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素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)
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口喧嘩と腕相撲、そして尖閣事件。(四)
中国観察
/
2006-07-10 03:34:59
(
「三」
の続き)
ことさらに「尖閣事件」と呼んでみたのは、日本固有の領土である尖閣諸島、その位置に基づいた日本の排他的経済水域(EEZ)内に7月2日午前、中国の海洋調査船が日本側への事前通報なしで侵入し、調査活動めいたことを行ったから。……ではありません。
日本側からみれば「中国が日本の国家主権を侵さんとする由々しき事態」ということになりますが、中共政権にとってはどうでしょう。私の頭にまず浮かんだのは「尖閣諸島の領有権アピール」ではなく、「政争」という言葉でした。
まあ政争といえるほどサマになっていない観もありますが。……「擁胡同盟」(胡錦涛擁護同盟)と「反胡連合」(反胡錦涛諸派連合)のネチネチとしたつねり合い、相手をKOするほどの実力を持たない小粒同士の中途半端な応酬、今回もその一表現とみえたので尖閣に「事件」の2文字を加えてみた次第です。
言うまでもなく、「反胡連合」による攪乱戦術です。尖閣問題で隠忍自重を強いられている(と当人たちは思っている)ことに対する鬱憤晴らし、という意味合いもあるでしょう。
――――
「口喧嘩」「腕相撲」については過去3回で脱線しつつ長々と書いてきたので多くはふれません。ざっくり言ってしまうと、中共は「まず指導理論ありき」であり、その指導理論の主導権争いを制した政治勢力が中央政府に拠って経済運営を担当します。……もちろん経済面以外の政務もあるのですが、そもそも「指導理論」自体が往々にして経済政策を主軸に据えた内容であり、現状に照らした経済政策につじつまを合わせる形で理屈をひねり出し後づけしたものも少なくありません。
要するに経済運営で失敗しなければ勝ちという訳です。失敗すれば別の指導理論を掲げる対抗勢力によって引きずり下ろされてしまいますが、逆に大過がなければ、政権運営を担当する政治勢力は党大会などで大型人事や世代交代の主導権を握ることができます。
いまでいえば「擁胡同盟」と「反胡連合」の争いということになるのですが、これは2004年9月に発足した胡錦涛政権が3カ月後にダメ出しをされて以来のものです。ここから党上層部のフニャフニャが始まります。
●分水嶺・上(2005/10/06)
当初の胡錦涛路線にはダメ出しが行われたものの、失脚させるほどの重大な失敗ではないし、仮に失脚させたくても対抗勢力にはそこまでの甲斐性がない。さらに胡錦涛に代えられるほどの手駒もいない。……ということで2004年12月以降、胡錦涛系の政治勢力と反胡錦涛諸派連合が水面下で、あるいは表立って小粒なパンチの打ち合いを続けてきました。
それなりに切迫した状況となって対立が表面化してしまったケースもなかった訳ではありません。昨春の反日騒動やそれに続く呉儀ドタキャン事件などがその典型例です。
――――
ダメ出しから約1年間、白黒のはっきりしない、意思決定の核が見えない、そのために打ち出す措置ひとつひとつに戦略性や一貫性を感じさせることの少ない状況が続きました。その状況に変化が生まれたのは、胡錦涛が軍主流派と取引を行ってからだと私はみています。
軍主流派が胡錦涛支持に回り、胡錦涛はその見返りに制服組が政治に容喙することを許す。……というような関係が成立したのではないかということです。これによって現在の「擁胡同盟」が明確に形成されたのは昨年11月中旬から12月にかけてでしょう。
●邪推満開で振り返る胡錦涛この半年・上(2006/02/04)
それ以降、胡錦涛は軍部の台頭という不安を抱えつつも「反胡連合」に対しては基本的に優勢の形を維持してきました。むろん「反胡連合」からの反撃も何度か行われたのですが、いずれも散発安打に終わり、決定的なダメージを胡錦涛に負わせるには至りませんでした。
散発安打に終始したのは、「反胡錦涛」ないしは「反中央政府」、また「上海閥」「広東閥」や「軍部の非主流派」といった様々な立場の勢力による諸派連合、つまりは寄せ集めの弱さによるものかも知れません。現時点で振り返ってみると、今年以来の「反胡連合」の動きで多少効果的だったのは、前回詳述した全国各地方当局という「諸侯」による猛ダッシュ。
「成長率は二の次。あくまでも効率重視」
という胡錦涛の指導理論(科学的発展観の徹底、調和社会の実現、社会主義栄辱観の確立)に面従腹背する形で高度成長路線を突っ走り、中央政府を驚倒させたことぐらいでしょう。ただし、これは「経済過熱による混乱」のような効果が未だはっきりと出ていない段階にあります。
――――
結局は巻き返されて有効打にならなかったものの、それなりに計画され準備され、ある程度まとまった攻勢を「反胡連合」が発動した時期もありました。胡錦涛が北京を留守にして米国・中東・アフリカツアーを行った前後、3月末から4月下旬にかけての時期です。
江沢民自らが動いて上海閥が連続技を繰り出し、一方で手駒である
「民間団体」
