募集しても人が来ない、人手不足で会社が回らない―。全国的に深刻さを増す人手不足は、中北空知の企業などにも大きな影響を及ぼしている。北門信金の企業アンケート(4~6月期)では、133社中70社が人手不足を経営上の問題点に挙げた。その逆境を乗り越えようと、さまざまな取り組みを始めた中北空知の企業や農業、行政の今を取材した。
「多い日は約300人が来店する。昼は秒単位で仕事に追われます」。ミシュランガイド北海道にも掲載された奈井江町のそば店「からまつ園」。店主の佐藤正光さん(54)は厨房(ちゅうぼう)で額の汗をぬぐった。店を切り盛りする上で欠かせないのが従業員。店では今、11人が働くが、このうち季節限定も含め4人が障害者だ。
■健常者と同じ働き
からまつ園が障害者を採用したのは7年前。佐藤さんは以前、からまつ園の支店があった道の駅の喫茶店で、てきぱきと働く障害者の姿を見ていた。「若い人が足りない本店で働いてもらえないか」。そう考えた佐藤さんは初めて障害者の雇用に踏み切った。「最初は補助要員のつもりだった」という佐藤さんはやがて、見方を大きく変える。
同店で働く障害者のうち、昨春採用した男性(21)は最初、そばをこねる作業に挑戦したがうまくいかなかった。ところが丼や小皿など注文によって約50種類以上の組み合わせがある配膳の仕事を教えると、あっという間に覚え、記憶力は抜群だった。
今春、従業員に欠員が生じ人手不足のピンチに見舞われた際には、この男性が勤務時間を2倍の週5、6日で計約20時間に増やし、難局を乗り切った。男性の働きは健常者と変わらないため時給も同水準。収入は以前働いていた障害者施設の作業所時代の約10倍になった。佐藤さんは言う。「仕事をこなせるよう、それぞれの適性を見つけるのが障害者に働いてもらう鍵。店の貴重な戦力です」
■1割に満たぬ就労
障害者雇用促進法は行政や企業に障害者を雇用する割合を定めている。企業の雇用率は2・2%としているものの、対象は従業員45・5人以上。小規模の企業などでは雇用が進んでいないのが実態だ。
社会福祉法人ないえ福祉会の石川健吾統括管理者は、規模が小さい企業は採用に二の足を踏むケースが多いとし、「就職しても、仕事が合わず5分の1が離職している」と言う。障害者に職業紹介などを行う空知しょうがい者就業・生活支援センター(美唄)には2017年度、企業就労を目指して304人が登録していた。そのうち就労に結びついたのは1割未満にとどまる。
同センターを運営する爽やかネットワーク(同)のマネジャー鈴木正和さん(45)は「障害者に合わない業務量や内容だったり、遠隔地で通えなかったり希望がマッチしないケースが多い。企業側の要望と障害者の適性を見極め、働き方や環境の整備、相互理解を進めることが不可欠だ」と指摘する。
中空知の商工会議所関係者も「どんな仕事ができて、どんな働き方が合うのか、障害者側からも積極的に伝えてもらうことで雇用が進むかもしれない」と企業側の見方を示した。