何だいやれば出来るじゃないか、と珍しく日本のマスコミに拍手を送りたくなりました。時事通信です。
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●障害者への暴力が騒乱に=群衆千人、役所のガラス割る-中国南部
2004/12/09/17:01(時事通信)
【北京9日時事】中国南部の広西チワン族自治区欽州市で今月4日、道端で大道芸を披露していた身体障害者が都市管理局の役人から暴力を振るわれたのを機に、群衆と警官隊が衝突する騒ぎが起きていたことが9日分かった。目撃者の情報などを総合すると、群衆の数は1000人以上に膨れ上がったという。
欽州市公安局は時事通信に対し、暴行を受けた障害者2人が負傷して入院したことを認め、「一部の人が都市管理局事務所のガラスを割った」などと語った。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041209-00000498-jij-int
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相変わらず暴動ネタが多くてすみません(笑)。実はこの騒乱事件、最初に報じたのは反政府系ラジオ局「RFA」(自由亜洲電台)で6日に第一報(※1)、それをおなじみの反政府系ニュースサイト「大紀元」が今日未明、正確には12月9日午前3時27分に他の事件との抱き合わせで転載しました。
http://www.epochtimes.com/gb/4/12/9/n741741.htm
「大紀元」から関連部分だけを抜き出して訳してみますと、下記のようになります。
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RFAの報道によると、広西チワン族自治区欽州市で今月四日夜、身体障害者の大道芸人を当局の役人が追い払おうとしたことを発端に、市民一千名以上による暴動が発生した。
RFAによれば、事件の発端は建設監理隊の役人四名が大道芸人に立ち去るよう求めたこと。大道芸人のひとり、二十二歳の陳氏は、
「あいつら(役人)は俺たちに、交通の邪魔だし街の美観を損ねるからここで歌を歌うなと言ったんだ」
と証言。同氏によると、彼のほか二人のメンバーが足に障害を抱えており(跛者)、残るひとりは盲人だという。
事件は当局の役人らが陳氏ら四人の大道芸人に殴る蹴るの暴行を加えたことをきっかけに、怒りに燃えた民衆が続々と現場に集結。役人のひとりは、
「警備員は誰のことも殴っていない。先に手を出したのは身体障害者のミュージシャンの方だ。自分の座っていた椅子で一人の警備員の頭を殴った」
「そのあと、二百名ぐらいいた群衆が一千人以上にまで増えた。でも暴動の中で激しく暴れたのは約三百人程度だった」
と語り、自分たちには手落ちがなかったと弁明している。
RFAの報道によると、警備員がまず大道芸人たちを殴り、そのうち二人が病院に送られた直後に衝突が拡大したとしている。ある役人は、
「現場には人が溢れ返っていて、いくつかの通りが封鎖された格好になっていた。群衆がようやく解散したのは日付けの変わった午前二時だった」
と語ったという。
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見ての通り、暴動の記事にしては些かパワー不足です。というのは暴れてどうなったのか、何が壊されて何が焼かれたのか、警察との衝突はあったのか、死傷者は、逮捕者は……という肝心の部分がすっかり欠落しているからです(そのくせ無闇に長い……人のことは言えませんが)。
これに対し、時事通信の報道はその全てをカバーし切れていませんが、短い記事ながらポイントはよく押さえています。
「欽州市公安局は時事通信に対し(後略)」
とわざわざあるのは、俺が自分で取材してきたんだ、という勝ち名乗りのアピールのようなものかも知れません。でも情報を漁っている私の方はこれで助かりました。RFAの第一報やそれを転載した「大紀元」の情報に対して「ウラがとれた」からです。香港紙の方にも動きがなかったので、あるいはガセ?と考えていた矢先でした。
それにしても、
「障害者2人が負傷して入院したことを認め、……」
が秀逸ですね。「認め」ってあなた、それじゃ当局がまるで犯罪者(笑)。まあ、それだけ隠蔽体質の濃いところを相手に日々仕事をしているということでしょうねえ。苦労が偲ばれます。
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……とここで終わりにするのは何か物足りないので、お口直しに海南島のデモ&ストを。
