月額980円で定額データ通信が行えるという、これまでなかった新たな製品「イオン専用b-mobileSIM」が登場。導入における注意点と実際の使い勝手をじっくり検証する。
イオン店舗で販売、導入しやすい新スタイル
ショッピングセンターでデータ通信サービス用SIMを販売するという、国内においては前例のないデータ通信サービス「b-mobileSIM[イオン専用]」が登場した。その新たな販売形態以外に、3種類の定額制データ通信プランを用意し、そのうちの1つは月額980円と大変安価に定額データ通信の環境を入手できる価格帯が話題となっている。
•日本通信、月額980円から利用できるイオン限定のb-mobile SIMを発売
今回はその月額980円プランを契約し、1カ月ほど使用してみて分かった注意点、そして実際の使い勝手をじっくり検証しよう。
b-mobileSIM[イオン専用]は、b-mobileシリーズを提供する通信事業者である日本通信と本州、四国圏で大型商業店舗「イオン」を展開するイオンリテール(流通大手 イオングループの1社)の協業で販売される商品だ。販売、契約はイオン店舗内の携帯電話販売スペースで行い、サービスとサポートは日本通信が行うスタイルになる。
日本通信の製品は「b-mobileSIM U300」が店頭で購入できる例は最近増えているが、基本は大都市部の大手家電量販店が中心だ。対して、各地に店舗があり、客層も幅広いイオンと協業することで店頭での販売販路を大きく拡大できる点、つまりユーザーはこれまでより手軽に購入できるようになるのがメリットの1つだろう。イオンにとっては競合他社に対して差別化できる低料金データ通信サービスを提供できるメリットがある。今後、3Gモジュール内蔵の個人向け機器(例えばスマートフォンやタブレットデバイス、携帯ゲーム機など)が増えてくれば、さらに魅力的なパッケージ販売も可能になるといったメリットも想定できる。
販売は、まず2011年6月10日にイオン14店舗で開始された。当初は販売店舗がかなり限られていたが、6月18日以降に取扱い店舗をグッと拡大。7月15日時点で計105店舗で販売されるようになり、北は青森、西は広島・高知まで取扱店エリアが拡大された。
ちなみに北海道地区はイオン北海道、九州地区はイオン九州、沖縄地区はイオン琉球がそれぞれイオン店舗の運営会社でイオングループ企業だが、今回日本通信との協業はあくまで本州、四国で店舗展開を行うイオンリテールである。そのため、現時点では販売店舗の地域が一部制限されているようだ
サービスエリアは前述したb-mobileSIMシリーズなどと同様に、人口カバー率100%のNTTドコモFOMAネットワークと同じである。最大通信速度別に月単位で対価を支払う、ごくシンプルな料金体系となっており、主要通信事業者によるデータ通信サービスで見かける複雑でかなり分かりにくい料金プランではなく、約2年の長期契約をする必要もない。解約時の違約金などももちろん存在しない。
契約には身分証明書とクレジットカードが必要
b-mobileSIM[イオン専用]は、基本的に携帯電話を新規契約する場合と同じで身分証明書の掲示が必要で、原則20歳以上でないと契約できない。身分証明書には運転免許証、健康保険証、日本国パスポート、身体障害者10 件手帳、療育手帳、外国人登録証明書、精神障害者保険福祉手帳などが利用可能。加えて料金支払い用のクレジットカードが必要だ(現金では支払えない)。
契約時には、SIMパッケージ料金として3150円も発生する。これは一般携帯電話の契約事務手数料に相当するもの。この3150円を料金支払い用として登録するクレジットカードで決済することにより、信用照会を兼ねている。ちなみに、この3150円は「イオンで何かを購入した」という扱いだったので「*円以上のお買い物で駐車場*時間無料」なサービスも受けられた。
商品は料金プランのタイプA、B、Cが別々に準備されており、少なくとも購入から1カ月は購入時の料金プランで利用することになる。毎月の料金計算は契約日起算となり、日割りは発生しない。例えば筆者は6月11日に契約したので、料金は11日~翌月10日の間隔で算出される。
