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著書「仕事と日常を磨く人間力マネジメント」の読書ナビ

ビリーの挑戦2-072cut:表彰式の懇親会

2018-05-20 | ビリーの挑戦第2部・伝説のSSTプロジェクトに挑む
ビリーの挑戦2-072cut:表彰式の懇親会
――Scene10:全国営業会議
影野小枝 懇親会が始まりました。子どもたちはパパにまとわりついています。パパの胸には、赤いバラの花がつけられています。
新谷 お待ちどうさま。長い話をしたら、坊ややお嬢ちゃんに叱られますね。お子様コーナーには、たっぷりと子ども向けの料理が並んでいます。社長のいる場所は赤い風船でわかるようにしてありますので、記念写真などを撮るときの目印にしてください。広報部のカメラマンがついていますので、遠慮なく写真をお願いしてください。それでは乾杯したいと思います。ご唱和ください。受賞者とそのご家族のために、乾杯!
影野小枝 私も少しインタビューさせていただきますね。その前に、研修ビデオ会社の様子を紹介しておきましょう。
監督 表彰式のときに「パパだ!」って叫んだ、坊やの画像(え)は撮っただろうな。
助手 ぬかりありません。号泣していた奥さんも、度アップで撮りました。壇上に駆け上がっていった坊やも、バッチリです。
監督 お子様コーナーに1台。社長に抱っこされている女の子を撮れ。あの老人夫妻は誰のご両親だ? とにかくカメラを回せ。
アットホームな画像を狙え。それと男ばかりなので、女性の受賞者で花を添えろ。
助手 ありゃ、あの子、社長に回し蹴りをしているぜ。カメラ! 急げ!
監督 お前の首に、ぶら下がっているのは何だ? お前が撮れよ。早くしろ。
影野小枝 磯貝さん、インタビューお疲れさまです。所属していたチームと大親友の太田さんは、ともにMVPでしたね。磯貝さん、感極まって泣いてしまいましたけど。
磯貝 めちゃ、うれしかったです。でもぼくがいない方が売れるのか、とちょっと残念な気持ちもありました。
影野小枝 磯貝さんの抜けた穴をカバーしようと、皆さんが必死になった結果だと思います。
磯貝 見てください。お子さんたちの笑顔。
影野小枝 ありがとうございます。山崎めぐみさんがいました。めぐみさん、あなたの小1のときの作文が、ヒントになったといわれていましたね。
めぐみ 作文のことは覚えていませんが、パパの会社にはずっと、家族ぐるみの企画がありました。キャンプへ行ったり、蛍狩りに行ったり、山菜採りに行ったり、海水浴に行ったり、正月は会社の人が集まって、お年玉をたくさんもらっていました。
影野小枝 普段お仕事で忙しいので、そんなときにまとめて家族サービスをしているんですね。
めぐみ 磯貝さんのところは、家族みたいに日曜日には食事をしたり、ゲームをしたりして、遊んでくれました。
影野小枝 乾さんがいらっしゃいます。表彰式では、「第9位、金沢営業所、乾真一郎」として表彰を受けています。乾さん、お久しぶりです。あら、悦子さんも。お子さん2人も一緒です。
乾 帯広時代は、お世話になりました。あれから悦子と結婚して、子どもが2人。長女は小1で次女は幼稚園です。
悦子 帯広の屋台村はお友達に譲って、金沢までついてきました。
乾 今回は9位で、帯広時代の山崎先輩にいいところを持っていかれました。でも山崎さんが表彰されているとき、泣けて仕方がありませんでした。どうしようもない帯広時代を思い出してしまったんです。漆原さんに巡り会っていなければ、僕も山崎さんも太田くんも、今日みたいなことはなかったと思います。 
影野小枝 家族招待の表彰式は、大成功だったようです。全営業マンを集めていたときよりも、予算もずっと少なくて済んだとのことです。めぐみさんの作文が、新谷営業部長の心にずっとあったのですね。

