県、高知県、鳥取県、青森県、岩手県、秋田県が762円、山形県が763円、愛媛県、島根県が764円である。

地方の物価が安いわけではない。生活物資の値段は、首都圏とくらべて、店舗の競争が少ない分、かえって高い。

このままでは、人は、最低賃金の高い地域に移動せざるをえない。

しかし、最低賃金の高い東京都でも985円、ついで、神奈川県984円、大阪府936円で、他は900円にいかない。

それでは、時給800円で、どれだけの年収を得られるのか。労働基準法では、1日8時間を超えて働かしていけない、とある。1年に平均で労働日が245日あるから、年俸で、156万8千円である。すなわち、ボーナスなしで1ヵ月約13万円である。

これから、失業保険、健康保険、年金、税金が引かれる。住民税は所得の1割である。

私のNPOの教え子の青年は、今年の4月に特例子会社に入って喜んでいたが、今は「こんなに頑張ってもこれだけの給料か」と言うようになった。小学校の対人関係がうまくいかず、特別支援学校高等部を出たが、最低賃金の時給しかもらえない。

人が行きたがらない職業の給料は高くあるべきだが、現実は、そうではなく、日本政府は、外国から人を入れて、安い賃金を守ろうとする。安倍政権は、経営者側、すなわち、特権階級の味方だからだ。

賃金として、結婚して子供をもてるだけのお金を払わないといけない。それが、憲法第25条の「健康で文化的な最低限度の生活」の意味だ。
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それでは、どれだけの賃金が払えるのか。簡単な方法は、国民総生産(GDP)を人口で割ればよい。国民総生産は、国民が1年に働いて生産した付加価値であるからだ。

現在、日本が、1人当たり4万ドル弱、米国が6万ドル弱、ドイツが5万ドル弱、韓国が3万ドル弱である。日本も、民主党政権下のときは5万ドル弱あった。ドルで見ると、円安誘導の安倍政権下では、日本の国民総生産は下がっている。

円に直すと、一人当たりの国民総生産は2017年で430万円である。この人口は、子どもも年寄りも含めている。労働人口の割合は、日本政府の公表値で、人口の約52パーセントである。したがって、830万円が平均年収である。

したがって、立憲民主党の参院選公約が、時給を5年以内に1500円にするというのも、あながち、無理な公約ではないのだ。日本は、経営者、株主の味方の安倍政権が牛耳いるから、賃金が安いのだ。

会社の成長のために、会社の保留分が必要だというなら、働いている人すべてを共同経営者にすればよい。すなわち、会社の株券を給料の一部として配れば良いだけである。

いまどきの若い人は、あくどい日本政府に、だまされすぎである。

じつは、私が20年前に、日経ビジネスで見た電気・電子機器産業の労働者の平均年収は300万円強であった。日本の社会は、安い賃金で労働者を働かせていたのだ。経営陣や株主の取り分が大きいのである。みんなが文句を言わないから、賃金格差は、ますます、大きくなっている。

ドイツ首相アンゲラ・メルケルの健康を願う

2019-06-29 19:45:29 | 経済と政治


65歳のアンゲラ・メルケル首相が、公式の場で最近2度も体を震わせる事態が起きたという。健康が心配である。

私が彼女を評価するのは、東日本大震災で福島第一原子力発電所がメルトダウンしたのを見て、速やかに、ドイツのすべての原子力発電の廃止を決断したこと、また、アメリカやフランスのシリア攻撃に同調せずに、シリアからの大量難民の受け入れを決断したこと、などである。

彼女には、学校の水泳の授業で飛び込みを指示されたが、なかなか、飛び込まなかったという逸話がある。45分間も飛び込み台に立ち続け、授業終了のベルが鳴ったとき、ようやく飛び込んだという。

