山本藤光の文庫で読む500+α

著書「仕事と日常を磨く人間力マネジメント」の読書ナビ

乱知180630:最後にババをつかむ

2018-06-30 | 乱知タイム
乱知180630:最後にババをつかむ
アメリカの利己的な関税に報復合戦が起きています。中国とEUが参戦し、一部アメリカ産業も大打撃をこうむっています。あちら立てればこちら立たず。トランプは堅牢なガードをしたつもりでしょうが、脇が甘く自らの首を絞めています。トランプの出すカードは、無効なものが多い証ともいえます。最後にババをつかむのは、アメリカ国民となるでしょう。
山本藤光2018.06.30

ビリーの挑戦2-113cut:初の契約

2018-06-30 | ビリーの挑戦第2部・伝説のSSTプロジェクトに挑む
ビリーの挑戦2-113cut:初の契約
――Scene17:終りのはじまり
影野小枝 磯貝さんが、狭いCP社オフィスに戻ってきました。
漆原 お帰りなさい。やったな、初受注だ。
磯貝 電話でも話しましたが、2週間の研修は来月の初めからです。間に合いますか?
片岡 同行スキルは教えられるとして、ほめ方や傾聴力や対話術などは、うちには荷が重過ぎる。
磯貝 SSTのときは、彼らが勝手に進行してくれたので、専門家を呼んで指導していません。今から勉強しても、教えるとなると、ちょっと大変です。
漆原 コラボプランにお願いしよう。あそこなら、そうした指導は得意だと思う。明日電話をしてみるよ。
片岡 自前でできないのは残念だけど、対話術など勉強したことはない。コミニュケーション力なども、勉強すれば身につくものなのか疑問だ。
漆原 ビジネスって難しいね。せっかくの初受注なのに、自分たちだけではできないのだから。 
片岡 この前パクったQ社にしても、いつ支援をお願いするか分からない。おれたちの仕事は、プロモーターなんだ。仕事がきまったら、キャスチングがいちばん肝心だというわけだ。

新・知だらけ031:国語辞典を楽しむ

2018-06-30 | 新・知だらけの学習塾
新・知だらけ031:国語辞典を楽しむ
――第2講義:日常
赤瀬川原平『新解さんの謎』(文春文庫)は、山本藤光「文庫で読む500+α」の推薦作です。ここでは、三省堂『新明解国語辞典』の楽しさを紹介させていただいています。国語辞典イコール「広辞苑」という古い固定観念を捨てて、『新明解国語辞典』を書斎の特等席においていただきたいと思います。2つの辞書を例示します。

【動物園】
広辞苑(第6版):各種の動物を集め飼育し、一般の観覧に供する施設。
新解国語辞典(第6版):生態を公衆に見せ、かたわら保護を加えるためと称し、捕らえて来た多くの鳥獣・魚虫などに対し、狭い空間での生活を余儀なくし、飼い殺しにする、人間中心の施設。

【恋愛】
広辞苑(第6版):男女間の恋い慕う愛情。
新解国語辞典(第6版):特定の異性に特別の愛情をいだき、高揚した気分で、二人だけで一緒にいたい、精神的な一体感を分かち合いたい、出来るなら肉体的な一体感も得たいと願いながら、常にはかなえられないで、やるせない思いに駆られたり、まれにかなえられて歓喜したりする状態に身を置くこと。

『新解国語辞典』は第7版が出ています。まだ買い求めていませんが、「恋愛のところは後退だよ」と、友人がメールを送ってくれました。引用してみます。

――7版:特定の異性に対して他の全てを犠牲にしても悔い無いと思い込むような愛情をいだき、常に相手のことを思っては、二人だけでいたい、二人だけの世界を分かち合いたいと願い、それがかなえられたと言っては喜び、ちょっとでも疑念が生じれば不安になるといった状態に身を置くこと。

斉藤美奈子は『新解国語辞典』について、次のように書いています。
――恋愛、性交、女といった、いかにもの語句説明がふるっているだけではない。この辞書の白眉は、なにげない語句につけられ用例だ。<すなわち>の用例は、「玄関わきで草をむしっていたのが、すなわち西郷隆盛であった」。<なまじ>は、「なまじ女の子が柔道など習ってもしょうがない」。すかさず田村亮子選手の写真などを挿入してこまめに揚げ足をとる本書も本書だが、たかが<すなわち>や<なまじ>の用例が、なんでこんなにオモシロイわけ?(斎藤美奈子『本の本』ちくま文庫P261)

ほかには夏石鈴子『新解さんの読み方』(角川文庫)などの推薦著書もあります。私は国語辞書の革命と思っています。辞書を楽しんでください。


質を測る058:3種類の同行

2018-06-30 | 営業の「質を測るものさし」あります
質を測る058:3種類の同行
――第5章:同行道
 ある製薬会社の営業本部長との会話です。
本部長「うちの営業リーダーは営業担当者育成に熱心で、よく同行しています」
私「どんなタイプの同行なんですか? フル同行の実態はどうですか?」
本部長「1日に2、3人との接点同行が主体です」