解約時も残利用期間に応じた日割りは発生しない。ただ、この契約期間の1カ月単位で料金プランは自由に変更できる。料金プランの変更は、日本通信側でユーザー登録が完了すると同社サービスサイト「My b-mobile」で行える。
店頭で書類に必要事項を記入して審査が行われ、SIMパッケージ料金のクレジットカード支払いを終えればすぐ利用可能な状態となったSIMカードが受け取れる。ほかのb-mobile商品のような少し面倒なアクティベーション作業は不要だ。契約に要した時間は15分ほどだった。
改めて、契約についてまとめよう。
•契約に必要な条件は、契約者が20才以上
•身分証明書の提示が必要
•クレジットカードでの月額料金支払いが必須
•契約時に、SIMパッケージ代となる3150円が必要(クレジットカード払いのみ)
•契約日を起算日とし、月契約期間の算出期間が決まる
•利用期間は原則1カ月単位。契約時・解約時ともに日割りは発生しない
•料金プランは、契約期間の1カ月単位で自由に変更可能
•(長期契約ではないため)解約時に違約金などは発生しない
という感じである。
使い始めはU300と同じ、画像圧縮サービスは強制適用
本製品はNTTドコモ、あるいはSIMロックフリーのW-CDMA(3G)対応スマートフォン、携帯電話、データ通信端末などで利用できる。
ただし「音声通話はできない」(機能を持たない)ことから、一部のスマートフォンではデータ通信は行えるもののアンテナバーが圏外表示になったり、利用できない端末もある。動作確認済みの機器は日本通信のWebサイトで公開されているので参考願いたい。
使い始めは、APN(Access Point Name:該当SIMカードでデータ通信を行うための通信設定項目)の設定を行う(設定方法は機種それぞれで異なるので、自身が所有する機器のマニュアルなどを参照願いたい)。
こちらはb-mobileSIM U300などと設定内容はほぼ同じ。異なるのはユーザー名が本SIMカード用の文字列に変わっているくらいだ(ただ、U300と同じ設定でも利用できてしまった。当然、通信速度などに変化はなかった)。
データ通信は、日本通信が発売する標準パッケージの「b-mobileSIM U300」や「b-mobile Fair」などでは任意で利用する、画像圧縮サービスが自動的に適用される。
•“公平”なプリペイドSIM──「b-mobile Fair」は本当に速度制限なし?
画像圧縮サービスは、通信データ量を減らす目的でWebサイトの画像を圧縮する機能である。Webサイトの静止画は圧縮されることで原則として画質が劣化することになる。画面サイズが4型前後のスマートフォンであればそれほど気にはならないのだが、それより画面サイズが大きいタブレットやPCで見ると劣化具合が判別できる感じになる。
なお、今回はあくまでタイプAで検証した結果だが、日本通信によると、より高速に通信できるタイプB、タイプCでも同様に画像圧縮サービスが強制適用となるようだ。こちらは、特にMbpsクラスの速度となるタイプCだとPCでの普通のデータ通信用として利用する層も多いだろうから、常時画像圧縮されてしまうのはちょっと……と思う人は多いかもしれない。
最大100kbpsのタイプAでも、メール、Twitter、経路・路線案内検索なら十分に使える
では実際にスマートフォンで使うとどうだろう。今回はb-mobileSIM[イオン専用]の利用が可能とうたわれているNTTドコモの「Xperia(SO-01B)」、日本通信「IDEOS」で利用してみた。
最大100kbpsのタイプAが想定するのは、メール、Twitterなど、文字情報の送受信を中心とした使い方だ。これらであれば遅さはほとんど気にならない。場合により乗換案内など、比較的データ送受信量が少ないアプリケーションもそこそこ普通に利用できる。