彼女の性格を、臆病とも慎重とも言うことができる。

私なら、授業終了のベルが鳴っても飛び込まない。嫌なものは嫌だ。教師の命令に絶対従わない。したがって、彼女を妥協的とも言えるし、柔軟だとも言える。

彼女は学校の成績は一番だったという。

彼女の父はルター派の牧師で、母は学校教師で社会民主党員(SPD)でもあった。父は、戦後(1954年)、生まれたばかりのアンゲラを連れて、西ドイツから、共産主義政権の東ドイツに、教区の牧師として移住してきた。BBC番組は、この環境が、本心を誰にも明かさないという彼女の用心深い性格をはぐくんだとする。

彼女は大学で量子化学を専攻し、1986年に物理学博士を取得した。

ベルリンの壁が崩壊した後、1991年、彼女は、政界に打ってでて、キリスト教民主同盟(CDU)の連邦代表代理に就任した。番組では、このときから、彼女が、西ドイツ首相のヘルムート・コールに気に入られ、コールの“mädchen(女の子)”と呼ばれていたという。日本の「小泉チルドレン」とか「安倍チルドレン」とか、にあたる。

コール政権が1998年の連邦議会選挙で歴史的な大敗をし、野党に転じ、CDUの汚職問題が次々と明るみ出た。彼女は、汚職と無関係のリリーフ、つなぎ役として、2000年にCDU党首に選任された。番組は、彼女が、単にコールのお気に入りというだけでなく、ビジョンもイデオロギーもない、人の意見をよく聞く実務家と、他の政治家が思っていたからという。

ところが、彼女の率いるCDUが、2005年の連邦議会選挙で勝ち、ドイツ初の女性首相、初の東ドイツ出身の首相となる。

彼女は、国民世論調査を丁寧に分析し、それを最大限に生かす巧みな政治家とみなされやすい。また、他党の政策を先取りし、選挙に勝つ、ビジョンもイデオロギーもない政治家と、みなされることもある。

私は、そうではない、と思っている。彼女のイデオロギーは人道主義であると思う。弱い者に敬意を表し、弱い者の生きていく場を奪わないのである。

彼女は、欧州政治の調整役として、ギリシア危機、リーマンショックを軟着陸させた。いっぽうで、原発廃止や難民の受け入れでは、ドイツ国民の意見を聞かず、昨年、地方選挙でのCDUの負けを招いたと批判される。が、人道主義からくる決断だ、と私は思う。だからこそ、SPDの弱者救済策をとりこみ、連立を組めたのだと思う。

彼女は、首相の座について13年になり、トランプ大統領の強引な外交政策にも同調せず、欧州連合(EU)の安定を守ってきた。

昨年の秋、CDU党首をやめ、任期いっぱい首相職に専念することに決断したのは、ドイツや欧州や世界のために、まだまだ、やるべきことが残っていると判断したのであろう。

私は、アンゲラ・メルケルに、できたら、2022年にドイツの全原発が停止するのを首相として見届けてほしい。

中国たたきに日本は加わってはならない、トランプがおかしい

2019-05-15 21:23:58 | 経済と政治



きのう、5月14日、複数のメディアが、国家安全保障上のリスクをもたらす企業の通信機器の使用を米国企業に禁止する大統領令に、トランプ大統領が今週署名する見通しと報じた。これは、中国の通信機器大手、ファーウェイ(HUAWEI、華為技術)との取引禁止をねらったものとみられる。

すでに、この半年間、トランプ政権は、親米の各国政府に、軍事的セキュリティを理由に、政府用達からファーウェイ製品の排除を要請している。

それだけでなく、米国政府の要請で、昨年の12月にファーウェイの副社長がカナダで逮捕された。米国に身柄を引き渡すか否かの裁判が、カナダでまだ続いている。

ファーウェイの製品が、国家安全保障上のリスクをもたらすかどうかは、別段、確証があるわけではない。要は、通信機器の技術が、米国の企業より、中国のファーウェイが高くなっただけである。これに対し、トランプ政権が、軍事的危機をあおって、世界市場からファーウェイを追い出そうとするものである。

