風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

女心

2010-08-19 10:21:09 | 口は災いのもと
 背の高い、カッコいい男性ヘルパーさんに引率されて、おばあさんたちが、婦人服売り場を散歩している。

 冷房完備のショッピングセンター内は、ばあさんたちの格好の散歩コースなのである。

 ウオーキングには好都合の海辺の町に住む風子ばあさんも、この暑い季節は、ショッピングセンターの中をうろうろとしてその代替としている。

 ヘルパーさんに手をつないでもらっている人、杖を突く人、どうにか自分の足で歩ける人たちが、夏物バーゲンセール、半額の値札に、安い安いと手にとってはしゃいでいる。

 いくつになっても女性は洋服が好きである。

「だけど、これ透けてるねえ」
 一人が、シースルーのブラウスを広げて言う。

横目で見ていた風子ばあさんも、うん、そうだねえ、透け過ぎてるよねえと思う。

 しかし、カッコいいお兄さんヘルパーは、にこやかに優しい声で、無情にも言い放ったのである。

「いいんじゃない、もう八十過ぎなんだから。 透けても……どこが見えても」

 やだねえ。

 風子ばあさんも、腰が悪いし、物忘れはひどい、ヘルパーさんのお世話になる資格は十分あると思うけど、もうしばらく我が家で頑張っていようと思った。