延べ5000人受講生活の質向上も
障害者を対象とした佐賀県のICT教室が、今年で開設10年を迎えた。委託を受けた佐賀市のNPO法人が運営し、これまでに延べ約5000人が受講。文書作成や表計算ソフト、インターネットの使い方などをボランティアの講師から学び、生活の質を向上させたり、社会参加への意欲を高めることにつなげている。
事業は2005年度に始まり、NPO法人「市民生活支援センターふくしの家」が運営する佐賀市鍋島の県障害者ICTサポートセンター「ゆめくれよん+(プラス)」を拠点に、県内各地で受講料無料の教室を開催。ボランティアが指導を担い、入所する施設や自宅でも受講できる。事業に関わったボランティアは10年で約1000人に上る。
受講者はワードやエクセルなどのソフトで文字入力、グラフの作成などに取り組むほか、メールでのやり取り、ネット通販、タブレット端末を使ったテレビ電話なども体験する。聴覚障害者の指導は手話のできるボランティアが担い、視覚障害者は音声読み上げソフトを使うなど障害に応じてICT機器に触れることができる。
4年前に脳出血で倒れ、右半身がまひした小城市の女性(51)は受講して約半年。「最初は片手でできるだろうかと不安もあったけど、あきらめずに続けるうち、もっと学びたくなった。病気の後、出て行く場所がなかったが、ここでは受講生や先生とのつながりを感じながら“心のリハビリ”もできている」と話す。
教室は社会参加の促進などが目的だが、学ぶうちに意欲が出て、最終的に就労へとつなげた人もいる。同センターのコーディネーター廣瀬真隆さん(27)は「(ICT機器を)操作できないと思い込んでいる人たちへの啓発に力を入れていきたい。職業訓練の入り口として活用するなど、自分の可能性を広げる一歩になれば」と話す。
開設10年を迎えた障害者対象のICT教室。ボランティアの指導で文字入力、グラフ作成、インターネットの使い方などを学ぶ=佐賀市鍋島の県障害者ICTサポートセンター「ゆめくれよん+」
2015年08月05日 佐賀新聞