5月2日のBBC放送は、英国政府の国家安全保障会議の協議内容が漏れたことで、メイ首相が国防相を更迭した、と報じた。漏れた内容は、英国政府がファーウェイ製品を使うという決定であった。トランプ政権に従わないという、すごく まっとうな結論である。

日本政府だけでなく、日本のメディアが、トランプ政権が言うことを支持した報道をしているには、がっかりする。トランプ政権の「黄色人種たたき」に日本のメディアが無批判に追随しているように見えるからである。

藤原帰一だけが、きょう5月15日の朝日新聞夕刊の「時事小言」に、トランプの外交政策に疑問を投げかけている。

中国のファーウェイが具体的に何かをしたわけではない。IT技術が軍事的技術になりうるという根拠のない米国民の恐怖心を利用して、米国政府はファーウェイをたたいている。そして、そのターゲットはファーウェイから中国政府そのものに拡大している。いずれ、中国系米国人排除に行くかもしれない。

トランプの補佐官ジョン・ボルトンや下院議長ポール・ライアンは、中国たたきを先導しているが、彼らは札付きの極右で、レイシストである。

私はIBMに勤めていたから知っているが、米国のIT技術研究開発には、アングロサクソン系はもはや関わっていない。理由は簡単で、IT技術研究開発は地味で根気と集中力が必要とされる仕事で、アングロサクソン系の人間はやりたがらないからだ。15年前、私のいたIBMの研究所では、白人(会社ではユーロピアンという)の応募がゼロになった。米国のIT産業をささえているのは、アジア系(中国人、インド人、ユダヤ人、イラク人、イラン人、エジプト人)、黒人(会社ではアフリカンという)、ヒスパニック(中南米出身者)である。そして、少々のユーロピアン(イタリア人、ポーランド人)がいる。

だから、中国の会社が、IT技術で世界一位になったって、何も不思議でないし、別に困ることでもない。

中国政府が情報技術を使って何か悪さをするかのようなことを、米国政府が言っているが、現実に情報技術を使って個人情報を取得し、分析しているのは米国政府である。高度のIT技術が防諜に必要になるのは、政府が国民の行動と思想を管理しようとしたときだけである。

私がIBMにいたとき、米国政府は民間のコンピュータに高度の暗号を載せることを禁じていた。高度の暗号を使用するときには、その暗号解読キーを米国政府に届けなければならなかった。すなわち、昔は、米国政府だけが、暗号メールを解読し、盗聴できた。

しかし、今、政府が求めていることは、怪しげな人物の盗聴だけでなく、国民の全個人情報を取得し、データベース化し、行動と思想を分析し、管理しようとしている。選挙の投票行動や性癖や友人関係などの個人情報をとろうというのである。

米国政府による全米国民のメールやインタネット・アクセスの監視が、オバマ政権時に発覚した。あばいたのは、ウィキリークスのスノーデンである。米国政府はその非を認めず、スノーデンを国際手配にしただけで、トランプ政権になっても続いている。

高度の情報処理技術が求められるのは、政府による全国民の監視のときである。これは、別にファーウェイが得意とする高性能のハードウェア技術ではない。

したがって、ファーウェイをたたく理由が私にはわからない。私には、中国人が IT 技術研究開発の主力になったことからくる、白人層の反動、レイシズムに見える。日本人がこのヘイトスピーチに加担するのは、理解しがたい。


知財立国に反対する、知識は公共財産だ

2019-05-14 22:23:39 | 経済と政治

きょう、5月14日の朝日新聞の《耕論》は、いずれも、「知財立国」という考えを肯定する立場の論客ばかりだ。

「知財立国」とは、国が「知的財産権」を利用して働かずして金を儲けるということを言っている。注意深い人なら、儲かるのは、「国」でなく「企業」だと気づくだろう。
知識の「所有権」を「企業」が主張して金儲けをすることに、疑問をもたない論客ばかりなのに、納得がいかない。

