障害者の就労継続支援のための福祉施設「スクラム」(市川市宝)を運営しているNPO法人が5月、施設内に古本屋「古書肆こしょしスクラム」をオープンさせる。これまでの内職中心の仕事だけでなく、古本屋の経営を通して収益を増やし、通所者の工賃アップにつなげることが目的。気軽に訪れられる古本屋を目指し、地域住民と一体となった自立支援を目指す。
今月10日、施設では、9人の男女が大きなテーブルを囲んで作業に集中していた。透明な袋に雑誌用の付録を詰める作業は、これまでも行われてきたが、古本屋オープンへ向け、アルコールを付けた布で古本を拭く姿もあった。単調な作業だが、全員が一心不乱に取り組み、時折笑顔で職員と話していた。
NPO法人「スクラム」は2012年1月に発足。障害者の就労継続支援B型事業所として法人名と同じ施設をオープンさせた。定員20人に対し、市内在住者を中心に10~60歳代の知的障害、精神障害を持つ男女16人が通っている。月刊誌の付録の袋詰めやパンフレットへのチラシ折り込みなどの内職を中心に収入源を提供し、障害者を受け入れてきた。しかし、予算をやりくりしても支払える工賃は1か月1万円程度にとどまっているという。
古本屋の新計画は、砂金一平さん(39)が今年1月、同NPOの職員になったことがきっかけで持ち上がった。砂金さんは、東京都内で古本を通した街づくりに取り組んだ経験があった。施設の一角での営業を目指し、翌2月から準備が始まった。
住宅街の中にある立地を生かし、近隣住民や近くの公園で子どもを遊ばせる母親が休憩で立ち寄ることを想定し、入り口にテーブルや椅子を設置。通所者と交流することで、障害への理解を深めてもらう計画も練っており、砂金さんは「誰でも気軽に立ち寄れる場所にしたい」と語る。
通所者は、本の出張買い取り、本の汚れ落とし、接客、書名のデータベース構築などを職員の助けを受けながら行う。人との触れ合いでコミュニケーション力など仕事に必要な能力アップも期待できるという。
本買い取りは既に始めており、砂金さんは「『かわいそう』と思われずに、『あそこで本を買いたい』と思ってもらえる店にしたい」と意気込んでいる。
◇就労継続支援
障害者総合支援法に基づき、企業などでの一般就労が難しい障害者が、福祉施設に通い、職員から支援や指導を受けながら働く。雇用契約を結び最低賃金が保証されるA型と、A型事業所に入ることが難しい障害者が雇用契約を結ばずに通うB型がある。