なお、Twitterで写真投稿をする機会の多い人は、送信をバックグラウンドで行える仕様のアプリケーションを選ぶとよいだろう。Androidだと純正Twitterアプリケーションがこれにあたる。それができないものだと、送信に時間がかかるのでストレスの元になるかもしれない。
一方、比較的データ通信量が多めのマップ(Google Mapアプリ)も、V5以降では地図がビットマップからベクター方式に変更され、データ量が小さくなったこともあり、最大通信速度から想像するより実用的だった。さすがに地図データのキャッシュをクリアして使い始めると、まったく地図データがキャッシュされていない場所で1画面分の地図の読み込みに1分以上待たされるのだが、現在地の地図を読み込んだ状態からの徒歩での経路案内程度の利用であれば、遅さはそれほど感じずに済む。このあたりはユーザーがどう運用するかの問題で、無線LANなど高速な通信環境で利用している時に普段よく地図表示するような場所を表示してキャッシュさせるよう心がければよく、単に使い続けるだけでも次回以降はキャッシュの効果で快適になるわけだ。
Webページの表示も、思ったよりは実用的だった。ここ数年で主要サイトのスマートフォン対応が進んでいることもあり、レイアウトを簡略化し、データ総量も少な目になっているスマートフォン向けページなら普通に読み進められる。さすがにPC向けのサイトだとやや待たされる感は強くなるが、画像圧縮の効果もあるのか、最大100kbpsでも使い物にならないほどの遅さではない。
ちょっとした例外は、https://~で始まる通信が暗号化されたサイトだ。同プロトコルを用いるサイトは画像圧縮が行われないので、サイトによってはそこそこの我慢が必要である。例えば決済・通販系のサービスは当然暗号化通信になるので、そのサービスがPC向けのページしか用意していなければ遅くてもだえてしまう。ま、もっとも月額980円と思えば納得してもよいレベルではある。
•SIMロックフリー時代の無線LANルータ「b-mobile WiFi」利用ガイド
次はポータブル無線LANルータ「b-mobile WiFi」にb-mobileSIM[イオン専用]を装着し、PCでデータ通信を行った。
まずはTwitterや電子メール送受信といったテキスト中心のものはスマートフォンの場合と同様にデータ量がそれほど多くないため、十分実用的だ。ただ、Webメールサービスについては、利便性の向上を理由に昨今リッチコンテンツ化している場合も増えているので少し注意が必要だ。例えばGmailは、標準HTML表示のモードだと一覧表示するにもかなり待たされ、簡易HTML表示モードをお勧めされてしまう始末だった(もっとも、簡易HTML表示モードにすればほぼストレスなく利用できる)。
Webサイトの表示も、最大100kbpsなりに想像よりは使える。一例として、ブラウザのキャッシュを全削除してからPC USERのTOPページを表示すると表示完了までに40~50秒、ある程度キャッシュが有効な状態なら10秒もあれば閲覧可能なレベルまで表示される。当サイトは画像がそこそこ多いので、画像圧縮の効果も大きいのだろう。
これを遅すぎるとするか、許せるとするかは、利用環境や急いでいるとき、あるいはそのときの心理状況などを含めてシーン別・時間帯別それぞれで個人差があると思う。同じ場所でWiMAXに切り替えて通信すると瞬間に表示されるWebサイトでも、基本的には表示に5~10秒かかる。しかし、通信手段がまったくない場合と比べれば、通信できることこそに意味があるわけだ。
実際の通信速度はどのくらいか
では最大100kbpsまでとするタイプAは、実際にどのくらいの通信速度が出ているのか。
まずはXperiaに装着して「SPEEDTEST.NET」サイトで場所、時間帯を特に考慮せずにいろいろな場所で通信速度を計測したところ、下りはおおむね90kbps前後、上りは少しばらつきがあるものの平均80kbps前後と記録されていた。こちらは最大100kbpとするなら悪くない値だと思う。もちろん絶対速度は遅いが、すでに1カ月以上スマートフォンでTwitter、メール送受信、Webでの情報検索や乗換案内など、日常的にスマートフォンで操作するサービスを利用する範囲では、遅すぎてガマンならないという状況にならなかったことは付け加えておく。