「知財立国」は、決して、「文化立国」のことではない。「知財立国」に反対する論客がでてきてしかるべきだ。

ギリシア哲学者の八木雄二だったと思うが、知識とは共有できるものであり、共有すべきだ、と、どこかでいっていた。だれかに知識を伝達することで、知識がすり減るものでない。

ところが、「知的財産権」とは、対価を払わずにその知識を利用してはいけないということである。

「知的財産権」で過去に起きた悲劇に、エイズの薬が特許で守られ、アフリカの人々が高価な薬を買えず、エイズで大量に死んでいったということがある。

薬の販売が認可されるには、薬の成分を開示しなければならない。薬の成分がわかれば、どの企業でも、安く作ることができる。薬は少量で効果があるから、生産工ストは、とても安くなるからだ。高価な薬になるのは、特許をたてに、他の企業に製造を許さず、特許所有の企業が独占的に薬を販売できるからである。売り手優位の値段になる。

特許の目的は、機械や薬を開発した個人への「ほうび」だ、と考えている素朴な人たちがいる。これは、嘘だ。現実的には、特許の権利を企業が所有し、苦労して発明した人のモノではない。だからこそ、発明者が企業を訴訟する。

青色ダイオードの発明者でノーベル賞受賞者の中村修二は、日亜化学工業を訴えた。免疫治療薬「オプジーボ」の発明者でノーベル賞受賞者の本庶佑は、小野薬品を訴えた。フラッシュメモリの発明者で紫綬褒章、瑞宝重光章の舛岡富士雄は、東芝を訴えた。

私が子どものとき、グラハム・ベルの伝記を読んで、電話を発明した偉い人と思ったが、私は大人になって、彼がやり手のビジネスマンで、特許を買いあさり、独占企業AT&Tを作り上げた人であることを知った。

資本主義社会はお金がお金を生む社会である。お金がお金を生むためには、所有権という考えが基本になる。これで、お金がお金を生むことが正当化されるのである。知識をお金で買えば、知的財産権によって、この知識がお金を生むのである。

似たようなモノに著作権がある。これは、歴史的には、小説家の地位向上を理由にしたものだった。ところが、これも、現在では、企業が金儲けをするためのものになっている。

著作権の対象は、芸術的なものだけでなく、手間をかけて作成されたが複製が容易な知識全般、たとえば、データベースやプログラムなどを含む。そして、企業に所有権が移ると、60年間、企業は著作権で独占的に金儲けができる。

20世紀の後半に、いろいろな学会が論文誌の発行を民間の出版社に委託した。そのとき、投稿者が出版社に無料で著作権を譲る契約を、ほとんどの学会が、出版社と結んだ。これが、今になって、困る事態を生んでいる。大学や研究所は、研究者が古い論文を電子的に読めるようにしたい。ところが、著作権法のために、論文誌を勝手に電子化することが許されない。出版社は電子的複製に高価な対価を要求する。論文を書いた人には著作権がない。

知的財産権は、知識が公共財産だという考えを否定している。せめて、発明した本人だけに、著作した(プログラムを書いた)本人だけに、知的財産権を認めるように、すべきではないか。企業に所有権を認めることは、知識の公共性と矛盾するではないか。

かように、「知財立国」とは、いかがわしいものである。

ところが、さらに悪いことに、今、トランプ大統領は、中国が知的財産権を侵害していると言い、中国からの輸入物に最大関税25%をかけようとしている。これに、日本から、非難の声が起きないのがとてもおかしい。

現行の法では、知的財産権の所有者は企業だから、知的財産権が侵害されたなら、企業がアメリカの裁判所に訴えれば良い。現在の法律の枠内で、アメリカ国内での販売を差し止めることができるし、損害賠償金を請求できる。

ところが、個別の知的財産権侵害を企業に任せず、具体的立証もせず、トランプ政権は恫喝して中国政府の言質をとろうとしている。

これは、単に次期の大統領選のためのパフォーマンスにすぎない。法で個別に解決できることに、政府がのりだすことは、自由経済を破壊することになる。新聞やテレビは、トランプ政権のルール破りを怒らないといけない。