 同行は大まかに分けると、次のような種類となります。

1. 育成同行
  新人営業担当者が配属になると、終日同行すると思います。これを既存の営業担当者にも実施するのが「育成同行」です。育成同行の目的は営業担当者のレベルアップにあります。終日同行が原則です。

2. 戦略同行
 難攻不落の重点顧客への同行を「戦略同行」と呼びます。ここは接点同行でかまいません。ピンポイントで顧客攻略を営業担当者とともに実施するのが「戦略同行」となります。

3. 営業同行
  クロージングのために、営業リーダーが名刺パワーを活用する。クレーム処理。定期的なあいさつ回り。これらは「営業同行」としてくくります。

 性格の異なる3つのタイプを、ごちゃまぜにして「同行」とく
くってはいけません。前記の本部長は、「戦略同行」をよくおこな
っているといいました。けっしてそれは、「育成」のための同行で
はありません。もちろん接点での同行でも、営業担当者のレベルアップをはかることは可能です。しかしそれは、営業担当者のごく一部の活動をみての指導となっているのです。営業担当者が得意な先、苦手な先での活動をみて、それぞれにふさわしい指導をしなければなりません。3種類の同行を整理しておきます。

◎育成同行
  営業担当者のレベルアップが目的です。SSTプロジェクトは、そのための専任同行部隊でした。フィールドトレーナーを起用している製薬会社は増えています。本来は営業リーダーの最も大切な職務なのですが、多忙なためにそれができないので、窮余(きゅうよ)の一策として編み出されたものです。
CPでは半年間で2営業担当者との「育成同行」をゴールとしています。その間に延べ20回の「指導の連続性」を担保しなければなりません。営業担当者のレベルが閾値(いきち)に達するのは、経験上15回から20回であるという根拠から設定した数値目標です。

◎戦略同行
  チームにとって重要な顧客を、あらかじめリストアップして、営業担当者とともに攻略に当たるのが「戦略同行」です。顧客アクションプランを営業担当者と作成し、二人三脚で攻略にあたります。戦略同行先は、チームメンバーから注目されていなければなりません。攻略の進捗状況発表は、チームメンバーの参考になります。
  CPでは半年間で5病院を「戦略同行」先とするように指導しています。戦略同行先も、延べ20回で目鼻をつけるようにしています。

◎営業同行
  ある証券会社のトップが「うちもSSTをやっています」と教えてくれました。急に親近感を覚えて話しこんでいると、「専任同行部隊」の目的は、商談をまとめることだとわかりました。専任メンバーとは、育成チームではなく典型的な「営業同行」部隊だったのです。

引継ぎ同行:めんどうかい107

2018-06-30 | 営業リーダーのための「めんどうかい」
引継ぎ同行:めんどうかい107
――第7章:その他の効果的な同行
 担当交代にともなう引継ぎも、「同行」のひとつの形です。もちろん本書で解き明かしている「同行道」とは意味合いが違います。

 引継ぎ同行は、前任者と後任者が一緒に行ってはいけません。
「担当交代のごあいさつにうかがいました」
 この一言で、顧客は前任者にフォーカスをあててしまいます。「どこへ行くの?」「きみにはお世話になった」などという展開になります。

 引継ぎでは、後任者にフォーカスがあたらなければ意味はありません。ところが、一緒に引継ぎのあいさつに行くと、こうなってしまいます。

 営業リーダーが、担当交代になるとしましょう。まず前任者が単独訪問して、顧客に担当交代になる旨を伝えます。次に新任リーダーがあいさつに出向きます。単独でもいいし、営業担当者との同行でも構いません。この方法なら、顧客のフォーカスは新任者にあてられるわけです。

 あるいは前任の営業リーダーが、担当交代を事前に顧客に伝え、その後2人が同行します。この場合も、後任者に目線が向くことになります。つまり唐突に新旧の2人が、担当交代のあいさつに行かないこと。それが引継ぎの鉄則なのです。

 営業担当者の引継ぎに備えて、詳細な顧客情報を書かせている企業があります。私の経験では、それはまったく役に立たない代物です。営業担当者は、自分の経験で顧客との距離を測ります。データベースに、頼ることは少ないのです。

 本社がせっせと書かせているあの情報を、有効に活用している事例があれば聞かせてもらいたいと思います。残念ながら、「顧客管理リスト」が役に立ったという声は聞いたことがありません。

後任者にフォーカスがあたる引継ぎ。ぜひ考えてもらいたいと思います。現状の引継ぎは、機能しているとはいえません。

のほほん180630:井伏鱒二の思い出の人々

2018-06-30 | のほほんのほんの本
のほほん180630:井伏鱒二の思い出の人々


『井伏鱒二文集1・思い出の人々』(ちくま文庫)をブックオフでゲット。井伏鱒二が安吾、鷗外など多くの文士についてつづったものです。前から気になっていたのですが、昨日ついに発見しました。本書は全集にも入っていない貴重なエッセイ集なのです。
山本藤光2018.06.30