b-mobile WiFi経由のPCで速度を計測すると、計測サイトによってかなりバラつきが見られた。おおむねピーク速度の値が反映される「speed.rbbtoday.com」サイトでは下り速度で100kbps以上、上りは70kbps台とXperiaでの計測に近い結果になった。一方、平均速度が反映される「Radish Network Speed Testing」サイトは下りが40kbps前後、上りが60kbps前後という値と、やや辛口な計測結果だった。もっとも、実際に速度計測サイトのようなバースト転送時は徐々に通信速度を絞り込んで100kbps内に通信速度を抑えこむように帯域を制御する仕組みになっているので、このような結果になってもおかしくはない
画像圧縮の効果は、画像転送での計測が行える「BNRスピードテスト」の画像版を使用した。ここでは500k~600kbps相当という値になり、画像圧縮がなかなか有効であることが伺える。もちろん画質の劣化というトレードオフがともなうのだが、結果的に最大100kbpsとする通信速度で実用的なWebアクセスが可能になるなら、それも悪くない。また、日本通信とNTTドコモ間のデータ通信量の削減にも貢献するので、月額980円というすばらしい低料金の実現と継続に必須な機能と考えてほしい。
安いだけじゃない、使い分けられる完全定額という新たな選択
本製品は、やはり安価な月額980円のタイプAが初回としては購入しやすい。いくらか用途を割りきるのならば、そのコストパフォーマンスはこれまでのデータ通信サービスより格段によい。
それゆえ、契約時のSIMパッケージ料金の3150円がちょっと高く感じるのだが……これは物理的なSIMカードの代金が含まれるし、どの通信事業者でも契約時には3000円前後の契約手数料が発生する。もちろん中には契約手数料を無料化する例はあるが、これは長期利用契約が前提の場合がほとんどであり、契約後の利用料金で実質的に回収が可能だからである。利用期間の縛りがない本製品ではちょっと無理な相談と考えたい。
本製品はもう1点、3種類の完全定額プランを使い分けられる点も既存のデータ通信サービスにはなかった大きなポイントである。
あくまで月単位(正確には料金計算月単位)で、事前にプランの切り替え作業が必要だが、普段はスマートフォン中心で使うのでタイプAにして、旅行や帰省でPCでのインターネット接続を高速で利用したい時はタイプCにする、というように料金プランを状況に応じて切り替えられる。
こちらに関して1つ要望を。この完全定額の使い分けをより有効に活用したいという意味で、日本通信には最大通信速度の高速なプランへの切り替えを、“即”行えるよう改訂してほしいと強く思う。なぜなら、急な出張や旅行、業務などでプランAやプランBから、すぐにプランCに切り替えて使いたいという需要はかなり多そうと思うためだ。この場合、常時プランCで利用する人はやや減ってしまう心配はあるが、普段はプランA、Bで十分な人が、臨時でプランCで利用する機会が増えることで相殺……という考え方は難しいだろうか(逆に高速→低速プランへはこのこともふまえて、そのまま月単位でよいと思う)。
ともあれb-mobileSIM[イオン専用]は、どの料金プランでも異なるのは上限通信速度だけであり、データ通信総量は気にせず定額利用できる点が非常に喜ばしい。他通信事業者のデータ通信用2段階定額プランは、まったく使わなければ安価だが、少しでも使えばすぐ上限の金額に達してしまうのが現状。本製品のように柔軟な使い分けは非常に難しいのだ。
この点で、各地にあるイオン店舗での販売で訴求可能なユーザーをグワッと拡大させつつ、これまでのデータ通信/モバイル上級者も「これだよ」と思わせる実力と可能性がある。ユーザーの“カユイ”ところを絶妙にツンツン付いてくれる製品である。