質を測る017:日常の中のナレッジマネジメント

2018-05-20 | 営業の「質を測るものさし」あります
質を測る017:日常の中のナレッジマネジメント
――第2章:人間系ナレッジマネジメント
「知」には2種類あります、と先に書きました。もうひとつの知のことを「形式知」と呼びます。「暗黙知」は言葉や文字にしにくい知のことですが、「形式知」は言語や文字になっている知のことです。代表例としては、テキストやデータベースなどがあげられます。

「意識」を説明するときに、よく氷山の絵が用いられます。

氷山の水面から顔を出している部分を顕在意識、水面下にあるとてつもなく巨大なものを潜在意識と説明されます。「知」の場合も同様の説明ができます。水面上にあるものを「形式知」、(テキスト、データベースなど)水面下にあるものを「暗黙知」(スキル、ノウハウ、勘など)と呼びます。暗黙知は私たちの「知」の大半を占めているわけです。

「ナレッジマネジメント」は、2つの「知」を巧みに操る作法だと考えてください。何も難しいことはありません。私たちは日常のなかで、知らぬ間に「形式知」と「暗黙知」を操作しているのです。具体例を示します。

――料理のレシピを見て、料理をつくる
 これはレシピ(文字)を見て、料理をつくる(スキル)ですから、「形式知」を「暗黙知」へ変換している情景です。以下カッコ内に注目してください。
――料理番組(スキル=暗黙知)を見ながら、必要な個所のメモ(文字=形式知)をとる。
――ビジネス書(文字=形式知)を読みながら、ポイントを書き抜く(文字=形式知)。
――ゴルフ場で手取り足取り(スキル=暗黙知)、スイングの指導(スキル=暗黙知)をする。

 いかがでしょうか。私たちは知らぬ間に「ナレッジマネジメント」の作法を、日常のなかにとりこんでいるのです。「形式知」と「暗黙知」を置換させたり融合させたりすることで、「知」の質が高まります。
ここでは次のように覚えておいてください。

形式知:言葉や文字に変換された知。テキスト、データベース、マニュアル、講演、講義、発表など。
暗黙知:言葉や文字に置換されにくい知。スキル、ノウハウ、勘、名人芸など。

 幼子が何度も転びながら、やがて自転車に乗れるようになり
ます。マニュアルを読んで技術を修得したわけではありません。
それが「暗黙知」の世界で、「身体知」または「経験知」といい
かえてもかまいません。
 一度ギターのコードがひけるようになった人は、1年ぶりに
ギターを手にしても自然にコードを再現できます。これも「暗
黙知」の世界です。「暗黙知」は色あせない、という例証といえ
ます。ただし身体知になるまでは、かなりの時間を要します。

のほほん180520:クリスティーのガイド本

2018-05-20 | のほほんのほんの本
のほほん180520:クリスティーのガイド本

霜月蒼『アガサ・クリスティー完全攻略』(ハヤカワ・クリスティー文庫)の完全版が出ました。クリスティー作品を100作紹介したものです。クリスティのフアンにとって、かけがえのないガイド本です。
山本藤光2018.05.20

妙に知180520:鷗外の子たち

2018-05-20 | 妙に知(明日)の日記
妙に知180520:鷗外の子たち
森鷗外は五人の子どもたちに、西洋になぞらえた名前をつけています。上から、オットー(於菟)、マリー(茉莉)、フリッツ(不律)、アンヌ(杏奴)、ルイ(類)という名前です。このなかでも、森茉莉にはたくさんの著作があり、ご存知の方もおおいとおもいます。
山本藤光2018.05.20

SSTプロジェクト誕生:めんどうかい66

2018-05-20 | 営業リーダーのための「めんどうかい」
SSTプロジェクト誕生:めんどうかい66
――第4章:威力ある同行
◎ショートストーリー

 しばらく新製品が出ません。重点製品は、伸びを止めています。支店間の業績格差が拡大していました。こんな背景のなか、社長からぜいたく極まりない要求が突きつけられました。実話です。