をしきりに活動させるなど、これはひと波乱あるかも、と私も当時かなり期待してしまいました(笑)。いや実際に大将同士の一騎討ちという緊迫した場面もあったのです。
●蠢動(2006/04/14)
●ついに激突!――胡錦涛 vs 抵抗勢力。(2006/04/29)
しかし結局は「擁胡同盟」がそのひとつひとつにしっかりと対処し、反撃の芽を摘んでいったことで攻勢は長続きすることなく終息しました。
「漢芯事件」
という不運もありましたね。デジタル家電などに使う世界的水準の半導体を独自開発したと威張っていたのが真っ赤なウソで、実は外国製の半導体に開発チームのシールを貼って、
「これです。これが『漢芯』です」
と胸を張っていたという赤っ恥事件(笑)。そのペテンをやっていたのが何と上海の大学によるもので、開発チームのリーダーに「長江学者」という意味不明の称号を贈っていた上海閥は恥の上塗り、しかもその大学がよりによって上海交通大だったので卒業生である江沢民は面子丸潰れという体たらく。
この事件、「あれは怪しい」と以前から噂されてはいましたが、公式調査の手が入ったのが「反胡連合」の攻勢を封殺するのに恰好のタイミングでしたから、あるいは不運ではなく「擁胡同盟」の逆襲だったのかも知れません。
――――
その一方で、
「民間人を原告とする対日戦時賠償訴訟(被告は日本政府か関連日本企業の在中法人)を中国国内で実現させる」
「『水滸伝』や『西遊記』といった中国の歴史的名作を日本企業に商標登録させる訳にはいかない」
といった「民間団体」の行動がいずれも尻すぼみになったのは、本来なら自称「民間」の強味やネットを生かして大衆動員型の攻勢をかけるべきところ、前年の反日騒動で「反胡連合」までが「中共人」として体制の危機を感じてしまい、すっかり懲りて禁じ手にしてしまったということもあるでしょう。
実際、ああした「民間」の動きがその後どうなったのか、続報がないので皆目不透明なままです。国内訴訟に進展はあったのか、商標登録NGは果たされたのか。……仮に進展があったり素志が果たされていたとしても、「擁胡同盟」が報道統制を敷いて「なかったこと」にしてしまった可能性もあります。
――――
……今回も香ばしく脱線しつつあるようですが(笑)、要するに今回の「尖閣事件」は中共政権にとっては主に国内問題であり、上述した様々な動き同様、「反胡連合」が繰り出したパワー不足なパンチのひとつ、ということです。ちょっとした政治的示威活動といったところでしょう。でもその対象は日本ではなく「擁胡同盟」なのです。
なるほど、日中両国は7月8日から2日間、北京で東シナ海ガス田開発に関する第6回局長級協議を開催しました。ただこの協議で中国側は相変わらず一貫して「領土紛争は棚上げして共同開発」なんてムシのいいことを主張しています。
それなのに今回の協議の直前というタイミングで、日本側への事前通告なしで海洋調査船を尖閣近海の日本側EEZに侵入させるという手荒な真似をすれば、「棚上げ」も「共同開発」もいよいよ説得力を失ってしまいます。
もしそこを日本側が衝いてくれれば胡錦涛も困るに違いないアル、とそこまで考えて「反胡連合」が事を起こしたのかどうかは知りません。それよりも「民間団体」による尖閣関連ネット署名活動が当局によって潰されたばかりです。
●どうしていま尖閣?(2006/06/13)
●尖閣問題に続報なし(2006/06/16)
●尖閣続報:民間組織の活動は断固封殺?(2006/06/20)
大方その「民間団体」の政治的保護者やフラストレーションのたまった軍非主流派など電波系対外強硬派が鉄砲玉になって憂さ晴らしを兼ねてひと騒ぎ起こした、というのが実情ではないかと。
◆国家海洋局長、領土や境界線確定などの問題で「韓国の態度に学ぶべき」と発言。(2006/04/29)
http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0604290029&cat=002CH
現役の公職担当者、しかも海洋局長という尖閣問題には関わりの深いポストにありながら、
「一切の代価と犠牲を惜しむことなく竹島を守るとした韓国の態度に中国も見習うべきだ」
と親中紙『香港文匯報』に公言してはばからない馬鹿もいます。ずいぶん度胸があるものですが、たぶん「反胡連合」系の政治的保護者を持ち、仕事柄、恐らく公私両面で尖閣問題によるストレスを鬱積させているからこういう発言が飛び出したのでしょう。
――――
念のために言っておきますが、私は「だから今回の件は大目にみてやろう」と考えている訳では断じてありません。いかに中共内部のお家騒動が原因とはいえ、日本との約束事が無視され、日本は迷惑を被っているのですから。
日本政府はこれを奇貨として、タイムリーかつ強硬に、また執拗に中国を責め抜かなければならないと思います。そう、中共風情には執拗なくらいの爽やかなあくどさ(笑)が必要です。甘やかしちゃいけません。
また国民に中共及び尖閣諸島をはじめとする領土問題について再認識してもらうように手を打つこと、そして海上保安庁や自衛隊のために関連法整備を急ぐことは言うまでもないことです。
――――
次回で必ず終わらせます。m(__)m
(
「五」
に続く)
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