ITmedia
イオン店舗で販売、導入しやすい新スタイル
ショッピングセンターでデータ通信サービス用SIMを販売するという、国内においては前例のないデータ通信サービス「b-mobileSIM[イオン専用]」が登場した。その新たな販売形態以外に、3種類の定額制データ通信プランを用意し、そのうちの1つは月額980円と大変安価に定額データ通信の環境を入手できる価格帯が話題となっている。
•日本通信、月額980円から利用できるイオン限定のb-mobile SIMを発売
今回はその月額980円プランを契約し、1カ月ほど使用してみて分かった注意点、そして実際の使い勝手をじっくり検証しよう。
b-mobileSIM[イオン専用]は、b-mobileシリーズを提供する通信事業者である日本通信と本州、四国圏で大型商業店舗「イオン」を展開するイオンリテール(流通大手 イオングループの1社)の協業で販売される商品だ。販売、契約はイオン店舗内の携帯電話販売スペースで行い、サービスとサポートは日本通信が行うスタイルになる。
日本通信の製品は「b-mobileSIM U300」が店頭で購入できる例は最近増えているが、基本は大都市部の大手家電量販店が中心だ。対して、各地に店舗があり、客層も幅広いイオンと協業することで店頭での販売販路を大きく拡大できる点、つまりユーザーはこれまでより手軽に購入できるようになるのがメリットの1つだろう。イオンにとっては競合他社に対して差別化できる低料金データ通信サービスを提供できるメリットがある。今後、3Gモジュール内蔵の個人向け機器(例えばスマートフォンやタブレットデバイス、携帯ゲーム機など)が増えてくれば、さらに魅力的なパッケージ販売も可能になるといったメリットも想定できる。
販売は、まず2011年6月10日にイオン14店舗で開始された。当初は販売店舗がかなり限られていたが、6月18日以降に取扱い店舗をグッと拡大。7月15日時点で計105店舗で販売されるようになり、北は青森、西は広島・高知まで取扱店エリアが拡大された。
ちなみに北海道地区はイオン北海道、九州地区はイオン九州、沖縄地区はイオン琉球がそれぞれイオン店舗の運営会社でイオングループ企業だが、今回日本通信との協業はあくまで本州、四国で店舗展開を行うイオンリテールである。そのため、現時点では販売店舗の地域が一部制限されているようだ
サービスエリアは前述したb-mobileSIMシリーズなどと同様に、人口カバー率100%のNTTドコモFOMAネットワークと同じである。最大通信速度別に月単位で対価を支払う、ごくシンプルな料金体系となっており、主要通信事業者によるデータ通信サービスで見かける複雑でかなり分かりにくい料金プランではなく、約2年の長期契約をする必要もない。解約時の違約金などももちろん存在しない。
契約には身分証明書とクレジットカードが必要
b-mobileSIM[イオン専用]は、基本的に携帯電話を新規契約する場合と同じで身分証明書の掲示が必要で、原則20歳以上でないと契約できない。身分証明書には運転免許証、健康保険証、日本国パスポート、身体障害者10 件手帳、療育手帳、外国人登録証明書、精神障害者保険福祉手帳などが利用可能。加えて料金支払い用のクレジットカードが必要だ(現金では支払えない)。
契約時には、SIMパッケージ料金として3150円も発生する。これは一般携帯電話の契約事務手数料に相当するもの。この3150円を料金支払い用として登録するクレジットカードで決済することにより、信用照会を兼ねている。ちなみに、この3150円は「イオンで何かを購入した」という扱いだったので「*円以上のお買い物で駐車場*時間無料」なサービスも受けられた。
商品は料金プランのタイプA、B、Cが別々に準備されており、少なくとも購入から1カ月は購入時の料金プランで利用することになる。毎月の料金計算は契約日起算となり、日割りは発生しない。例えば筆者は6月11日に契約したので、料金は11日~翌月10日の間隔で算出される。
