風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

キャタピラ

2010-08-17 21:17:20 | ギター、映画など他
 平日なのに、満員の映画館は久しぶりだった。
上映20分前にはおよその席が埋まっていた。
 全自由席だったが、スクリーンすぐ前まで満席となり、あそこに座ったひとは気の毒だった。

 前評判どおり、寺島しのぶはうまかった。視線ひとつで微妙な感情の揺れを表現していた。
 元ちとせの歌もよかった。たしかに反戦映画ではある。

 しかし、夫の久蔵は嫌な奴だった
出征前から妻に暴力をふるい、戦地で逃げまどう女を犯し、四肢欠損の身を献身的に介護する妻に感謝の言葉もなかった。
 あれでは、戦争があってもなくても、たとえ五体満足で帰還しても、幸せな夫婦にはなれなかったことだろう。

 本来、どんな嫌な役柄でも、あの状況の夫なら、哀れはあるはずである。
そこがもっと感じ取れれば、いっそう深いものになっていたような気がする、というのが風子ばあさんの本音である。