人気拡大が著しい市民マラソン大会。その陰で、障害者の参加は安全確保の点で門戸が狭いのが現状だ。応援者を含めてさまざまな思いや境遇を共有できる市民マラソンに、障害者の入る余地はないのだろうか。県内の障害者や支援者は複雑な思いで見つめている。(岡本幸浩)
「障害者でも気楽に市民マラソン大会に参加できたら素晴らしいが、現実は違う。多くの障害者には遠い存在だ」。県障害者福祉団体連合会常務理事で車いす卓球選手の竹田勉さん(55)は、残念そうに説明する。
●長時間完走に配慮
ランニングは最も気軽に取り組めるスポーツの一つで、市民大会は参加の敷居が低いのが魅力。だが障害者20+ 件は別で、大半は視覚障害者に伴走が認められている以外は自力で走る必要がある。車いす部門を設けた大会もあるが、多くはエリートランナー向け。約1万人が出場する県内最大の熊本市の熊本城マラソンも、車いすでの出場や盲導犬の伴走は認めていない。
出場を阻む最大の理由は安全管理上の点。特に車いすは転倒や一般ランナーとの接触の危険から「運営に支障が出かねない」と熊本城大会事務局。竹田さんも「一般の車いすは段差に弱い」と認める。10キロの部に車いすや知的障害者などの部門を設けている東京マラソン事務局は「伴走者の確保を含め受け入れに大変な面はある」と話す。
海外では、アメリカのニューヨークシティやボストン、ホノルルの各大会で車いす部門があり、長時間かかっても完走が可能なように一般ランナーより早くスタートできる配慮も。専門誌「ランナーズ」の発行元の橋本治朗社長(65)は「障害があっても挑戦する姿に感動するスポーツの奥深さへの理解が、日本は乏しい」とみる。
●理解広がる機会に
日本では近年、障害の有無に関係なく等しい社会を目指す「ノーマライゼーション」の理念が広がっている。ただ障害者のスポーツ大会は、障害のない人と別に行われることがほとんど。それだけに、多くの人が参加する市民マラソン大会で理念が取り入れられることは「障害者への理解が広がる絶好の機会」と、車いすマラソンの草分けで活躍した山本行文さん(58)=熊本機能病院顧問=は期待を寄せる。
県内の2011年度の身体、知的、精神の各障害者は合計約12万4700人。身体障害者で、肢体不自由な人だけでも約4万8200人だ。県障害者スポーツ・文化協会スタッフで、陸上やテニスの指導で障害者を支援する中尾直道さん(61)は「障害者はスポーツをするための移動だけでも大きなハンディ。障害のない人はそうした状況を知り、もっと障害者2に寄り添う姿勢が社会に必要ではないか」と訴える。

安全管理の点で市民マラソン大会は障害者への門戸が狭く、スポーツ大会は障害者だけで行われることがほとんど。写真は今年10月6日、菊陽町で行われた「くまもと車いすふれあいジョギング大会」
熊本日日新聞- 2012年11月20日
「障害者でも気楽に市民マラソン大会に参加できたら素晴らしいが、現実は違う。多くの障害者には遠い存在だ」。県障害者福祉団体連合会常務理事で車いす卓球選手の竹田勉さん(55)は、残念そうに説明する。
●長時間完走に配慮
ランニングは最も気軽に取り組めるスポーツの一つで、市民大会は参加の敷居が低いのが魅力。だが障害者20+ 件は別で、大半は視覚障害者に伴走が認められている以外は自力で走る必要がある。車いす部門を設けた大会もあるが、多くはエリートランナー向け。約1万人が出場する県内最大の熊本市の熊本城マラソンも、車いすでの出場や盲導犬の伴走は認めていない。
出場を阻む最大の理由は安全管理上の点。特に車いすは転倒や一般ランナーとの接触の危険から「運営に支障が出かねない」と熊本城大会事務局。竹田さんも「一般の車いすは段差に弱い」と認める。10キロの部に車いすや知的障害者などの部門を設けている東京マラソン事務局は「伴走者の確保を含め受け入れに大変な面はある」と話す。
海外では、アメリカのニューヨークシティやボストン、ホノルルの各大会で車いす部門があり、長時間かかっても完走が可能なように一般ランナーより早くスタートできる配慮も。専門誌「ランナーズ」の発行元の橋本治朗社長(65)は「障害があっても挑戦する姿に感動するスポーツの奥深さへの理解が、日本は乏しい」とみる。
●理解広がる機会に
日本では近年、障害の有無に関係なく等しい社会を目指す「ノーマライゼーション」の理念が広がっている。ただ障害者のスポーツ大会は、障害のない人と別に行われることがほとんど。それだけに、多くの人が参加する市民マラソン大会で理念が取り入れられることは「障害者への理解が広がる絶好の機会」と、車いすマラソンの草分けで活躍した山本行文さん(58)=熊本機能病院顧問=は期待を寄せる。
県内の2011年度の身体、知的、精神の各障害者は合計約12万4700人。身体障害者で、肢体不自由な人だけでも約4万8200人だ。県障害者スポーツ・文化協会スタッフで、陸上やテニスの指導で障害者を支援する中尾直道さん(61)は「障害者はスポーツをするための移動だけでも大きなハンディ。障害のない人はそうした状況を知り、もっと障害者2に寄り添う姿勢が社会に必要ではないか」と訴える。

安全管理の点で市民マラソン大会は障害者への門戸が狭く、スポーツ大会は障害者だけで行われることがほとんど。写真は今年10月6日、菊陽町で行われた「くまもと車いすふれあいジョギング大会」
熊本日日新聞- 2012年11月20日