正直、デモや暴動の記事にも慣れてしまって、重慶暴動や安徽省のお爺さんお婆さんデモ当時のような緊張感というか血が騒ぐというか、そういう一種の初々しさが自分から失われています(笑)。
まあ私は傍観者だからそれで済みますが、中央とか地方の指導者までがそういう感覚に毒されて、
「またデモ?5万人?今回は結構多いねえ。じゃあ武警1コ師投入てことで」
なんてやっていたら亡国一直線ですね。そうならないよう胡錦涛が機を捉えては往復ビンタをかまして党内や国民に活を入れている訳ですが。
でも汚職は、もうダメでしょうね。「そういう感覚」にすっかり毒されて、「官vs民」という深刻な対立軸に成り果てていますから。こっちが慣れてしまうほど起きている暴動やデモの中で、役人の腐敗に関係のないものが一体どれだけあったでしょうか。
余談が過ぎました。それでは海南島のデモ&スト、いきます。
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海南島で観光業者のスト&デモ――過当競争への無策に抗議、警察との衝突で20余名逮捕
2004/12/06(香港『太陽報』)
海南省で今月1日、行政が地元観光業界の過当競争に改善策を打ち出そうとしないことに抗議し、地元のガイド、観光バス運転手ら500名近くがストライキ及びデモ行進を行った。抗議行動は一日では終わらず、鎮圧に乗り出した警察との衝突も発生。多数の負傷者を出し、20名余りが逮捕されている。
ガイドのひとりが明らかにしたところによると、地元のガイドと観光バス運転手は固定賃金制ではなく、客が食事をしたレストランや買い物をした店からのコミッションが収入源となっている。ところが最近の観光客は財布のヒモを容易には緩めず、余計な食事や土産物で金を使ってはくれない。このためガイドや運転手は収入が大幅に減少し、旅行社へのコミッションにも自腹を切る始末(※2)。
事態を打開しようと、海南省のガイドと観光バス運転手は先月末にインターネットを通じて大規模ストを呼びかけ、これに賛同した500名近い業界関係者が1日、省都・海口市の万緑園から省政府庁舎までをデモ行進し、省長及び観光局長など当局者との対話を要求した。
ミスコン会場突入を狙う
これに対し、警察当局は実弾入りの拳銃を装備した警官多数と高圧放水の可能な鎮圧用ポンプ車を現場に配備。デモ隊は省政府当局が反応を示さないことに不満を募らせ、同日午後はさらに海口空港へとデモを行い、空港封鎖の敢行を企てた。これには省政府も腰を上げざるを得ず、省観光局、公安庁など多くの部門を横断する形で緊急対応チームを設置。デモ隊と交渉し、翌日に当局がデモ隊の代表者と再び話し合うということで決着、デモ隊は平和裡に解散した。
ところがその翌日(2日)、双方は協議を行ったものの妥結点を見出せず、デモ行進が再度市内を練り歩く騒ぎとなった。デモ隊は三亜市でちょうど開催されていたミス・インターナショナル予選会場への突入を企てたが、ここで立ちはだかった警官隊と衝突。少なくとも20名余りが逮捕され、多数の負傷者を出した。この一連の騒ぎで、ここ何日かは同地を訪れた団体ツアーがガイドも運転手もいないまま放置される事態に立ち至っている。
重慶飛揚旅行社の鄒慶総経理はこれについて、事件が海南島の観光市場に与えた影響は大きく、国内(海南省外)の旅行社の多くが海南島ツアーの販売をやめているとコメント。一方、トウ耀中・香港観光業議会総幹事は事件に関する報告は受けていないとし、香港発の海南島ツアーにも影響は出ていないとしている。
http://www.the-sun.com.hk/channels/news/20041206/20041206024822_0001.html
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こういう記事ばかり読んでいると、何だか中国全土がこのまま立ち腐れていくような気もしますね。そうなるか分裂するか、潰れるならそのどちらかなんでしょうけど。それで結局はまた列強の狩り場になるという無限ループ……になるかどうかはわかりませんが。
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【※1】http://www.rfa.org/mandarin/zhuanlan/laogongtongxun/kuaixun/2004/12/06/
【※2】訳者註・このシステムでは観光客がレストランや土産物店で消費した金額に応じて店側からガイド、運転手、旅行会社の三者にコミッションが支払われる。客がカネを使わなければ、旅行社へのコミッションはガイドや運転手らが負担することになる。
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