解約時も残利用期間に応じた日割りは発生しない。ただ、この契約期間の1カ月単位で料金プランは自由に変更できる。料金プランの変更は、日本通信側でユーザー登録が完了すると同社サービスサイト「My b-mobile」で行える。
店頭で書類に必要事項を記入して審査が行われ、SIMパッケージ料金のクレジットカード支払いを終えればすぐ利用可能な状態となったSIMカードが受け取れる。ほかのb-mobile商品のような少し面倒なアクティベーション作業は不要だ。契約に要した時間は15分ほどだった。
改めて、契約についてまとめよう。
•契約に必要な条件は、契約者が20才以上
•身分証明書の提示が必要
•クレジットカードでの月額料金支払いが必須
•契約時に、SIMパッケージ代となる3150円が必要(クレジットカード払いのみ)
•契約日を起算日とし、月契約期間の算出期間が決まる
•利用期間は原則1カ月単位。契約時・解約時ともに日割りは発生しない
•料金プランは、契約期間の1カ月単位で自由に変更可能
•(長期契約ではないため)解約時に違約金などは発生しない
という感じである。
使い始めはU300と同じ、画像圧縮サービスは強制適用
本製品はNTTドコモ、あるいはSIMロックフリーのW-CDMA(3G)対応スマートフォン、携帯電話、データ通信端末などで利用できる。
ただし「音声通話はできない」(機能を持たない)ことから、一部のスマートフォンではデータ通信は行えるもののアンテナバーが圏外表示になったり、利用できない端末もある。動作確認済みの機器は日本通信のWebサイトで公開されているので参考願いたい。
使い始めは、APN(Access Point Name:該当SIMカードでデータ通信を行うための通信設定項目)の設定を行う(設定方法は機種それぞれで異なるので、自身が所有する機器のマニュアルなどを参照願いたい)。
こちらはb-mobileSIM U300などと設定内容はほぼ同じ。異なるのはユーザー名が本SIMカード用の文字列に変わっているくらいだ(ただ、U300と同じ設定でも利用できてしまった。当然、通信速度などに変化はなかった)。
データ通信は、日本通信が発売する標準パッケージの「b-mobileSIM U300」や「b-mobile Fair」などでは任意で利用する、画像圧縮サービスが自動的に適用される。
•“公平”なプリペイドSIM──「b-mobile Fair」は本当に速度制限なし?
画像圧縮サービスは、通信データ量を減らす目的でWebサイトの画像を圧縮する機能である。Webサイトの静止画は圧縮されることで原則として画質が劣化することになる。画面サイズが4型前後のスマートフォンであればそれほど気にはならないのだが、それより画面サイズが大きいタブレットやPCで見ると劣化具合が判別できる感じになる。
なお、今回はあくまでタイプAで検証した結果だが、日本通信によると、より高速に通信できるタイプB、タイプCでも同様に画像圧縮サービスが強制適用となるようだ。こちらは、特にMbpsクラスの速度となるタイプCだとPCでの普通のデータ通信用として利用する層も多いだろうから、常時画像圧縮されてしまうのはちょっと……と思う人は多いかもしれない。
最大100kbpsのタイプAでも、メール、Twitter、経路・路線案内検索なら十分に使える
では実際にスマートフォンで使うとどうだろう。今回はb-mobileSIM[イオン専用]の利用が可能とうたわれているNTTドコモの「Xperia(SO-01B)」、日本通信「IDEOS」で利用してみた。
最大100kbpsのタイプAが想定するのは、メール、Twitterなど、文字情報の送受信を中心とした使い方だ。これらであれば遅さはほとんど気にならない。場合により乗換案内など、比較的データ送受信量が少ないアプリケーションもそこそこ普通に利用できる。
なお、Twitterで写真投稿をする機会の多い人は、送信をバックグラウンドで行える仕様のアプリケーションを選ぶとよいだろう。Androidだと純正Twitterアプリケーションがこれにあたる。それができないものだと、送信に時間がかかるのでストレスの元になるかもしれない。