社長「1年以内に、2桁の業績アップを実現してもらいたい。しかも、効果が持続する方法で……」

◎考えてみましょう

 さて、あなたならどうするでしょうか? 考えてみましょう。

 私が実行したことは、次の通りでした。

 早速、プロジェクトチームを立ち上げました。どうせ暇だろうという理由で、私がプロジェクトの専任事務局長に就任しました。2桁アップも厳しい要求ですが、効果が持続する方法が難題でした。社内キャンペーンなどでお茶を濁すな。社長は、プロジェクトが安直に走るのを戒めたのです。

 営業リーダーを強化して、業績を上げる。誰もが考えることです。私も、真っ先にそう考えました。ところが、現状の営業リーダーには課題が多かったのです。実力格差が存在すること。多忙過ぎて、満足な同行ができないこと。営業リーダーを鍛え直して、しっかりとした同行をしてもらうには、時間が足りなかったわけです。

◎考えてみましょう

 次なる手段は何でしょうか。あなたならどんな方法をとりますか。

町おこし131:警官への復讐

2018-05-20 | 小説「町おこしの賦」
町おこし131:警官への復讐
――『町おこしの賦』第5部:クレオパトラの鼻08
 宮瀬幸史郎は、大学生活を謳歌していた。ただし教養課程の授業は、高校時代の延長のようなもので退屈だった。幸史郎は時々授業をさぼって、ジャズ喫茶にたむろするようになった。
 午前の授業を終えて、学食で焼き魚定食を食べていた。目の前に、影が動いた。見上げると、友永貞雄だった。彼は天ぷらそばとおにぎりの乗ったトレイを、テーブルに置いた。
「寮の飯の方が、だんぜんうまい。ここは味つけが薄過ぎる」
 幸史郎は空いた皿を、箸で叩きながらいった。
「おれの兄貴もひぐま寮を出たんだけど、飯はうまいってほめていた」

 学食は、急に賑わいはじめた。大きな教室の授業が、終わったのだろう。友永の声が低くなる。
「ところで佐々木が痴漢の疑いで、派出所に連行された事件を聞いているかい?」
「いや、初耳だ」
「家庭教師の帰りに森林公園を通っていたら、いきなり若いおまわりにつかまったそうだ。もちろん彼は無罪だ。それがしつこいおまわりで、まるで犯人扱いされたそうだ。佐々木は、復讐してやると息巻いている」
「そりゃあ、頭にくるわな」
「それで今度の日曜日に、復讐を決行することになった」

 日曜日の夕方。野幌森林公園は、散策するカップルや家族で満ちあふれていた。幸史郎、塚本、佐々木、友永のひぐま寮一年生は、さっきから時計をのぞきこみ、前方に視線を走らせている。遠くに、自転車が見えた。「きた」と佐々木が叫んだ。近づいてきた自転車を見て、佐々木は「あいつだ」といった。
 四人はホールドアップする姿勢で、自転車の前を走った。後ろから「待て、きみたち」と叫ぶ声が聞こえる。かまわずに四人は、同じ格好で走る。自転車が前に回りこんできて、若い警官は両手を広げて立ちふさがった。自転車は、大きな音を立てて倒れた。
警官は「それを下ろせ」といってから、佐々木を認めて「おまえも一緒か」と吐き捨てた。

 周りに、人垣ができた。警官は威嚇(いかく)するような、大きな声でいった。
「泥棒やろうたち、公共のものを盗むとは何たることだ。元の場所に返してこい」
 佐々木は前に一歩踏み出し、「この前は痴漢で、今度は泥棒だと。おい、おまわり。おれたちが、泥棒だというのか」とにらみつけた。
「がたがたほざくな。現行犯で逮捕してやる」

 真っ赤になった警官は、腰の手錠に手をかけた。四人は頭上にあるベンチを、地面に下ろした。そして裏側を、警官の目にさらした。そこには「ひぐま寮」と墨書してあった。勝誇ったかのように、佐々木は吐き捨てた。
「自分たちのものを、持って歩いてどこが悪いんだ。間違いでしたって、ちゃんと謝れよ」
 目を白黒させて、警官は小さな声で「ごめん」といった。人垣から笑い声が起こった。警官は小首を傾げ、倒れている自転車を起こして舌打ちをした。