障害者雇用水増し問題を巡り、二〇一七年度に知事部局と教育委員会のいずれかで不適切計上が判明した三十八県のうち三重、愛媛など七県が職員への処分を実施したか処分する方向で検討していることが二十四日、共同通信の調査で分かった。
「県民の信頼を失墜させた」(愛媛)「民間と比較して問題のある対応だった」(茨城)などが理由。障害者雇用促進の旗振り役であるはずの中央省庁は、関係者の処分に軒並み否定的な考えを示しており、国と地方自治体で対応に差が出た。
知事部局で処分や処分方針を発表したのは、当時の総務部長ら五人を注意処分した三重と、副知事ら五十八人を厳重注意や訓告とした愛媛のほか、茨城、高知、長崎の五県。山形、千葉の二県は処分する方向で検討している。三重は一七年度に水増しはなかったが、過去のミスを理由に処分し、鈴木英敬(えいけい)知事自身も減給処分にすると表明している。
一方、中央省庁では「意図的ではなかった」などとして、不適切計上が最も多かった国税庁のほか、国土交通省や法務省などが処分を見送る方針を示している。制度を所管する厚生労働省も同様で、処分する方針を明らかにしている例はない。
七県以外の知事部局では青森、岡山、沖縄など十一県が「処分しない」または「処分を検討してない」と回答。群馬、長野、熊本など十県は「検討中」か「未定」だった。
処分の是非の判断理由については「ずさんな対応だった」(高知)「不適切な行為で重く受け止めた」(長崎)などとした県があるのに対し、処分を見送る県では「組織全体の問題だ」(福島)「制度の理解不足が原因で意図的ではない」(富山)などとする回答が多かった。
教育委員会では三十四県で水増しがあったが、処分済みか処分方針を発表したのは茨城、三重、愛媛、長崎の四県。「処分しない」または「処分を検討していない」は新潟など十四県教委で、「検討中」や「未定」は埼玉など十六県教委だった。
<障害者雇用水増し問題> 中央省庁が職員に占める障害者の割合を計算する際、本来は対象外の人を障害者に加えていた問題。法律で定められた雇用率を達成していたように見せ掛けており、8月に発覚した。弁護士らによる政府の検証委員会の調査では、国の指針に反する不適切な算入は、昨年6月時点で3700人に上り、退職者や死者を障害者の数に加えていたケースもあった。全国の自治体でも、約3800人の不適切算入があったことが厚生労働省の調査で判明した。
2018年11月25日 東京新聞