一方、比較的データ通信量が多めのマップ(Google Mapアプリ)も、V5以降では地図がビットマップからベクター方式に変更され、データ量が小さくなったこともあり、最大通信速度から想像するより実用的だった。さすがに地図データのキャッシュをクリアして使い始めると、まったく地図データがキャッシュされていない場所で1画面分の地図の読み込みに1分以上待たされるのだが、現在地の地図を読み込んだ状態からの徒歩での経路案内程度の利用であれば、遅さはそれほど感じずに済む。このあたりはユーザーがどう運用するかの問題で、無線LANなど高速な通信環境で利用している時に普段よく地図表示するような場所を表示してキャッシュさせるよう心がければよく、単に使い続けるだけでも次回以降はキャッシュの効果で快適になるわけだ。
Webページの表示も、思ったよりは実用的だった。ここ数年で主要サイトのスマートフォン対応が進んでいることもあり、レイアウトを簡略化し、データ総量も少な目になっているスマートフォン向けページなら普通に読み進められる。さすがにPC向けのサイトだとやや待たされる感は強くなるが、画像圧縮の効果もあるのか、最大100kbpsでも使い物にならないほどの遅さではない。
ちょっとした例外は、https://~で始まる通信が暗号化されたサイトだ。同プロトコルを用いるサイトは画像圧縮が行われないので、サイトによってはそこそこの我慢が必要である。例えば決済・通販系のサービスは当然暗号化通信になるので、そのサービスがPC向けのページしか用意していなければ遅くてもだえてしまう。ま、もっとも月額980円と思えば納得してもよいレベルではある。
•SIMロックフリー時代の無線LANルータ「b-mobile WiFi」利用ガイド
次はポータブル無線LANルータ「b-mobile WiFi」にb-mobileSIM[イオン専用]を装着し、PCでデータ通信を行った。
まずはTwitterや電子メール送受信といったテキスト中心のものはスマートフォンの場合と同様にデータ量がそれほど多くないため、十分実用的だ。ただ、Webメールサービスについては、利便性の向上を理由に昨今リッチコンテンツ化している場合も増えているので少し注意が必要だ。例えばGmailは、標準HTML表示のモードだと一覧表示するにもかなり待たされ、簡易HTML表示モードをお勧めされてしまう始末だった(もっとも、簡易HTML表示モードにすればほぼストレスなく利用できる)。
Webサイトの表示も、最大100kbpsなりに想像よりは使える。一例として、ブラウザのキャッシュを全削除してからPC USERのTOPページを表示すると表示完了までに40~50秒、ある程度キャッシュが有効な状態なら10秒もあれば閲覧可能なレベルまで表示される。当サイトは画像がそこそこ多いので、画像圧縮の効果も大きいのだろう。
これを遅すぎるとするか、許せるとするかは、利用環境や急いでいるとき、あるいはそのときの心理状況などを含めてシーン別・時間帯別それぞれで個人差があると思う。同じ場所でWiMAXに切り替えて通信すると瞬間に表示されるWebサイトでも、基本的には表示に5~10秒かかる。しかし、通信手段がまったくない場合と比べれば、通信できることこそに意味があるわけだ。
実際の通信速度はどのくらいか
では最大100kbpsまでとするタイプAは、実際にどのくらいの通信速度が出ているのか。
まずはXperiaに装着して「SPEEDTEST.NET」サイトで場所、時間帯を特に考慮せずにいろいろな場所で通信速度を計測したところ、下りはおおむね90kbps前後、上りは少しばらつきがあるものの平均80kbps前後と記録されていた。こちらは最大100kbpとするなら悪くない値だと思う。もちろん絶対速度は遅いが、すでに1カ月以上スマートフォンでTwitter、メール送受信、Webでの情報検索や乗換案内など、日常的にスマートフォンで操作するサービスを利用する範囲では、遅すぎてガマンならないという状況にならなかったことは付け加えておく。
