ビリーの挑戦2-072cut:表彰式の懇親会
――Scene10:全国営業会議
影野小枝 懇親会が始まりました。子どもたちはパパにまとわりついています。パパの胸には、赤いバラの花がつけられています。
新谷 お待ちどうさま。長い話をしたら、坊ややお嬢ちゃんに叱られますね。お子様コーナーには、たっぷりと子ども向けの料理が並んでいます。社長のいる場所は赤い風船でわかるようにしてありますので、記念写真などを撮るときの目印にしてください。広報部のカメラマンがついていますので、遠慮なく写真をお願いしてください。それでは乾杯したいと思います。ご唱和ください。受賞者とそのご家族のために、乾杯!
影野小枝 私も少しインタビューさせていただきますね。その前に、研修ビデオ会社の様子を紹介しておきましょう。
監督 表彰式のときに「パパだ!」って叫んだ、坊やの画像(え)は撮っただろうな。
助手 ぬかりありません。号泣していた奥さんも、度アップで撮りました。壇上に駆け上がっていった坊やも、バッチリです。
監督 お子様コーナーに1台。社長に抱っこされている女の子を撮れ。あの老人夫妻は誰のご両親だ? とにかくカメラを回せ。
アットホームな画像を狙え。それと男ばかりなので、女性の受賞者で花を添えろ。
助手 ありゃ、あの子、社長に回し蹴りをしているぜ。カメラ! 急げ!
監督 お前の首に、ぶら下がっているのは何だ? お前が撮れよ。早くしろ。
影野小枝 磯貝さん、インタビューお疲れさまです。所属していたチームと大親友の太田さんは、ともにMVPでしたね。磯貝さん、感極まって泣いてしまいましたけど。
磯貝 めちゃ、うれしかったです。でもぼくがいない方が売れるのか、とちょっと残念な気持ちもありました。
影野小枝 磯貝さんの抜けた穴をカバーしようと、皆さんが必死になった結果だと思います。
磯貝 見てください。お子さんたちの笑顔。
影野小枝 ありがとうございます。山崎めぐみさんがいました。めぐみさん、あなたの小1のときの作文が、ヒントになったといわれていましたね。
めぐみ 作文のことは覚えていませんが、パパの会社にはずっと、家族ぐるみの企画がありました。キャンプへ行ったり、蛍狩りに行ったり、山菜採りに行ったり、海水浴に行ったり、正月は会社の人が集まって、お年玉をたくさんもらっていました。
影野小枝 普段お仕事で忙しいので、そんなときにまとめて家族サービスをしているんですね。
めぐみ 磯貝さんのところは、家族みたいに日曜日には食事をしたり、ゲームをしたりして、遊んでくれました。
影野小枝 乾さんがいらっしゃいます。表彰式では、「第9位、金沢営業所、乾真一郎」として表彰を受けています。乾さん、お久しぶりです。あら、悦子さんも。お子さん2人も一緒です。
乾 帯広時代は、お世話になりました。あれから悦子と結婚して、子どもが2人。長女は小1で次女は幼稚園です。
悦子 帯広の屋台村はお友達に譲って、金沢までついてきました。
乾 今回は9位で、帯広時代の山崎先輩にいいところを持っていかれました。でも山崎さんが表彰されているとき、泣けて仕方がありませんでした。どうしようもない帯広時代を思い出してしまったんです。漆原さんに巡り会っていなければ、僕も山崎さんも太田くんも、今日みたいなことはなかったと思います。
影野小枝 家族招待の表彰式は、大成功だったようです。全営業マンを集めていたときよりも、予算もずっと少なくて済んだとのことです。めぐみさんの作文が、新谷営業部長の心にずっとあったのですね。