ひまわり博士のウンチク

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宮平真弥『琉球独立への本標』東京琉球館

2017年01月22日 | 本と雑誌

 21日、宮平真弥氏の『琉球独立への本標』出版記念講演が東京琉球館であった。
 実は、東京琉球館に足を運ぶのは始めてで、これまで何か用事があるときはメールか電話で済ませていたものだから、店主の島袋陽子さんとは初対面ということになる。
 名前だけは覚えていてくれた。ありがたい。
 

 (写真左が島袋さん、右が宮平さん)
 
 宮平さんとはアジア記者クラブでよくお会いする。この本は発行当初Amazonでの取扱がなく、東京琉球館にお願いして購入した。
 「本標」(「ほんしるべ」と読む)とは造語である。ブックガイドでは軽い感じがするというので、出版社が考えたそうである。
 沖縄関連の書籍、111冊を紹介している。この本を造るにあたって、宮平さんは111冊どころではないその何倍もの本を読破していることだろう。そのなかから111冊を選び、内容の紹介とともに、現在の沖縄のあり方を見ていく、というものだ。
 「時間があるんだなあ、羨ましい」と言ったら、「確かに時間はありましたが、9時5時で仕事をしている人には無理だと思います」という。
 興味深い本が満載で、僕自身が何らかのかたちで触れたことのあるものは、このうちの三分の一程度に過ぎない。中には入手困難な本も含まれていて、後田多敦さんの『琉球の国家祭祀制度』などは、Amazonの中古で85,000円などというとんでもない値段がついている。
 
 選ばれた本は、沖縄に関連するものではあるが実に多様で、辺野古、米軍基地すべて、慰安婦(知らない人が多いが、戦時中沖縄にも慰安所があった)、歴史などさまざまな角度から琉球独立への道をさぐる。
 
 最近は米軍機の墜落事故(不時着と言っている)や女性への暴行殺害事件などが多発している。そのたびに再発防止だの綱紀粛正だのと言葉ばかりの「お詫び」があるが、何一つ解決どころか改善すらされていない。オスプレイの墜落事故後も原因が究明されないまま訓練が再開され、日本の安倍政権は、「アメリカが安全というのだから安全」などと、住民よりも日米関係を優先する。それは、ヤマトのウチナーに対する構造的差別が根底にあるからに他ならない。
 沖縄からすべての基地をなくし、戦前のように平和な沖縄を取り戻すためには、ヤマトの政府に期待してもらちがあかない。日米安全保障条約も、それにもとづく日米地位協定も、日本とアメリカの政府が自分たちの都合だけで沖縄を無視して取り決めたことだ。だから、沖縄が琉球国にもどり、日本から切り離されれば安保も地位協定も無効になり、すべての基地はなくなる。琉球独立論はそんな発想から自然発生的に生まれた活動である。
 
 宮平氏によると、沖縄県内でも独立派は10パーセント程度に過ぎないと言う。返還から半世紀近くが経った現在でも、基地経済と決別することに不安を感じる住民もいる。したがって、「米軍特権や思いやり予算も廃止し、米軍にとって居心地の悪い状態を作る必要がある」(本書65ページ)ということが、現在の政府のあり方を見ると困難だし、沖縄の商店や飲食店が、米軍関係者の出入りを拒否するのも、一見有効に感じられるが、売り上げの維持を考えると、それも不安になる。
 琉球新報の新垣毅氏が言っていたが、「本土の人間が、沖縄の経済状況を理解することなく、軽々しく琉球独立などと言って欲しくない」という意見も一理ある。
 ただ、いつのことになるか分からないが、琉球国は独立することが理想であると、僕は思っている。
 
 しかしこの本、タイトルも装画もいいのに、何とまあ安易なデザインか。まるで学校文集の表紙だ。「この装幀家、使えないなあ」といったら、版元の人が来ていて、えらく機嫌を損ねた。


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