b-mobile WiFi経由のPCで速度を計測すると、計測サイトによってかなりバラつきが見られた。おおむねピーク速度の値が反映される「speed.rbbtoday.com」サイトでは下り速度で100kbps以上、上りは70kbps台とXperiaでの計測に近い結果になった。一方、平均速度が反映される「Radish Network Speed Testing」サイトは下りが40kbps前後、上りが60kbps前後という値と、やや辛口な計測結果だった。もっとも、実際に速度計測サイトのようなバースト転送時は徐々に通信速度を絞り込んで100kbps内に通信速度を抑えこむように帯域を制御する仕組みになっているので、このような結果になってもおかしくはない
画像圧縮の効果は、画像転送での計測が行える「BNRスピードテスト」の画像版を使用した。ここでは500k~600kbps相当という値になり、画像圧縮がなかなか有効であることが伺える。もちろん画質の劣化というトレードオフがともなうのだが、結果的に最大100kbpsとする通信速度で実用的なWebアクセスが可能になるなら、それも悪くない。また、日本通信とNTTドコモ間のデータ通信量の削減にも貢献するので、月額980円というすばらしい低料金の実現と継続に必須な機能と考えてほしい。
安いだけじゃない、使い分けられる完全定額という新たな選択
本製品は、やはり安価な月額980円のタイプAが初回としては購入しやすい。いくらか用途を割りきるのならば、そのコストパフォーマンスはこれまでのデータ通信サービスより格段によい。
それゆえ、契約時のSIMパッケージ料金の3150円がちょっと高く感じるのだが……これは物理的なSIMカードの代金が含まれるし、どの通信事業者でも契約時には3000円前後の契約手数料が発生する。もちろん中には契約手数料を無料化する例はあるが、これは長期利用契約が前提の場合がほとんどであり、契約後の利用料金で実質的に回収が可能だからである。利用期間の縛りがない本製品ではちょっと無理な相談と考えたい。
本製品はもう1点、3種類の完全定額プランを使い分けられる点も既存のデータ通信サービスにはなかった大きなポイントである。
あくまで月単位(正確には料金計算月単位)で、事前にプランの切り替え作業が必要だが、普段はスマートフォン中心で使うのでタイプAにして、旅行や帰省でPCでのインターネット接続を高速で利用したい時はタイプCにする、というように料金プランを状況に応じて切り替えられる。
こちらに関して1つ要望を。この完全定額の使い分けをより有効に活用したいという意味で、日本通信には最大通信速度の高速なプランへの切り替えを、“即”行えるよう改訂してほしいと強く思う。なぜなら、急な出張や旅行、業務などでプランAやプランBから、すぐにプランCに切り替えて使いたいという需要はかなり多そうと思うためだ。この場合、常時プランCで利用する人はやや減ってしまう心配はあるが、普段はプランA、Bで十分な人が、臨時でプランCで利用する機会が増えることで相殺……という考え方は難しいだろうか(逆に高速→低速プランへはこのこともふまえて、そのまま月単位でよいと思う)。
ともあれb-mobileSIM[イオン専用]は、どの料金プランでも異なるのは上限通信速度だけであり、データ通信総量は気にせず定額利用できる点が非常に喜ばしい。他通信事業者のデータ通信用2段階定額プランは、まったく使わなければ安価だが、少しでも使えばすぐ上限の金額に達してしまうのが現状。本製品のように柔軟な使い分けは非常に難しいのだ。
この点で、各地にあるイオン店舗での販売で訴求可能なユーザーをグワッと拡大させつつ、これまでのデータ通信/モバイル上級者も「これだよ」と思わせる実力と可能性がある。ユーザーの“カユイ”ところを絶妙にツンツン付いてくれる製品である。
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