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箱型カメラ
ギュンター・グラス 著
藤川芳朗 訳
集英社 発行
昨年5月に発行された、“衝撃の自伝”第二弾である。
出版されたと知って、すぐ読むかどうかはべつにしてさっそく買っておいた。
思えば、前作「玉ねぎの皮をむきながら」は、途中まで読んで止まってしまっていた。
しかし、別に面白くないわけではなく、他の本と並行して読んでいるうちに優先順位が変わってしまったのだ。
二冊目が出たこの機会に、復活しようと思う。
一冊目は自分がナチスの親衛隊だったことをカミングアウトして、世界の文壇を驚かせた。
この二冊目、「箱型カメラ」はかなりドロドロした私生活を告白しているようだ。
「初めて明かされる、二人の妻、二人の愛人、八人の子ども、私生活……。」と帯にある。
帯の推薦文が、渡辺淳一というのも、いかにも意味ありげだ。
ちなみに、前作の推薦文は大江健三郎。
「箱型カメラ」すなわちボックスカメラとは、きわめて簡単な構造の固定焦点カメラだ。初期のものは乾板を使用し、シャッターの代わりにレンズキャップを使用していたと話に聞いたことがある。
当時の乾板は感度が弱く、ASA、今でいうISO感度が、1度、2度という代物だった。カメラを被写体に向けてレンズキャップを外し、時間を計ってキャップをかぶせる。
その後、フィルムが使えるようになったり、シャッターがついたりしたが、それでもシャッタースピードは2段階程度だった。だいたいレンズがf11程度なので、天気の良い日に外で撮るのが基本だった。
僕が何でこんなことを知っているのかというと、敗戦直後、誰もいなくなった写真屋からボックスカメラを失敬してきた親戚がいて、何度かそれで撮ってもらった記憶があるし、触らせてももらっていた。
ギュンター・グラスは本書の中で、このボックスカメラについてもつまびらかに解説しているようだ。
グラス家の専属の写真家、マリーア・ラーマがなぜだかこんな旧式のカメラで、家族を撮り続けていたらしい。
なんとなく、前作よりも面白くて、しかも読みやすそうな雰囲気があるのだが、さて何が書いてあるのか、楽しみでもあり不気味でもある。
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