町おこし172:都落ち

2018-06-30 | 小説「町おこしの賦」
町おこし172:都落ち
――『町おこしの賦』第6部:雪が溶けたら10
一月の標茶は、寒波に支配されていた。エアコンの温度を上げても、恭二はベッドから出られないでいた。屈辱的な、長崎での日々が浮かんできた。アメリカに消えた、留美の顔も浮かんだ。気合いを入れて、布団を跳ね上げる。
ハローワークへ、行かなければならないと思う。こんな姿を誰の目にもさらしたくないと思いつつ、宮瀬幸史郎に電話をかけている。
――会社を辞めて、戻ってきた。ハローワークに行って、仕事を探す。
――そうか、長崎へ行ったと聞いていたけど、帰ってきちゃったのか。
――うん、営業の仕事は、てんで向いていなかった。
――これからこいよ。積もる話がある。
――まだ誰とも、会いたくないんだ。こっちにきてくれないか。
――わかった。すぐに行く。

 幸史郎は恭二の部屋へ入るなり、目を見張った。ベッドと机が二つずつあった。
「何じゃ、これは」
 幸史郎は、遊んでいる机の椅子を引いて腰を下ろした。恭二は真顔になって、これまでのできごとを包み隠さず語った。聞き終わった幸史郎は、大きなため息をついた。そしていった。
「会社は辞めてくる。同居していた彼女には、逃げられる。苦労して北大に入ったのに、恭二は何てお粗末なんだ」
「面目ない」
「恭二には薬剤師の資格があるから、仕事はすぐに見つかると思う」
「おれ、調剤の仕事はしたくない。新薬の研究をしたい、と思っている」
「まあ、焦らずに探すことだな。せっかく戻ってきたんだから、歓迎会をやるか」
「いや、仕事が決まるまでは、ほかの人に会いたくない」

 釧路のハローワークに通う以外に、やるべきことは何もなかった。係員の前に座り、希望職種の求人状況を確認してもらう。
「研究、開発という求人は、釧路ではめったにありませんよ。北大薬学部卒業という立派な資格があるんだから、希望を調剤に変えたらどうですか。それなら求人は、たくさんあります」
 恭二は調剤の仕事だけは、したくなかった。
「しばらく通って、チャンスを待ちます」
 そんな繰り返しで、一ヶ月が過ぎてしまった。その間身についたのは、読書の習慣だけだった。釧路の書店で買い求めた『文学界』という文芸誌が、ハローワーク通いの友になった。

 釧路から標茶までの電車のなかで、恭二は七十歳くらいの婦人から話しかけられた。頭髪は帽子に覆われて見えなかったが、目尻の小じわで年齢の想像はついた。
「ごめんなさい。読書をしているところを」
 そう断ってから、老婦人は熱心に鉛筆を走らせていた本に目を落とした。
「どうしても解けない、クロスワードがあるの。わからないままだと、イライラしちゃうから、教えていただこうと思って」
 恭二は開かれたままの本を受け取る。
「横の十六なんだけど、都を追われて地方に逃げて行くこと。何だかご存じ?」
「ああ、都落ちのことですよ。平家物語で有名です」
「都落ちか。これで胸のつかえが取れましたわ。ありがとう」
 老婦人はそういうと、本に鉛筆を走らせている。
何とも皮肉な言葉を、突きつけられたものだ。恭二は、自分の本に視線を戻す。これ以上のおつき合いは、ごめんだとの意思をこめて。

乱知180629:まサッカーの連続

2018-06-29 | 乱知タイム
乱知180629:まサッカーの連続
日本サッカーが決勝進出。大快挙です。西野監督は後半に、「反則は絶対にするな」「時間を使え」との指示を出しました。サッカーをすることを放棄させたとの批判もありますが、監督として当然の采配だったと思います。先発を6人も替えたり、西野采配はまサッカーの連続でした。
山本藤光2018.06.29

ビリーの挑戦2-112cut:パクられた

2018-06-29 | ビリーの挑戦第2部・伝説のSSTプロジェクトに挑む
ビリーの挑戦2-112cut:パクられた
――Scene17:終りのはじまり
影野小枝 漆原さんと片岡さんは、K社を出て喫茶店にいます。
漆原 片岡さん、すみませんでした。負けたのは私のせいです。
片岡 どうしちゃったんですか?
漆原 Q社はうちの提案をパクったんです。うかつでした。先日Q社に呼ばれて、私がしゃべってしまったんです。
片岡 今回のプレゼンの内容をかい?
漆原 そうなんです。先方が製薬会社とは縁がないので、というもんですから、ついつい気をゆるしてしまいました。まさか、コンペのライバルだったなんて……。
片岡 ちくしょう、やられましたね。
漆原 すみません。あいつらを信じた私がバカでした。これから抗議に行ってこようと思います。
片岡 ムダです。そんなことをしても仕方がない。いい勉強になったと、さっさと忘れてしまいましょう。
漆原 この業界は怖い。あんな大きな会社が、汚いことをするなんて、思ってもみなかった。