日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)




 いま、香港・台湾から中国にかけての記事漁りを終えたところです。時間が時間ですから、李登輝氏の訪日に関する中国側からの新しい報道などは出ていません。今ごろ躍起になって論評記事を書いているのかも知れません。……私もサイト回りを終えて一服つけているところですので、「廃話」(無駄話)を承知でちょっと雑談することを諒として下さい。

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 それにしても、首脳会談直前の「中国はそろそろODAは卒業だよね」もそうでしたが、小泉首相、今回もまた絶妙なタイミングで隠しカードを切ったものです。
 この動きを中国側が事前に予測していたのかどうかはわかりませんが、胡錦涛にしたら、重要な外交舞台を一通りこなし終えて、台湾の選挙も緑陣営(独立志向派)が敗北してひと安心、さあやるぞ、といよいよ内政に本腰を入れて着手し始めた矢先だったのではないかと思います。そこでこの「李登輝カード」を持ち出されたんですから、たまったもんじゃありません。

 何といっても、台湾絡みなのですから、党中央軍事委員会主席としての統率に関わります。ええ軍部の掌握ということです。
 靖国問題は世論が騒ぐのでそれはそれで大変ですが、ネット上の言論統制や思想引き締め、反日サイトの強制閉鎖など、これまでやってきた、あるいは最近着手した作業を続けていけば、国民に無言の不満が高まるというリスクは伴うものの、ネット世論が騒いだり、その挙げ句に先走って政府の足を引っ張ったりすることは防げます。まあ、それだけでも胡錦涛政権には大きな痛手ですけど。

 ところが「李登輝訪日」となると、これは世論より軍部が敏感に反応する問題です。軍部が騒いだり、ひいては先走ったりしたら、それこそ一大事。そうならないよう手を打ったり日本に対応したりすることになりますが、ここで時間を浪費してしまうことが痛いでしょう。

 政権にとって最大のテーマである構造改革(※1)、それに取り組むための「強権政治・準戦時態勢」がなかなか確立できないということになります。その間にも中共の存亡にも関わる様々な対立軸は深刻の度を深めていきます。「硬着陸」(ハードランディング)になるか「軟着陸」(ソフトランディグ)になるかはわかりませんが、本来なら経済状況に即しつつ構造改革に手をつけていく心積もりだった筈です。その擦り合わせが、うまく出来なくなるかも知れないのです。

 ちなみに人民解放軍の機関紙『解放軍報』のサイトをのぞいてみたら、「李登輝へのビザ発給に断固反対」という趣旨の新華社電が早くも掲載されていました。敏感に反応している訳です。
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2004-12/16/content_89927.htm

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 実は15日の夕方に「新華網」が気になる記事を発しています。タイトルは、

「新しい歴史条件下における軍隊の思想政治建設の成功した実践」

 とでも訳すのでしょうか。長文の記事ですが、これはかの江沢民が軍のトップとして十年にわたり行ったあれやこれやを諸手を挙げて賛美する内容なんです。
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2004-12/15/content_2338078_1.htm

 唐突な上に、内容が内容です。何か動きがあるのでしょうか。同じ15日にやはり「新華網」に、中国中央軍事委員会による、

「中国人民解放軍の『中華人民共和国薬品法』実施規定」

 なるものを来年1月1日より施行する、との布告が出ています。
 http://news.xinhuanet.com/mil/2004-12/15/content_2338111.htm

 前に書きましたが中央軍事委員会は党と政府の二本立てで(※2)、これは政府による新規定公布ですから、党ではなく「中国中央軍事委員会」の仕事になります。当然ながら布告文の末尾には、

「中央軍事委員会主席 江沢民」
 
 という名前が躍っています。江沢民賛美の長文と同じ日に出されたのは、果たして故意なのか偶然なのか。先日の「胡錦涛の前に江沢民の名前が」(※2)もそうですが、何だか微妙な空気が漂っているような風でもあります。そこへ、軍部にとって座視できない「李登輝カード」を日本が切ってきた、というのですから、いかにも香港の政論誌が喜びそうな舞台設定です。

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 まあ、これから一日でどんな反応が中国側から出てくるか、期待しつつ仕事に戻ります(※3)。

 最後に一言。日本の中で、

「小泉首相が靖国参拝を止めさえすれば、日中関係は全てうまくいく」

 なんて言っていた人たちには、今回の件はいい実物教育になったのではないでしょうか。 


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 【※1】当ブログ「新華網の『新防衛大綱特集』が示すもの」(2004/12/13)
 【※2】当ブログ「やっぱりまだまだ江沢民?」(2004/12/13)
 【※3】涙目で言わせて下さい。私は第一次年末進行突入ゆえ、明日の昼まで眠ることを許されないんです。



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